第7話 not only navy
連合艦隊の出現と同時刻、小笠原諸島と奄美大島の中間付近に台湾とほぼ同じ大きさで、しかし明らかに台湾と異なる島が現れていた。
6日午後1時 戦艦『長門』
『長門』の会議室にて、日本政府と連合艦隊首脳部による会談が行われることとなった。当日に会談が実現したのは、理由は分からないが連合艦隊の転移時に各艦隊の司令長官が『長門』の後部甲板に出現していた為だ。各艦隊には旧海軍の無線周波数で長官達の無事を知らせてはいたものの、各所で多少の混乱が生じた様だった。
会談に参加するのは以下のメンバーとなった。
連合艦隊側
連合艦隊司令長官・山本五十六大将
参謀長・宇垣纏少将
第一艦隊司令長官・高須四郎中将
第二艦隊司令長官・近藤信竹中将
第三艦隊司令長官・高橋伊望中将
第四艦隊司令長官・井上成美中将
第五艦隊司令長官・細萱戊子郎中将
第六艦隊司令長官・清水光美中将
第一航空艦隊司令長官・南雲忠一中将
第十一航空艦隊司令長官・塚原二四三中将
南遣艦隊司令長官・小沢治三郎中将
支那方面艦隊司令長官・古賀峯一中将
『長門』艦長・矢野英雄大佐
数名の連合艦隊司令部付き参謀
日本政府側
松本龍之介副総理
命首相秘書官
高野首相補佐官
杉浦防衛相
広瀬和正海上幕僚長
久永基衆議院議員・防衛大臣政務官
他に総務省、防衛省などから4名
既に各艦隊の司令長官達が座っている会議室に日本政府からの代表者達が入室すると、女性が二人いることに長官達は少し困惑した。
「初めまして。私は首相補佐官の高野と申します。」
会談の進行役を務める事になった高野補佐官が挨拶し、主要なメンバーが自己紹介に入った。
「初めまして、私は副総理を務めてさせていただいている松本龍之介と申します。」
「防衛大臣政務官の久永基です。お会い出来て光栄に思います。」
「自分は広瀬和正と申します。海上幕僚長・・・あなた方で言えば軍令部総長の様なものと考えて下さい。」
「防衛大臣の杉浦楓といいます。陸軍大臣と海軍大臣を兼ねる役職と思って頂ければ良いかと。」
杉浦防衛相の自己紹介に長官達はかなり動揺し、南雲中将が思わず声をあげた。
「女が大臣⁉︎ しかも軍部の大臣がか⁉︎」
南雲中将に続いて近藤中将が問いかけた。
「大臣という事は・・・軍属なのか?」
「いいえ、現代の日本では閣僚は全て文民と定められています。ですが女性の武官は居りますよ。」
杉浦防衛相の回答に長官達は信じられないといった様子だった。未来のことであっても、日本において女性の軍人や軍部大臣が存在することがタイムスリップの次に衝撃だった様だ。
少しの間を置いて高野補佐官が再び口を開いた。
「お辛くなるかもしれませんが、まずは日米開戦から我々の時代に至るまでの歴史をお教えします。」
プロジェクターが準備され、⚫︎HKが過去に製作した映像が流れた。真珠湾攻撃の成功や順調に進む南方作戦、ミッドウェーの敗北からガダルカナル戦やマリアナ沖海戦、沖縄戦、原爆投下、敗戦、戦後復興、冷戦、高度経済成長、バブル崩壊、領土問題、技術革新など、戦争の推移と戦後の歩みがそれぞれ1時間半ほど、計3時間に渡って紹介された。
*****
「・・・・・・・・・・」
連合艦隊側は誰も声を出せなかった。
「皆さん、今見て頂いたのはあくまで我々が歩んできた歴史です。あなた方の世界で同じ結果になるという確証はありません。」
「いや、大して変わらんだろう。陸海軍のいがみ合いは簡単に消えんからな。」
久永政務官が励ませる様に言うと、山本長官が自嘲気味に言った。そこに宇垣参謀長が呟いた。
「しかし自衛隊か・・・軍でも無く警察でも無いというのは理解し難いぞ。国内で米軍を野放しにしているのも解せん。憲法にしても、何故アメリカが作った英文の翻訳を一行も変えないのだ?」
宇垣参謀長の言葉は帝国軍人でなくとも抱く当然の疑問であると共に、戦後を生きる日本人に対する怒りや侮蔑、呆れの集合でもあった。
同時に、ポツダム宣言受諾後に自身が特攻出撃し、戦死と見なされなかったことへの歯痒い思いもしていた。
一通りの感想や話が済むと、松本副総理が本題を切り出した。
「皆様にお伝えしなければならないことがもう1つあります。」
改めて真剣な眼差しを向ける副総理に、長官達も一旦は落ち着いた態度を改めた。
「今、日本は地球と異なる世界にあるらしいのです。」
山本長官達は理解が追いついていない顔になった。
「さらに我々の有する戦闘艦艇の多くが使用出来きず、海上警備や領域外の探索も儘ならない状態です。そこで・・・」
「何だと⁉︎」
松本副総理の言葉を遮って広瀬海幕長が叫んだ。
「たった今、小笠原諸島から西に約500キロの地点に巨大な陸地を発見したと報告があったのですが・・・沿岸部に横須賀海軍工廠と思われる施設があり、沖合に空母5隻、陸上に多数の航空機や野戦砲などを確認したと・・・」
全員が絶句した。
過去の大日本帝国から時を超え、さらに異世界に転移したのは連合艦隊だけでは無かったのだ。