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第3話 日本の転移とエルフ

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12月4日



「一体何が起きたんだ!?」


最初に声を出したのは原田官房長官だった。




 昨夜の午前0時を境に諸外国との通信が突如官民問わず途絶え、官邸では急遽緊急閣議が行われていた。



 外務省からは、各国にある日本大使館・領事館との連絡が一切出来ない。また各国の駐日大使館から本国と通信不能になった、どうなっているのかと説明を求められているなど。

 国交省からは、自動車のGPSが使えなくなったと各自動車会社に苦情が殺到しており、船舶や航空機もGPSによる位置把握が出来ないなど。

 金融庁からは、証券会社や銀行が海外との金融取引が一切出来なくなりパニックになっているなど、各省庁から次々に報告されたが、最も深刻なのが防衛省からの報告だった。


 海上自衛隊が保有する護衛艦の大半で電子装備や機関部が使用不能となり、海に浮かぶ唯の箱と化していた。潜水艦救難艦や練習艦などの補助艦艇を除いて無事なのが、おおすみ型輸送艦3隻、ましゅう型補給艦2隻、いずも型護衛艦2隻、あきづき型護衛艦6隻のみであり、顔が青いどころか白顔になっていた統合幕僚長から報告を受けた総理は気絶しかける程だった。

 ちなみに海上保安庁でも保有する巡視船・巡視艇の4分の1程が使用不能の状態に成り果てていた。






「総理!! とんでもない事態が……」


 各方面からの報告を受けていたところ、広田国交相の携帯に追加の報告が入った。


「海外との通信途絶や自衛隊よりも深刻なのですか?」


宮原総理は正直これ以上報告を受けたくなかった。


「現在の状況とかなり関わっていると思われます。」


「分かりました。報告を。」


「第八管区海上保安本部からの報告によると、巡視船が今朝6時25分頃に木造船に乗った漂流者2人を救助したらしいのですが、それが俗に言うエルフのようだと…」


「「「「「は?」」」」」


集まっていた閣僚は開いた口を閉じることが出来なかった。


「……この非常時に冗談はよしてくれ。」


内閣最年長の木村財務相が呆れたように言った。


「携帯で見ずらいですが、これが姉妹と思われるその2名の写真です。」


 携帯の画面に写っていたのは長い金髪で随分と可愛らしい中高生ぐらいの姉妹だったが、2人には長く尖った耳が付いており、明らかに普通の人間でないことを示していた。


上原総務相は思わず広田国交相に問うた。


「まさか日本が異世界に飛ばされたとでも言うつもりですか?」


「通常ならば絵空事と断言出来ます。しかし…」


 現状ではその非現実的な推測を否定出来ず、少なくとも何かしらの事態が発生したことは明白だった。


「その…エルフとは言葉は通じるのか?」


天野外相が疑問を口にした。


「いえ、かなり衰弱していたそうですので、話を聞けるかは回復してからになるかと。」


「いずれにしろ、現状に把握が必須でしょうな。」


総理の言葉に出席者は皆頷くしかなかった。




 この閣議で自衛隊による周辺海域の確認が正式に決定され、杉浦防衛相は統合幕僚長に海空自衛隊の出動を命じた。





 その後、西方に出動したP-1哨戒機によって、本来なら平壌ピョンヤンがあるべき地点までの朝鮮半島南部が海となっており、その先にユーラシア大陸とは異なる陸地の存在が確認された。また天体の位置が昨夜と明らかに異なっているという気象庁からの報告やエルフの存在もあって、本当に日本が異世界に転移したのだと認識された。





*****





翌日、12月5日朝



「具合はどうだい?」


「ハイ、ダイジョウブデス。」


 佐藤敏行さとうとしゆき一等海尉が体の調子を尋ねると、エルフの少女はぎこちない日本語で答えた。




 巡視船に救助されたエルフの姉妹、姉のアリンと妹のアリスは海上自衛隊舞鶴基地の自衛隊舞鶴病院に収容されていた。

 一般の病院に搬送すればどんな騒ぎになるか目に見えているため、医師・看護師の殆どが自衛隊員であり、救助地点から距離的にも一番近い自衛隊舞鶴病院に運ばれていた。


 救助された時は衰弱しきっていた2人だが、アリンは一晩の休息で多少の会話程度は出来るまでには回復していた。

 最初は怯えきっていた上に言葉が通じず、見るもの全てに動揺していたので、救助した海上保安官や医官の佐藤一尉は苦労していたが、いつの間にかアリンがカタコトではあるが日本語を話せるようになり、しかも猛烈な勢いで上達していた。

一方、妹のアリスは未だ寝たままだった。


「しかし、何で急に日本語が話せるように・・・」


「ア、アノ…」


「ん? どうかしたかい?」


「ワタシ、ミンナガイウコトバ、ワカル、オボエル、マホウ、ツカッタ。」


「え?…ええと…周りが喋った言葉の意味を理解して覚える魔法を使った?」


「ハイ」


「………何ィィィィィィィ!!!???」





*****






午後


「補佐官、此方です。」


「どうも。」


 アリンが一晩でカタコトながら日本語を話せるようになっているという報告を受け、宮原総理は補佐官の渡邊由華わたなべゆかに自衛隊舞鶴病院に向かうよう命じた。


 渡邊補佐官は舞鶴病院院長の一等海佐と他5名と共に病室へ向かった。


「ここです。」


 扉を開けた病室には少女2人がそれぞれベットに横になっており、傍らに座っていた男性と女性が即座に直立姿勢を取った。


「あなた方は?」


「はっ、彼女たちを担当している医官の佐藤敏行一等海尉であります!」


「同じく、日高真奈美ひだかまなみ一等海尉であります!」


「そうですか。では早速、アリンさん。」


「はっ、ハイ・・・」


いきなり名前を呼ばれ、アリンは動揺した。


「日本語が理解出来ていると聞いてますが、大丈夫ですか?」


「はい、ゼンブ分かる訳デハないデスガ・・・」


「分かりました。では、幾つかお聞きしたいことがあります。」





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