第1話 大日本帝国の消失
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昭和16年(1941年)12月7日午後11時30分
いよいよ日米開戦が目前に迫っていたこの日、史実にはない出来事が発生した。
突如として日本列島、南樺太、満州、朝鮮半島、台湾、小笠原、日本委任統治領の南洋諸島、中国大陸の大日本帝国陸軍進出地域、仏領インドシナなどの一帯で強烈な濃霧が発生し、その地域にいた人間が例外なく意識を失ったのだ。
また同時刻、アメリカ海軍の一大軍港であるハワイ・オワフ島真珠湾基地に奇襲攻撃をすべく11月26日に択捉島・単冠湾を出港し、北太平洋を航行していた南雲忠一中将が指揮する機動部隊の周辺にも突然濃霧が発生した。その霧は各艦艇の内部に入り込み、乗組員は次々に昏倒していった。
さらに海外に居た邦人にも異変が起こり、まるで神隠しにあったかの様に姿を消した。
本来なら日米開戦日となるはずだった12月8日、全ての日本人が消失した。
翌日、各国は異変に気付いた。日本国籍を有する者が誰も居なくなっていたのだ。
この事態に最も困惑したのは中華民国だった。濃霧によって気を失った多数の民間中国人は夜が明けてから意識を取り戻し、帝国陸軍がいなくなっていることに気付いた。
当初、報告を受けた国民党政府は信じなかった。それは当然だ。日米開戦前には帝国陸軍の支那派遣軍は21個師団に達しており、さらに関東軍には13個師団が配備されていた。それが一夜にして姿を消すなど信じられるはずがなかった。
しかしその日以降、帝国陸軍の攻撃は一切無くなった。さらに国民党軍がどれだけ東へ進もうと反撃されることは無く、蒋介石は不審に思いつつも進撃を命じ、軍は東進を続けた。
一方、米英独ソ政府も混乱していた。自国内から外交官も含めて全ての日本人が消息不明となり、しかも外交電文すら全く発信されなくなったのだ。
各国は日本が何か謀略を仕掛けたのかと警戒したが、日本大使館・領事館への人や荷物の出入りもなく、明らかに異常だった。
さらに日本に滞在する自国の外交官や諜報員との連絡も一切出来なくなり、各国をより困惑させていた。
年が明ける頃には、大日本帝国と日本国籍を有する人間、日本国内に居た外国人全てが消失しているという衝撃の事実が判明する。日本列島、朝鮮半島、台湾、小笠原などが消えていることが確認されたが、これは何よりドイツにとって顔が青ざめる事態だった。既に半年前の6月22日にバルバロッサ作戦が開始され、激しい独ソ戦が繰り広げられていたからだ。
流石のヒトラーも危機感を抱き、戦略爆撃を実施可能な大型爆撃機の開発を急速に進めるよう指示を出した。
また連合国側ではソ連、アメリカ、中国共産党、国民党が日本の満州利権や委任統治領を巡って相互に対立し、枢軸国v.s.連合国という第二次大戦の構図が歪み始める事となる。
そして各国の思惑や利害がより複雑に絡み合い、本来の歴史から掛け離れた世界情勢へと進んでいくが、それはまた別の話である。