最終話 赤い絆と赤い誘い
家について久しぶりの家にやっぱり家が一番だななどとあたり前のことを考えながら久しぶりに病院食じゃない昼食をとった。まぁ病院食も嫌いってわけじゃなかったけど。そしてその後転がっててふと美羽にお礼に行かなきゃなと思った。毎日欠かさずお見舞いに来てくれたのだ、昨日あった時に口頭でお礼はしたがもうちょっとしっかりお礼しておきたい。なんせ美羽が来てくれなきゃずっと暇だったし、美羽のおかげてむしろ楽しかったしな。相手に罪悪感があってそれで毎日来てたのだとしたら罪悪感を感じることなんて無いって伝えるべきだしな。俺が勝手に戦うことを決めた戦いだ。いや、ただの喧嘩だなそんなかっこいいもんじゃない。そんなものに美羽に汚点があるなんて事はありえない。だからこそしっかり伝えなきゃな。などとよく分からん理由付けをしながら本心美羽に会いたい一心で果物をもって美羽の家へと向かった。
しかし出る時にポストを確認するとそこには「お前のせいであいつは不幸になる。お前の正義は裏目に出る。お前ではあいつを守ることは出来ない。」という事が赤で書いてある紙が入っていた。嫌な予感がしながらその紙を握りつぶし、美羽の家に向かった。
着くと美羽のお婆ちゃんが出迎えてくれた。「こんにちは。」「こんにちは優夏くん。」「これつまらないものですがどうぞ。」「あぁありがとね。」「あの、美羽はいますか?」「美羽ねぇもう昼もすぎたのに午前中に出てってからそれきり帰ってきてないのよ。」「そうですか...」胸騒ぎがした。さっきの紙もそうだが、病院に見舞いに来てくれていた時の美羽は確かに微笑んでくれてはいたもののどこかぎこちなく、きずかないふりをしていたがたまに辛そうな顔をしていた。だからこそさっきの手紙とあいまって更に胸騒ぎがした。「でももうそろそろ帰ってくるだろうし家で待ってる?」「え?あ、あぁ大丈夫です。でも帰って来たら連絡もらえますか?」「そう?分かった。そうするね。」「ありがとうございます。ではこれで失礼します。」「気をつけてね。」「はい。」美羽のお婆ちゃんが家の中に戻ったのを見たあと、俺は走った。
走って走ってそのうち日は傾いた。町中を探したはずなのに美羽はいない。更に胸騒ぎがした。俺はそんな心情の中最後に残った、いや最後まで無意識に行くことを拒否していた場所へと足を運んだ....。そこに美羽はいた....。
最後に残った場所それは海辺の崖だった。そこは景色が綺麗な穴場でそして...自殺で有名なスポットだった....。「美羽!」「!?優夏くん!?」「何でそんなところに!?危ないから離れるんだ!」「ど、どうしてここに!?」「胸騒ぎがして探してたんだ。」「そうなんだ....。」俺は何とか焦る気持ちを落ち着け、崖の上に立つ美羽の隣に並ぶ。「なぁ美羽。」「なに?優夏くん。」美羽もとりあえず落ち着いた様子だった。「何でこんなところに?」「....優夏くんは知らなかったよね。私がいじめられてる理由。」「あぁ。聞いたことないな。」「私の両親はね、刑務所にいるの。」「...そうか。」「私の両親ね?昔家に侵入してきた泥棒にきずいて目を覚ましたら泥棒がナイフを突きつけてきてね?それでお父さんナイフを取り上げて泥棒を殺しちゃったの...。それでお母さんが泥棒の死体を怖くなって隠しちゃったの。そしてそれが警察にバレて刑務所行き。今は裁判も終わって服役中なんだ。」「...」何も言えなかった。何も言えるはずがなかった。「でもね!お父さんとお母さんがそんなことしたのは私のためだったの...。最初はそれを知らなかった。でも、その事件が発覚して一年経った頃お婆ちゃんが真実を話してくれた。泥棒がナイフを向けたのは私。そしてそれでお父さんは私を守るために泥棒と戦ってその中で殺しちゃったの。泥棒の手が震えてたからこそ出来たみたいだけど...。」「..........」「だから私はお父さんとお母さんには感謝してる。でも周りはそんなこと関係なかった。みんな事実だけを見て私の両親をただの人殺しと決めつけ私を虐めた。どんな理由があろうと人殺しを肯定できないのは分かってる。でもやっぱり私はお父さんとお母さんの気持ちを分かってくれなかったことが悔しい。」美羽は強く拳を握りしめていた。「そんな事が...」「それでこの前の1件のあと私へのいじめはエスカレートした。多分優夏くんには敵わないそう判断してだと思う。あっ勘違いしないでね!私は優夏くんのせいでなんて思ってないし、むしろ...」「?」むしろの後の言葉はあまりにも小さく聞き取ることは出来なかった。だがなぜか美羽の顔は真っ赤だった。全くわからん。1年間以上あまり人と話さなかったせいでここまで相手の感情を察せなくなるものか....。もどかしいなぁ。「...それでねこの一週間辛くて辛くて今まで思ったことないけどつい考えちゃったんだ。しにたいって...」「そうか...」「とりあえず優夏くんが退院するまで今日ここに来たんだけど...崖からの景色見たらやっぱり怖くなっちゃって。死にたいって思うけどやっぱり死ぬのは怖いって気持ちもあって...。」「当たり前の感情だよ。誰だって死ぬのは怖い。それでいいんだよ。」「うん...。そうだね...。でもなんか自分が情けなくて、逃げようとしてもそれすら出来ないなんて...。」「...」その後しばらくどちらも何も喋らなかった。ただただ崖からの景色を呆然と見つめていた...。「なぁ?」「なに?」「俺の話も聞いてくれるか?」「...うん。」「俺の両親はな。両方亡くなったんだ。」「...そう...なんだ...。」「母親は元々体が弱くて出産の時に亡くなった。父親は母親が死んだ悲しみをストレスにして亡くなった。その話を聞いた時何でそこまでと俺は思ったがじぃちゃんの話曰く俺の父親は母親の幼馴染で昔から体が弱い母親を見て育ってきてて結婚する時、『一生お前を守り抜く』って約束してたらしいんだ。母方のおばぁちゃんは『彼はよくお前の母さんを支えてくれた。母さんはお前を産めて、あの子と出会えてとても幸せだっただろう。』とは言っていたがやっぱり父親は死なせてしまったことが、いや自分の前から消えてしまったことが原因で相当自分をせめてそれをストレスにしてたんだろう。」「そんなことが...」「両親との記憶はない。両親は写真でしか見たことがない。そんな両親が唯一俺に残していった確かなもの、それが名前だ。」「唯一...」「だからこそ俺は自分の名前に誇りを持ってるし、自分の名前をすごく大切にしてる。だからこそ俺は高校に入って名前で小馬鹿にされて本気でキレた。確かに相手にとってはしょせんただのおふざけだったんだろう。でも俺にとっては俺が持つ中で最も大切なものを汚された。だからこそ頭にきた。周りから見たら何でそんなことででも俺には大問題だ。」「...」「だからそれでいじめられても後悔はない。俺自身が何をされたって名前を馬鹿にされたら黙っていられない。俺にとってはそういうものなんだ。」「親が残してくれた大切なものだもんね。そりゃそうだよね。」「あぁ。そして、もう失ってるからこそ俺は死ぬのは1番怖いことだって他の誰よりも理解してると思ってる。死んだらもう想いを伝えることすら出来ない。そんなの...そんなの辛い....。」「そうだね...。」「だから、ひとつ頼みがある。」「....」「死ぬなんて考えないでくれ。美羽にはまだ捕まっているとは言え両親がいる。美羽が死んだらどう思う?俺にはよくわかる。いや、ある意味分からないか。だって俺は失ったものを知らないから。でも例え失ったものをあまり良く知らなくても身近なものを失うのは辛い。思ってる以上に辛いんだよ。」「そうだよね...。でも!私にはもうこれしか!」「それに美羽が居なくなったら俺も辛い。」「!?」「退路を塞いでさらに首を占めてるのは分かってる。でも、死んだら終わりなんだよ。生きてればまだ意思は伝えられる。いや、そんなことより俺はもう失いたくない。ここまで来るまで不安で不安で仕方なかった。父親の気持ちを理解したと思った。既にもう美羽が死んでいたらと思うと怖かった。だからまだ生きていてくれてほんとに嬉しかった。」「優夏...くん...」「もう美羽は俺の中ではそういう存在なんだってよく理解した。こんな感情はじめてだからきずくのがおくれたけど俺は美羽のことが好きだ。」「!?」「だから、失いたくない。辛いものは一緒に背負わせてくれ。いや、美羽を癒すことができるように努力する。だから...だから!美羽。俺と付き合ってくれないか?こんな時に言うことじゃないとは思う。だけどやっぱり今伝えなきゃ後悔すると思うから。」....「こんな弱くて、我儘な私を好いてくれるの?ずっと迷惑をかけたのに?」「そうだそういえば最初はそれをただしに来たんだった。」「?」「美羽は俺に迷惑なんてかけてない。ずっと言ってるだろ?俺が好きで首を突っ込んでるんだ。だから気にしないでくれ。って言っても気にするのが美羽なんだろうけど。」「だって...ずっと私の身代わりに...」「何言ってんだよ。身代わりになるなんて言ったら一切俺は身代りになれてないよ。だって俺はただ帰り道で偶然あったイジめっ子をただの鬱憤ばらしに攻撃して、ほかの人を守ったと自分に言い聞かせていい気になってその結果ヤンキー立ちに絡まれただけなんだからな。ほらどこでかばえてるんだよ。どこでも美羽を守るようなことは出来てない。特に学校なんてメインなのに俺じゃ何も手だしできない。」「でも!やっぱり優夏くんは私を守ってくれたよ。」「...まぁそう言ってもらえると助かるよ。でさ?答えを聞いてもいいかな?」「...こんな私でもいいなら...よろしく...お願いします...」美羽の声は少しずつ小さくなっていきながらもハッキリとそう告げた。そして、そんな彼女の顔は真っ赤だった。「ハハハハ」「なによ笑うことないじゃない。そんなに赤いかな?」自分でも顔が赤いのはよくわかるようで顔をペタペタと触っている。というかあれは隠そうか隠さまいか迷ってるのか?「ハハハハいや違うよ。嬉しくてね。さらっと言ったけどやっぱり本当は心臓バクバクでさ。断られたらどうしようかと思ってね。いやぁ良かった良かった。片思いで完全に痛いやつになったりしないで。」「むぅ。ほんとかなぁ...。まぁそれならいいんだけどさ。」...「私もずっと前から好きだった。初めてあった時から少し気になってて話していくうちにだんだんと惹かれていった。でもやっぱり私の過去を知ったら離れていっちゃうって思ってそれが怖かったの。だからずっとずっと心の奥に気持ちをとどめてこの関係を崩さないように、秘密がバレないようにって...。」「そうだったんだ...。まぁ何にせよ片思いじゃなくて良かったよ。って待てよ。」「ん?どうしたの?」「今告白してオッケーを貰った。つまり我々はカップル。ということは遂に俺もリア充だ!やったぜ!」「うんまぁそういう事だけど...やっぱそういうこと気にする男の子もいるんだね。」「まぁ多分大体の彼女いない歴=年齢の人はリア充爆発しろ!とか言いながらリア充になりたいって思ってると思うよ。いるってだけでステータスになる時はなるしね。」「ふーん。そういう風に考えてるんだぁ?」「いやいやなる時はっ言ってるじゃんそんな思惑があってじゃないから!」「ふーんどうだかねぇ〜」「いや信じてよ!」「まぁ正直私はどっちでもいいけどね。」「え?」「だって少なくとも好きな人の近くにいれるってことだからね。」「ふぅん。そっかー...。って信じてよ!」「うふふ。嘘だよ嘘。信じてないわけないでしょこんな私を好いてくれる人を疑うわけないじゃない。」「うむぅ...。はやくも見たことない一面を見せつけられた気がするなぁ。一体どんな面がこれから見られるのかな。」「嫌だったら素直に言ってね?直すから。」「いやいや、そういう面も俺は可愛いと思うよ。」「うふふ。ありがと。」「まぁそんなことは置いといてもう暗くなってきてるし帰ろうか。」「うんそうだね。」ピシッ「ん?なにか聞こえた?」「え?私には何も聞こえなかったけど。」「じゃぁ空耳か。さてさっさと帰ろうか。」「うん。」
ドーン!「おい!崖が崩れたぞ!」「崖の上に人影がいたように見えたわ!」「そんな馬鹿なあんな所に人がいるなんて!」「俺も見たぞ!二人の人影がたってた!」「じゃぁ海へ崖と一緒に!?」「救急車だ!救急車を呼べ!」....
END
どうもついに最終回となりました執筆者クロウです。2ヶ月以上投稿できずすいませんでした。多少忙しかったのと(サボってたのと)会話が思いつかなかったのとで遅れてしまいましたすいません。(特にサボっててすいません)
今回で最終話となった赤い絆と赤い誘いですがまぁなんというか誘導はあるもののこれから二人がどうなるかは描かれていませんね。結論から言いますとご想像にお任せします。アフターストーリーなども書くつもりはありません。完全にお任せします。人によってはそこで2人は亡くなったという終わりを迎えるかも知れない。もしかしたら崩れた崖は別の崖だったかもしれない。むしろ、最後のMOBが見たのは優夏と美羽じゃ無かったかもしれない。2人は事故にあったものの生き残って幸せに生きたかもしれない。などと色々なストーリーが私だけでも思いつきます。恐らく皆様なら私とは全く違うストーリーを導き出すこともあり得るでしょう。まぁそれはそれで面白いと思うので執筆者が残した最後の粋な計らいとして楽しんでいただければ幸いです。
長くなりましたが、最後に1つ。この物語はこれで最後となりますがまた別のお話を書こうとはもう考えております。予定ではジャンルから何から全く違うものになる予定です。興味のある方は楽しみに待っていていただければ光栄です。これが投稿された後に連載としてではなくその全てをまとめたバージョンを一つの作品として出します。まぁこの後書きを読んでくれている方は連載を読んできてくれた方だと思うので誤字を直しただけの全く同じストーリーなのでみるひつようはないと思います。でも、見返したくなったりしたらそちらで見ていただければ楽かな?初めて見る人はまとまってた方が読みやすいかな?ということでまとめて出しておきます。
最後と言いつつ長くなりましたがこれで終わりです。ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
作者 クロウ