八匹目。
「おかえりー、暁兄から話は聞いてるからー、
とりあえず、荷物まとめてるからー、」
アキラというのは、叔父さんの下の名前である。叔父さんは、母の兄だ。とりあえず、バタバタとカフェや本屋のレジを往復している母に声をかける。
「ありがとー、じゃあ、母さん、いってきまーす」
母に手を振って、鞄を持って、バイトの女の子が首をかしげた。(別に彼女とはそこまで、仲が良い訳じゃないから俺の性別をあやふやに覚えていると思う。このまえ、執事コスしたし)
「あれ、ヤト君、どこに行くの?」
「ちょっとねー、」
曖昧に返して、家を出る。自転車に鞄を乗せて、ペダルを押す。せっかくなので、俺の高校について説明しよう。
市立東高校、普通の高校。制服は女子は紺色のセーラー。男子は紺色のブレザーという、女校長の趣味丸出しの制服である。
校則はゆるい。性同一性障害などの生徒もいるため、制服は好きに着て良いので、俺はブレザーを着ている。まあ、ただ、スカートが苦手なだけだ。
クラス分けはあみだくじで決まっているという噂がある。もちろん、噂なので、真実とは限らない。
そして、俺の学校生活について、移ろう。俺は、入学してから半年ほど経っているが、担任以外と喋っていない。静かに教室で本を読んでいるだけだ。
有り難いことにそうする事によって、周りに俺が男だとバレることは無いだろう。(中学も同じような感じだったので、そうだろう。)
到着したので、俺は、自転車から降りた。鞄を片手にこれから、住む所となる家を見る。ここで、あのメンバーとやっていくのだ。俺は、ため息をつくとドアノブをまわした。どうやら、誰かが戻っているらしく鍵が開いている。
そんな俺の後ろに黒塗りのベンツがとまった。