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第9話 協力

 



 『わかつき』の船内にて、連合艦隊首脳部に見せたものと同じ映像が島に転移した陸海の将校と野村大使、重光外交官の前で流された。




「帝国が無条件降伏⁉︎」


「侮辱にも程があるぞ‼︎」


「しかしあの戦車や航空機の性能はドイツでも無理だ。未来の技術というのは否定しきれないのではないか?」


「だがその技術も米国の飼い犬に成り下がって手に入れたものではないか‼︎」


「誇り無き繁栄か・・・」


 皆がそれぞれの思いを口にする中で、久永政務官が口を開いた。


「それで本題に入りますが、この島には油田があるかもしれないのです。」


全員の目が変わった。


「先日、我が方の航空機がこの島を撮影した際に、史実の・・・あなた方が手に入れようとしていたパレンバン油田らしき建物を島の南部にて発見しまして、是非ご協力をお願いしたい。」






 戦車小隊や戦闘ヘリを送り出してまで旧陸軍を早急に説得しようとした理由がこれだった。もちろん製油所の建造物があるだけなのかも知れないが、博打を打ってでも早く油田の有無を確認したかった為に『しもきた』には大手企業の技術者や国立大学の地質学者も乗せていた。


「元の世界に戻る方法がわからない以上、この世界で生きることを模索せねばなりません。我々から見ればあなた方は過去の人間とはいえ、同じ日本人です。共に歩んでもらえないでしょうか?」










沈黙が続く中、畑大将が山本長官に意見を求めた。


「・・・大本営に指示を仰ぐことが出来ないが、山本長官はどう考える?」



 因みに、大本営とは昭和8年5月20日以前の連合艦隊と同様に常設の組織では無く、戦時に設置される臨時の組織である。軍隊の運用や作戦指導を行う軍令部門が陸軍は参謀本部、海軍は軍令部が平時には別々にあるのだが、大本営が設置されると参謀本部は大本営陸軍部、軍令部は大本営海軍部となり、軍令部門が一本化された。

 また陸軍大臣や海軍大臣は軍隊の維持管理や軍政事務などを担当する軍政部門の陸軍省・海軍省の長であり、こちらは常設の行政機関であった。



「確かにここには大本営も陸軍省も海軍省も居りませぬが・・・ならば我等だけで生きる術を模索せねばなりますまい。」


「成る程・・・では既に腹を括ったと?」


「連合艦隊を預かる身としては、彼等との協力無しには軍として成り立たないと思うが。」


 畑大将はしばらく黙り込み、悩みながらも重い口を開いた。


「時代は違えど日本がある。ならば軍人として、国を守る務めは消えていないという訳だ。」


一息ついてから、畑大将は決意を示した。


「陸軍も協力を約束しましょう。」


 南方軍の幕僚の中には不満そうな顔をする者も少なからず居た。転移した指揮下の部隊は南方軍隷下の方がが圧倒的に多かったが、南方軍総司令官の寺内大将が居ない現状での陸軍の最高階級の大将である畑大将の判断に進んで異議を唱えようとはしなかった。自分たちだけで軍の体裁を保つのは困難であることが明確だった事も、反対意見を妨げていた。また野村大使も重光外交官も協力に賛同した。


 当分の間は旧軍の指揮系統をそのままとし、自衛隊への編入などの議論はしばらく持ち越しすることとなった。










 ここに山本海軍大将と畑陸軍大将を代表とする旧帝国陸海軍と日本国の協力関係が成立し、油田の確認と沖合に浮かぶ空母5隻の調査が始まった。







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