6、自信と無き余裕
み〜んみ〜ん………
玄関を開けると、セミがジワジワと鳴いている。ようやく夏らしくなってきた。空は晴れ、そして敬の心も晴れていた。
「もう夏か。」
清々しく、行ってきます、といって家をでた。
いつもより早めの出発。
何かやり遂げたあとの達成感と失敗してないだろうかという不安感、その両方を抱えて登校していた。しかし、嫌われるかも知れないというような心配はなかった。敬は自分でも驚くほどに自信がみなぎっていた。声が綺麗だ と告白してから早一週間、まだ恥ずかしくて話は出来ていないが、お互いに目が合うようになった。そのたびに早坂は少し顔を赤らめて目をそらす。こんな事が続いたせいか今なら告白さえ成功する自信があった。
「よー、敬。まただんまりtimeかよ。俺が居なきゃだめなのかね。……おい、聞いてんのか?」
「あぁ悪い。で何?」
返事はしたが、視線はあまり変わってない。聡は振り返ってこう続けた。
「しかしまぁそんだけみてて飽きないね。つ〜かちょっと見すぎだって、それじゃお前ストーカーだぞ」
敬はようやく視線を聡に向けた
「は!?いや違うって!」
「ストーカーは皆そーゆーの!」
と言ったが敬は聞いていない。
「いやなんか最近目が合うんだよな〜。」
「気のせいだって」と即答。
ムッとした敬はこう言い返した。「そういうお前はどうなんだよ」
聡が彼女と喧嘩していたことは知っていたがその後のことは知らなかった。
「あ?俺か(笑)?絶好調だよ〜ん。今朝も電話来てたし今日学校終わったらデートだよ〜。」
「え?仲直りできたの?あんなにきれてたじゃん」
敬がまさかと思った通りだった。敬の知る彼女とはすでに別れていて今の彼女はその次だった。
「あれは喧嘩じゃね〜よ。一方的にあんな怒んなくてもよくね〜?」
敬にはわかっていた。聡は一方的といったが原因は必ず聡にある。いずれにしても聡が彼女をコロコロ変えるのは今に始まったことではない。
「てか俺はどうでもいいんだよ。自分の心配しやがれ」
「心配ってほどでもないだろ」
「お〜、そんなこというか、じゃあ誰かにとられてもいいのか?」
それだけは困ると思ったものの、敬はなかなか話しかけれなかった。自信はあったが、嫌われてないという確信はなかった。
「とりあえずはなしかけろよ、じゃないとなにも進展しないぞ」
「…あぁ」
結局、敬の反撃むなしく聡に正論を言われ朝の言い合いは敗北に終わった。それと同時に機会があればいつでも話しかけようと思った。聡に言われた通り、もう時間がない。躊躇している余裕などないのだ。