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百合な彼女の転生後(仮)  作者: バルメ・メリーゲート
第一章 幼年期編
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傷跡

 父ゴルドールの魔法はすごかった。

 といってもほかに比較対象がないからどれほどすごいかはわからないが、はじめて見る私にはかなりすごいものに見えた。

 ゴルドールはさらに調子に乗る。


「フレア・テイル!」


 あぁ、聞いてるこっちが恥ずかしくなる技名を叫びながら剣を振ると、炎がまるで鞭のように(尻尾にはどうしても見えない)剣の間合いのさらに外を暴れまわる。

 私はそれを見て目をキラキラさせながらキャッキャッと笑う。

 それを見てゴルドールがドヤ顔をする。

 いつか私も魔法を使いたい! と心の中で決意する私。

 まるで体に炎が宿ったように目が熱くなって、きて、あれ? 熱、あつつつ! ちょ! あついあつうううう!


「キャア! カレン! 『ウォータ』!」

 

 母アーレが呪文を唱え私の顔に冷たい水がかかる。

 あ~助かった……

 でもまだ左目の横がちりちりする。


「『ヒール』! あぁ、どうしましょう! 少しやけどの痕が! あなた! カレンの顔に痕が残っちゃったじゃない!」

「す、すまない! 調子に乗りすぎた……アーレ、カレン、ゴメンよ……あぁどうしよう」


 マジですか。

 魔法でも消えないのか……

 痛みはもうほとんど無いが、顔にやけどの痕が残ったのはさすがにすこしショックだった。

 このお調子者だけどイケメンの父に美女のエルフの母の子だからきっと私も美少女になるはずだったのに……

 たぶんそうなるはず。

 だよね?


「あなたは昔からそうやって! あの時も……!」

「すまない、今度からカレンの前では……」


 アーレがゴルドールにしこたま説教をしてる間に昼食の時間になり、メイドに呼ばれ三人は家に戻った。

 パパンはお調子者。

 次からは喜んだりおだてたりするタイミングには注意しよう。



~~~



 あれから数年たった。

 私は一人で歩けるようになってから、よくゴルドールの書斎にいた。

 父の書斎には多くの本があった。

 基本的に魔法や剣術の本が置いてあり、申し訳程度にマナーなど教養を身に付ける本が置いてあった。

 最初は文字を覚えるのに苦労するかと思ったが、あの炎の剣の魔法を出せるようになると想像すると、それすら楽しいものに思え、どんどん覚えていった。

 前の人生でもこれくらいやれたらいい大学にいけたかもしれない。

 あ、あの卒業前は結構がんばってたか。

 私はそれからイヤナ記憶を思い出しそうになったので、すぐに本に意識を戻した。


 本を読んで、この世界の魔法は大まかに分けて属性魔法と無属性魔法があり、属性魔法は基本色で呼ばれることがわかった。

 色はその属性の魔法を表し、火属性なら赤、水なら青、風は緑、雷は白、土は黒色など、その見た目の色で呼ぶらしい。

 ゴルドールがあのとき言っていた赤の精霊とは、火の精霊のことだったようだ。


 魔法の中には攻撃するものと回復するものがあった。

 大体全ての属性、無属性に攻撃魔法があったが、回復は青の魔法(青だから水の属性)にしかなかった。

 魔法は大体詠唱して発動させるのだが、一応無詠唱でもできるらしい。ただ無詠唱で発動させるにはかなりの魔力のロスとイメージ力が必要不可欠という。

 詠唱すれば一定の効果と普通の消費量なのだが、無詠唱だと術士によるが魔力が多めに消費され、さらにそれを頭の中にイメージしながら発動させないといけない。

 戦闘中詠唱すれば一定のものが出せるが、相手に手を読まれやすい。無詠唱だと手は読まれにくいが戦闘しつつイメージを固めないといけない。

 そしてなにより魔力の消費は抑えたいだろう。

 これからこの世界で生きていくのに一応は覚えておいたほうがいいだろう。

 できれば戦闘などしたくは無いが。


 魔力、ゲームで言うとメンタルポイント、MPは人それぞれで元から持っている量は違うらしい。

 ただ魔法を使っていったりすると増えたり、魔石でブーストしたり、複数人で魔法を発動したりなどできるようだ。

 あまりに限界を超え使い続けると、めまいや吐き気、幻覚を見始めて、最後には死ぬらしい。

 気をつけないと。


 とりあえず私は赤の魔法を唱えてみることにする。


「えーと……赤の精霊よ、我が呼び声に答え力を貸したまえ……」


 手のひらにぽわっと炎がうまれた。

 すごい! できた!

 手の数センチ上を小さな炎がゆらゆらゆれている。

 手は熱くない。

 なにか手のひらから吸いだされていくような感覚だった。

 魔力を消費してるのだろう。

 魔法発動に詠唱はいるが、技名は個人のイメージを具現化させやすくするためのもので、絶対にいるものじゃないようだ。

 ゴルドールのは彼の固有の技だったのだろうか。


「すごい! すごい! これが赤の魔法かぁ。火属性はやっぱり基本だよねぇ」


 少しして炎はふっと消えていった。


「あぁ消えちゃった。持続時間は決まっているのかなぁ。まぁいいや他の魔法をたm……ぅうぇ」


 炎が消えたのは魔不足で消えたようだ。

 私は朝ごはんをドロップした。

 そしてその中に突っ伏したまま意識がとんだ。



~~~



「アーレ! カレンが目を覚ましたよ」


 目を覚ますと私はベッドに寝かされていた。

 あれが魔力を使いすぎた状態なのか。

 まさか自分がドロップした中にインするとは……

 あ、今更だけど私の名前はカレンじゃない。

 正式にはカーレント・アウド。

 カレンは愛称である。


「もう、カレン! その年で魔法を使ったのはすごいけど、今度からはお母さんかセーラが一緒の時以外は禁止です! わかった?」


 お母様、怒っていても超美人。

 でも怖い。

 なんか迫力が違う。

 母は強し。


「はい、わかりました」


 転生してから初めてアーレに怒られたかもしれない。 

 お母様は怒らせないようにしよう。


 その日晩御飯のデザートは無しだった。

 悲しい。

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