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challengers   作者: 尾弍木玲斗
2/7

<コンビと少女>

あれから、1ヶ月が過ぎた。


え、1ヶ月何してたか?

ええっとね、じゃあ一言で片付けようか。

ナナハラさんと組手。

もうひたすらに組手。

一言で片付けたのは、その1ヶ月間が

まさに

地獄と呼ぶにふさわしいものだったからだ。

もう何万回叩きのめされたことか・・・。

全身に痣ができたし、

骨も何本も折った。

血を吐いたことさえあった。

天国という特殊な空間でなければ、

多分死んでたと思う。

それにしても、

あの大人しそうな黒スーツ•黒眼鏡の男性が

あんな武闘派だったとは思いもしなかった。

今でも悪夢の内容の大半はこれだ。

でも、諦めたくはなかった。

だから必死にナナハラさんに

無謀な戦いを挑んでは、

骨をへし折られていた。


そんな骨を折りまくりながら続けた鍛錬の

恩恵に気づいたのは、

1ヶ月後、ふと鍛錬場の鏡を見たときだった。

いつも通りの見慣れた顔と目が合う。

特徴のあるボサボサの黒髪に、

丸い目、

少し荒れた肌、

だが、その顔の下には、

ほとんど骨と皮だけだった僕の

もともとに肉体はなく、

代わりに、

しっかりと引き締まり、

筋肉もかなりついた、

健康的な肉体があった。


たった1ヶ月でなんでこんなことにと思い、

驚いてナナハラさんに事情を聞いてみると、

どうも天国は時間の流れが違うらしく、

1ヶ月は人間の世界でいうと

一年くらいの『濃さ』らしい。

つまり、僕は1日に人間の世界の

12日分の鍛錬をしていたわけだ。

しかも、お腹も空かないし、

眠くもならないから、

ほとんど24時間ぶっ通しで。


さらに2ヶ月ほど鍛錬を続けていたある日、

いつも通り組手で僕を叩きのめした後、

ナナハラさんは

「かなり強くなりましたね。

もうそろそろいいでしょう。」

と言った。

僕は床に倒れ、肩で息をしながらいう。

「・・・いや、全然実感わかないんですけど」

ナナハラさんはスーツに着替えながら、

「大丈夫です。

あなたは強くなっています。

私が強すぎるんです。

さあ、立ってください。」

と若干自画自賛のようなことを言いながら、

僕に手を差し伸べる。

僕はその手を取って立ちながら言う。

「それじゃあいよいよ・・・」

僕が全てを言い切る前に、

ナナハラさんは答えた。

「ええ、『チャレンジャーズ』として、

地上に降りていだたきます。

着替えたら、私の部屋に来てください。」

やっとだ・・・。

僕は安堵の溜息を漏らし、

用意されていた服に着替える。

ちなみに、

オレンジのパーカーとジーパンだった。


ナナハラさんの部屋に入ると、

そこは事務室のような部屋で、

これまた事務の人が好みそうな

机、そしてナナハラさんが腰掛けている、

椅子があった。

自分の向かい側の椅子を指し示して、

ナナハラさんは言う。

「座ってください。」

僕が腰掛けると、ナナハラさんは話し始めた

「鍛錬お疲れ様でした。

まず、貴方の『天器』をお渡しいたします。

前にも言った通り、

チャレンジャーズは

下界の人々に仇なす者を

討伐するのが仕事です。

いままでの鍛錬はその為です。

『天器』は、それらと戦う為の力になります。

この輪に手を入れて下さい。

そして、貴方の生前の持ち物で、思い入れが

深い物を思い浮かべて下さい。

それが貴方の『天器』になります。」


ナナハラさんはそう言いながら、

金色の輪っかを差し出す。

僕はそれに手を入れ、考える。

・・・思い入れの深い物か、

あれかな・・・。


出てきたのは銀色の指輪だった。


ナナハラさんが質問してくる。

「これは?」

「なくなった母の形見です。」

「そうですか、では次に、

新しい名前を決めて下さい。」

僕はまた考える。

しばらく考えたのち、

「『康太』で」と告げる。

親戚の子供の名前の候補のひとつだったものだ。

結局その親戚は流産してしまったが・・・。


ナナハラさんはそれを書き留める。

「かしこまりました。

では、最後のステップの前に、

少しだけ説明をさせていただきます。

貴方がこれから『チャレンジャーズ』として

戦う相手は、

正直に言って『チャレンジャーズ』

よりずっと強いです。

そこで、『チャレンジャーズ』は基本

2人1組で下界に降ります。

なので、最後は貴方のパートナーの紹介に

なります。

そのパートナーは

貴方の鍛錬中にもう決まっていますので、

隣の部屋に行って下さい。

そこで貴方のパートナーが待っています。」

僕は頷き、部屋を出て、隣の部屋の

ドアの前に行く。

そして、期待を胸にドアを開ける。

次の瞬間、

どんな人だろうと

心を踊らせる僕を出迎えたのは、

「ノックぐらいしなさいよ!」と言う

高い声、そして、

強烈な後ろ回し蹴りだった。


それが僕と、最初に言った

『ある少女』、夕との出会いだった。





















なんか色々大変です。

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