第10話 詳細
海自と旧帝国海軍の5隻が旧陸海軍の転移した島に向かっていた最中の12月8日午前8時
首相官邸
転移後に初めて宮原総理がカメラの前に立った。
「国民の皆様にお知らせせねばならないことがことがあります。」
この会見で日本が異世界に転移したと公式に発表され、また旧海軍のタイムスリップやエルフの姉妹のことも公表された。
最初は何の冗談かと思う国民が多かったが、それが現実だと理解すると一気にパニックとなった。
まず午前9時からの証券市場での株価大暴落に始まり、食料や日用品を中心とした買い溜め、ガソリンスタンドで給油しようとする乗用車の長蛇の列などが日本各地で見られた。
また東京湾岸や瀬戸内海にて帝国海軍を一目見ようと群衆が殺到し、官邸前にはエルフの姉妹に取材させろと報道陣が押し掛けることとなった。
翌日9日 衆議院本会議場
「先日の記者会見で述べました通り、日本列島が異世界に転移し、さらに旧海軍が所謂タイムスリップによって出現するという未曾有の事態が発生しました。」
壇上に上がった総理は息つく間も無く現状の報告を始めた。野党議員の中には総理が報告中であっても総辞任を声高々に求める者も居たが、先日の記者会見の時点では確認されていなかった旧陸軍や旧横須賀海軍施設の存在が明らかにされると、場内は騒めくどころか呆気にとられていた。
1941年12月7日時点で就役していなかった『大和』『武蔵』には乗り込んでいた船艤員も乗っていた。転移した島の沖に停泊していた空母5隻は無人だったが、こちらの5隻は大戦中に建造された『信濃』『大鳳』『雲龍』『天城』『葛城』がそれぞれ竣工した時のものである可能性が高いと報告されており、この事からタイムスリップ現象が複数重なった事が示唆された。
過去の日本から転移して来た帝国陸海軍をまとめると以下の様になる。
海軍
約15万人
戦艦12隻、正規空母11隻、軽空母3隻、水上機母艦5隻、潜水母艦4隻、重巡18隻、軽巡17隻、練習巡洋艦3隻、駆逐艦111隻、砲艦13隻、海防艦7隻、敷設艦10隻、砕氷艦1隻
第十一航空艦隊
第二十一航空戦隊
第一航空隊・九六式陸上攻撃機72機、九六式輸送機26機
鹿屋航空隊・一式陸上攻撃機72機
東港航空隊・九七式飛行艇24機
第二十二航空戦隊
元山航空隊・九六式陸上攻撃機・48機
美幌航空隊・九六式陸上攻撃機・48機
戦隊付属・零式艦上戦闘機36機、九八式陸上偵察機6機
第二十三航空戦隊
第三航空隊・零式艦上戦闘機60機、
台南航空隊・零式艦上戦闘機60機、九六式陸上偵察機8機
高雄航空隊・一式陸上攻撃機72機
横須賀鎮守府第一特別陸戦隊
横須賀鎮守府第三特別陸戦隊
第一航空艦隊
零式艦上戦闘機120機
九九式艦上爆撃機135機
九七式艦上攻撃機144機
横須賀鎮守府
陸軍
約17万人
南方軍
第十四軍
第十六軍
第二十五軍
支那派遣軍
第二十三軍
第一砲兵隊
重砲兵第一連隊・四五式二十四糎榴弾砲8門
独立重砲兵第二大隊・八十九式十五糎加農砲8門
独立重砲兵第三大隊・八十九式十五糎加農砲8門
野戦重砲兵第十四連隊・四年式十五糎榴弾砲6門
独立臼砲第二大隊・十五糎鋼製臼砲12門
第三十八師団
第三十八歩兵団司令部・九四式軽装甲車5両
歩兵第二二八連隊・四一式山砲3門、九四式三十七粍砲6門、九二式重機関銃8挺、九二式歩兵砲2門
歩兵第二二九連隊・同上
歩兵第二三〇連隊・同上
山砲兵第三十八連隊・九四式山砲11門、四一式山砲18門
独立速射砲第二大隊・九四式三十七粍砲18門
独立速射砲第五大隊・九四式三十七粍砲12門
独立山砲兵第十連隊・四一式山砲24門
独立山砲兵第二〇連隊・ボ式山砲9門
迫撃砲第二十一大隊・九四式軽迫撃砲36門
転移した陸軍は南方軍の第十四軍と第十六軍、第二十五軍及び支那派遣軍の第二十三軍だったが主だった兵器と共に転移したのは航空兵力を除く第二十三軍のみだった。また武器や人員も全てがそっくりそのまま転移しては無く、第二十五軍は3分の2以上の部隊が居らず、十四軍と十六軍の装備に至っては半分以上が無い状態だった。
海軍も潜水艦とその乗組員は転移しておらず、転移した連合艦隊や横須賀鎮守府に属する人間も全員が居る訳では無かった。
だが突如として地方の中核市規模の人口が出現したというのは特に食料面での不安が一気に増加することを意味し、既に総務省や農林水産省、経済産業省などの各省庁が食料品などの物価統制や配給制に向けて検討・準備を開始していたが、計画の練り直しを強いられることとなった。