十匹目。
「ごっ、ごめん!
二人とも、兄貴にはあんまり、近づかないで欲しいんだけど……」
俺の言葉にテルとヨウは、こてっ、と首をかしげた。何か、可愛らしい……けど、駄目! 兄貴には近づいて欲しくない!
「何で? 先輩、良い人だよ?」
「あ、大丈夫だよ~、先輩がヤト大好き、ってことぐらい知ってるから~」
あああああああああああああっっっっ、駄目だよ、おいっ!!!
もうバレてらっ、何にも大丈夫じゃねええええっ!!!!
俺は、内心発狂しながら微笑を作る。頬の筋肉が引きつるのが分かったが、俺は、すごいスピードで外に出て、兄貴に叫ぶ。
「ばっ、馬鹿ああああああああっっっ、」
「何!? ツンデレ? ツンデレなのかいっ!?」
車に乗り込もうとしていた兄貴は、すごいスピードで首をこちらに向けた後、そう叫んできた。俺は、ため息を付いたあと、側でおろおろしていた運転手さんから、テルとヨウの荷物を受け取った。
「すいません、兄貴をよろしくお願いします」
ぺこり、と運転手さんに頭を下げると運転手さんが慌てて頭を下げてくれた。
「いえいえっ、こちらこそ坊ちゃま方を宜しくお願い致します!」
あぁ、運転手さん、良い人だ……。