二匹目。
「八番、宇佐乃さん、どうぞ」
スーツ姿の女性に案内されて、個室に入る。中には眼鏡の女性と、……私の見知った顔が二つあった。
「…よぉ、ヤト。我が、姪よ。お前、女だよな?」
「ヤトっ、会いたかった。兄ちゃんが街で働いている間にどうしてしまったんだい! その髪の毛と、格好と…いや、僕のおさがりはとっても、似合ってるんだけどね?」
「やっぱり、獅子丸叔父さんと、兄貴のせいでしょ! 私…俺が、ここまで合格できたのって!!」
私、改め、俺が、うがーッ、と怒ると兄貴が青ざめた顔で俺の頬を撫でた。
「あぁ、可哀相に、愚かな母にお前を任せるのは大変、心配だったんだ。あの、母親に髪を無理やり切られ、口調も男のように振舞うように強要されたんだろう? あぁ、お前の兄はお前の心を自分の心のように分かっているんだ。やっぱり、お前もこちらに住むべきだったんだよ、」
早口に兄貴が話している。更に、体が密着している。俺は、それを膝蹴りで離していく。そして、叔父を睨んだ。
「叔父さん、まず、このゴミくずを捨ててください、」
「おぉ、我が姪よ。実の兄にその言葉はどうだい…、」
「さっさと、捨ててください、」
膝蹴りをくらって伸びている兄貴を冷ややかな目で見ると、叔父は、ため息をついて、隣の眼鏡の女性に指示した。
「はあ、野上。その伸びている李兎を連れて行け。」
「はい、宇佐乃さん、」
シスコンな兄貴、登場!!
神経質で妹命な兄貴と、適当で楽しさ一番の母は、仲が悪いようです(笑)
やっと、次回、ヤトがアイドルになります!!