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百合な彼女の転生後(仮)  作者: バルメ・メリーゲート
第一章 幼年期編
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商人キャラバン

 輝く銀色の鎧。

 風にたなびく綺麗な黒髪。

 剣を掲げ、キリッとした目で敵を見据える若き女騎士。

 隣の気配に振り向けば、そこには黒髪とは対照的な白に近い銀髪の女性。

 さぁ行こう、と手をとり敵に向き直る。

 緊張感はない、落ち着いている。むしろ敵を前にしているのにも関わらずいつもより心が穏やかに感じる。

 彼女の存在が私を強くしてくれる。

 二人なら何も怖くない。

 手を握り直し、二人勇んで戦場に足を踏み出した。


「私達の戦いはぁこれからだぁ……」

「……あのぉカレン様、お食事の用意ができたのですが……」


 目を開けるとこちらを心配そうに見つめてくる薄い青色をした髪のメイドさん。

 かわらしい彼女の名前はマリア。

 うちで働いているメイドさんの一人だ。

 いつもドジってはセーラに怒られている彼女が、心配そうに私の顔を覗き込んでいた。


「お疲れでしたら昼食はもう少し後からとられますか?」

「いや大丈夫です。すぐ起きますから」

「それならいいのですが、なにやらよくわからないことを言ってらしたので……」


 もしかしたら寝言を聞かれたのかもしれない。

 恥ずかしい……


 アーレの魔法の授業の後、魔力切れを回復させるために昼食まで寝ようとベッドに横になり、未来の魔法戦士の私を妄想していたら変な夢を見てしまった。

 でも隣にいた銀髪の女性は誰だんだろう。

 まぁ夢を真剣に考えても仕方ないか。

 私は伸びをしてマリアとともに食堂へと向かった。


 食堂に着くと、アーレといつもは巡察でいないゴルドールが既に席についていた。


「お父様、今日の巡察は終わったのですか?」

「あぁ、最近は村での揉め事もないし魔物も少ないから昼まででいいと村長から言われてな」


 なるほど、週休二日などの概念がないのに休みはどうやって貰っているのだろうと思ったらこうやって休みを貰ってたのね。


「それとな、今村に街から商人キャラバンが来ているみたいでな。昼食を食べ終わったら見に行ってみないか?」

「本当ですか! やった! 今から楽しみです!」


 私の喜びようを見て、ゴルドールとアーレが笑顔になる。

 他の街から来る商人キャラバンは村にはない色々な物を売ってくれる貴重なキャラバンだ。

 大体数人の護衛と3、4台の馬車でやってくる彼らは、街からほかの街や村を通りながら商品を売り歩き、一年かけてもとの街に帰るらしい。

 私も何度か見せてもらったが、なかなかに面白いものが多くまったく飽きないものだった。

 今日はどんなものが見れるだろうか。

 前は高すぎて誰も買わなかったが、レッドドラゴンの鱗でできたスケイルアーマーという鎧が売られていた。

 鱗に光が当たると炎のように光が揺らめいてすごく綺麗だったな。

 私は期待に胸を膨らませながら昼食を食べたのだった。




 村の中心にある広場に行くと馬車が4台停まっていた。

 各々馬車の後ろや横の幌を捲り、中の商品を広げてこれはどこどこで取れた物で、これは有名な誰が作った物でと、持ってきた品物をアピールしていた。

 私はどれから見ていこうかと眺めていると、そのうちの一台が他と違っているのに気がついた。

 その馬車は他の馬車と違い、丸みを帯びた幌ではなく、一回り大きく長方形な角ばったものだった。

 さらに気になったのは回りに人が全く居ない事だ。

 一体あれはなんだろうか。


「お父様、あの大きな馬車は何でしょうか?」

「ん、あれは……」


 ゴルドールの顔が曇る。

 どうしたのだろうか。

 もしかしたらあの馬車はあまりよくないものを運んでいるのか?

 さすがに違法な物などは乗ってないだろう。

 違法な物っていうのが思いつかないが。

 実は魔物とかそんなものだろうか。たしかにそう思えばあれは檻にも見える。

 なんだろう。

 すごく見てみたい。


「お父様、あの馬車の商品を見てきてもいいですか?」

「駄目だ」


 ゴルドールが険しい顔のまま、だが声は優しく抑えて言った。

 だが、既に私は見たいという欲求は収まらなくなっていた。

 見たい。

 駄目といわれたらなおさら見たくなる。


「あの中に何があるか知っていらっしゃるのですか?」

「カレン、あれはお前には必要のないものだ。さ、違う馬車を見に行こう」


 ゴルドールに促されて違う馬車を見に行ってみる。

 気になる。

 気になる。

 すっごく気になる。

 なぜここまで気になるのかはわからないが、さっきの馬車が頭から離れない。

 どうやって見に行こうか。

 どうにかこっそり見れないか。

 商品を見る振りをしつつ、どうにか方法はないか考えていると、例の馬車とは反対のほうから歓声が聞こえてきた。


「お、あれは……」


 歓声があがった方を見ると、人垣の中で何かやっているようだった。

 ゴルドールはその人だかりの向こうで何をやっているか見えているようで、楽しそうに眺めている。

 私は小さいのでまったく見えない。

 ずっこい!


「お父様、私にも見せてください!」

「おぉすまない。よし、肩車してやろう」


 ゴルドールに持ち上げられ肩車をしてもらう。

 何やら人垣の中心に台があり、そこにはかなりいい体格の男が二人と、その間にひょろっとした男が立っており、ひょろっとした男が人垣に向かってなにか叫んでいた。


「さぁさぁ次の対戦はどちらが勝つか、賭けた賭けたぁ!」


 今からボクシングでもするのだろうか。

 でもリングはないしそもそもこの世界にはボクシングなんてないか。

 台の上には樽も乗っている。

 酒飲み対決とか?


「あれは何をしているんですか?」

「あれはな、キャラバンが雇ってきた腕が立つ冒険者と腕相撲で勝負するんだよ。お客はどっちが勝つか賭けて、勝ったほうは掛け金の何割かと賞金がもらえるんだ」


 なるほどね。

 じゃあ冒険者が負けたら終わりなのか。

 だとしたら後から勝負したほうが有利じゃないか? 冒険者は勝負を受け続けるんだから。

 率直に今思ったことを聞いてみると


「そう思って様子を見ていたら誰かが先に勝っちゃうかもしれないだろう?」


 あ、そうか。


「だけど最後にはさすがに負けてしまうから賞金はそれなりなんだけどな。ただ今回は向こうもそれなりの冒険者のようだからもしかすると負けずに終わるかもな」


 確かに革でできた軽装の鎧を身に着けた冒険者らしき男は頬に傷があり、見た目からして歴戦の勇士に見える。

 体もひきしまってがっちりとしていて、傍から見てもかなりの筋肉を持っているのがわかる。

 挑戦者のほうは村でも有名な力持ちの男だ。

 だが筋肉の質が違いすぎる。

 これは勝てないだろうな。

 案の定開始数秒で負けてしまった。

 冒険者の方はまだまだ余裕がありそうだ。

 ゴルドールも昔の血が騒ぐのか、それを見てうずうずしているようだった。

 その時私は閃いた。

 これを利用すれば一人で行動できるんじゃないか?


「お父様なら勝てますか?」


 私の問いに一瞬きょとんとするが、すぐにニヤリと笑い


「赤の戦鬼と言われてた俺だぞ? 余裕に決まってるだろう」


 赤の戦鬼とか初めて聞いたんだが、まぁいいや。

 そこらへんは後から聞いてみよう。

 とにかくこの調子だ。


「私、お父様が余裕であの強そうな冒険者さんに勝つところが見たいです! 駄目ですか?」

「よぉしちゃんと見とくんだぞ? お父さん余裕でかっこよく勝ってくるからな?」


 ちょろい。

 ちょろすぎる。

 私をステージの近くで下ろし、台にあがって司会に挑戦する事を伝える。

 村の人たちもゴルドールが台に上がったとたん興奮度がいっきにあがる。

 冒険者も顔が険しくなり、気合を入れているようだ。

 ゴルドールは私に向かってウィンクを飛ばしてくる。

 こら試合に集中しなさい。

 ゴルドールと冒険者は向かい合い、台の真ん中にある樽の上にひじを乗せる。

 後は開始の合図を待つだけである。

 両者相手を睨み腕に意識を集中させている。


「それでは……開始!!」


 司会の合図があった時には、私は既にそこから居なくなっていた。

私達の戦いは~と言ってますが話はまだまだ続きます。

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