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第27話 認識




首相官邸・閣議室



「ユーティアル侵攻を図った帝国軍は全滅しました。また陸上自衛隊や海軍航空隊による追撃もあって、撤退を果たした敵は輜重隊の生き残りなどごく僅かと思われます。コンバル島方面については海軍による上陸前の撃破に成功、海自潜水隊の加勢も必要ありませんでした。」


「まずまずの成果、と言えますかな。」



杉浦防衛相に報告に宮原総理が肩の力を抜く。



「しかしユーティアルに於いては幾つか懸念事項も上がっています。共闘路線を維持するとなれば早急な対応が必要でしょう。」



杉浦防衛相の報告が一旦終わると、松本警察相が自分の管轄事項について告げた。



「懸念と言えば国内の世論もです。少なくなっても未だに非現実的な和平を訴える者が居ますし、同時に過激な右派勢力の台頭も見過ごせません。治安はかなり改善しましたが、転移前と比べると心許ないのが実情です。」




 その後も各閣僚からの報告が続いたが、一息ついたところで原田官房長官が杉浦大臣に問い掛けた。




「ところて杉浦大臣。件のユーティアル現地軍と特務派遣隊とのトラブルだが、決定的な対立は回避出来たと報告されているが・・・」


「その通りです、官房長官。現地軍のメリアール司令官が帝国軍捕虜の処刑を強行しようとした所を自衛隊員が説得して思い留まらせたそうです。」


「しかしよく防げたな。」



最初の一報を耳にした時は閣僚全員が冷や汗をかいた程だ。



「説得をした隊員が、その・・・精神的に不安定となっていたメリアール司令官に対して・・・」


「口説いて陥落させたのか?」



原田官房長官が揶揄からかい混じりに言った。



「・・・・・・・・」


「・・・・え、ホントに?」


「・・・・・その隊員は周りから殺気のこもった目や生暖かい目で見られているそうですよ・・・。」



閣議室で苦笑いが量産された。



「・・・・・・・・・・次の議題に移りましょう。」



暫しの沈黙が続き、宮原総理が話題を別の方向にもっていった。







*****







ハバル砦後方・葉張基地



「ニホンは一体何を考えているのだ?」



 ヴィーラは生き残った僅かな指揮官達と共にトラックで自衛隊と海軍航空隊が駐留している航空基地に移送されていた。


 移送中は拷問や辱めを受けるのだろうと覚悟していたのだが、その様な気配は一切無かった。


 それどころか基地に運ばれるやいなやニホンの軍人の口から出た言葉に驚かざるを得なかった。



「簡素ではありますが食事の用意をしてます。ヴィーラさん、でしたか? 湯浴びも出来ますがどちらにします?」



 開いた口が塞がらなかった。精神的に磨耗していた私は特に否定する事もなく湯浴びを願った。







湯浴びと食事の質に驚愕した後は、机と椅子が置かれただけの小部屋に連れていかれた。


 椅子に座るように言われてその通りにすると机を挟んだ向かい側にも一人の男が座り、私の両隣には二人の男女が立っていた。



「さて、幾つか質問をします。」



私の目の前に座る男が話し始めた。



「貴女の名前は?」


「ヴィーラ・アルデ・アレクサンドだ。」


「ヴィーラさん、コミテルン帝国が日本の領土に侵攻しようとした事は知っていますか?」


「いや、初耳だが・・・」


「では帝国がユーティアルに侵攻を図った理由は?」


「陛下の御決断だ。それ以外に理由などない。」


「ならば・・・・」



聞き取りは数時間以上に渡って続けられた。




「今回はここまでにします。明日以降も話を聞きますが、取り敢えず今日は休んで下さい。」



私は思い切って胸に抱えていた疑問をぶつける事にした。



「・・・・・此方からも聞きたい事があるが、宜しいか?」


「我々が答えられる範囲でなら構いません。」



意外と呆気なく許可された。



「何故ニホンは亜人などに協力するのだ?それに捕虜である私を優遇するのも理解し難い。ニホンの目的は何なのだ?」



男は少しだけ考え込み、直ぐに目線を私に戻した。



「我々の目的は対等な立場と交易、と言って良いでしょう。」



その言葉を聞いた私は、己の中で何かが崩れたような気がした。



「・・・・・・私をニホンに連れて行ってはくれまいか?」


「私に其れを認める権限は無いので、何とも言えませんね。一応上の者に判断を仰いでみましょう。」


「かたじけない。」







*****







『自衛隊と旧陸海軍 コミテルン帝国軍を再撃退 味方に死者無し』



この知らせは亜人各国に再び衝撃を与え、コミテルン帝国も動揺を隠せなかった。


 帝国軍は陸海戦力の壊滅によって兵力の再編成を強いられることとなり、港町ノボォナには再び兵士や艦船が帝国中から集められようとされていた。





 一方亜人各国は日本に懐疑的だった国も含めて日本の実力を改めて思い知らされ、帝国軍撃退の直後に日本が提案した東京での国際会議に否応無く参加する流れとなる。



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