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百合な彼女の転生後(仮)  作者: バルメ・メリーゲート
第三章 学園編
34/39

小動物、そして講義

 ――何なのだ、これは! どうすればいいのだ!?――


 あるドラゴンが言ったセリフを叫びそうになるほどに、私は難しい選択を迫られていた。


 一つは、わが最愛のセリシア嬢を守るために、むさ苦しく汚らわしい寝床で我慢するか。

 一つは、すべて明かしてその上でセリシア嬢に群がるもの共を傍観するか。


 ん? てか女子寮に行っても一緒に寝たりできないわけか。

 ということは、私ががんばって性別を隠し続ければ、セリシアには男が付いている>他の男が近寄りがたい>私嬉しい。

 もし女子寮に行ったら、セリシアはフリー>男共が群がる>私は特に障害になりえず>しかもどっちに転んでも寮で寝るときは別。


 私はいやいやと時間を稼いでいる間にピンク色のきれいな脳細胞をフルにヴォルケイノさせてメリットとデメリットを弾き出し、決断した。


 待たせている奴らに振り返る。


「いいでしょう。いざ、男子寮へ!!」

「ちょ、カレン大丈夫なの!?」


 アヤメが叫ぶ。

 だが私の意志は揺るがない。


「すまない、少しの間はなれるだけだ。なぁにうさちゃんは寂しくて死んでしまうのは嘘だから、きっと君なら耐えられるよ」

「ごめんまったく意味がわからないわ……。まぁあんたがいいならいいけど知らないわよ!」


 アヤメはそれだけ言うと行ってしまった。


「カレン様、一緒じゃないの?」

 

 うっ、セリシアから行かないで光線が……。


「セリシア、すまない。これは君のためでもあるんだ、我慢してく、あらら?」


 急に視線が高い位置に、ってあれ浮いてる?


「まったく女々しい坊主だぜ、さっさと行くぞ」

「セ、セリシアー!!」

「カレン様ー!!」


 ああ何たることだ、でかい亀のような魔王に王子は攫われてしまった!


「誰が亀だ誰が」

「あ、すいませんつい」


 謝って下ろしてもらう。

 にしても私をひょいと持ち上げるとか結構力あるなぁ。

 セリシアは私が連れて行かれている間にアヤメに引っ張られていった。


「えーではいいですか? 今から皆さんにお部屋の鍵を渡します。そこがあなたたちが生活する部屋です」


 小さな鉄製のプレートが付いた鍵を渡される。

 プレートにはB三一四と書かれていた。


 番号から察するに三階かな。

 新入生は最上階からだ! とかは無いのか。

 あ、同室の人先輩って言ってたし上級生もいるから関係ないのかな。


「えーでは皆さんの学園生活が良いものでありますように。では」


 そう言って綿毛の職員さんは何か十字をきるような動きをして行ってしまった。

 もしかしてキリスト教? なわけないか。

 そういやこっちの宗教ってどうなってんだろうか。

 

 なんて考えてたらすでに一人になってしまっていた。

 皆せっかちなんだからん。



~~~



「えーと三一四、三一四」


 すんごく長い廊下を歩く。

 一四だからそこまで奥のほうじゃないと思うけど……てかこれ全部で何部屋あるんだろうか。


「これFPSだったら絶対スナイパーいるだろうな。私だったら絶対通らないね」

 

 SG使いの私にとって見晴らしのいい直線とか地獄でしかない。


「あ、ここだ」


 三一四、合ってるな。

 ノックしてもしもーし。


「はーいどうぞー」

 

 やけに高い声だな。

 まあいい、とりあえず第一印象が大事だ。

 笑顔で元気よく挨拶!


「失礼しゃっス! 今日からおせぁになりゃっス! カーレントっス! よろしぃしゃっス!」


 舐められずに、かといってあまりへりくだらず、そして元気よく。

 完璧だな。


「あ、ははい! よろしく、おねがいします!」


 私は勢いよく下げた顔をバッと上げる。

 そして驚いた。


「あれ? 女の子?」


 そこには細い体でショートカットの赤い髪の美少女がいた。



~~~



 名前はヨナ・エジェナ。

 髪は綺麗な赤で、真ん中分けでショートカットにウェーブがかかっている。

 中世ヨーロッパにいそうな髪型だ。

 肌は白く目は綺麗な青色。

 体は細く背も低め、声変わりしていない中性的なボイスが年上の女性にすごく効きそうである。

 何に効くかは知らんけども。


「すいません、女の子なんて言ってしまって……」

「いやいいよ謝らなくて、よく間違えられるから」


 部屋に入ったとき完全に女の子だと思ったんだけどな。

 あれだね、男のってやつだ。

 しかも人工的じゃなく自然的な天然物だ。素晴らしい。


「僕はカーレント・アウドといいます。今日からここでお世話になりますので、よろしくお願いします、ヨナ先輩」 

「うぇ? あ、こちらこそよろしくお願いします」


 改めて挨拶。

 手を差し出して握手する、ってうおおお手ちっちぇえぇ! 指も細くてすごく綺麗!

 しかも手を出すときに髪を反対の手でこう耳にかける仕草がまたすごく女の子してる!


 これ女子力完全に負けてますね……いいけどね、前世でも女子力無かったし……。


「えっと、カーレント君は荷物は無いの? 手ぶらだけど」

「あぁ、今宿に置いてるんで後から持ってこようと思ってます」

「もしかして他の街から来たの? あ、それ冒険者のギルドカードだよね? すごいすごい、冒険者さんなんだ!」


 なんだこれ、なんだこれ。

 私のカードを見たりしてキャッキャッとはしゃぐヨナ先輩。

 これなんて小動物よ。

 これは危ない、いけない道に足を踏み入れちゃいそうだ。


 あ、私女だからいけないことはないのか。


「そういえばここでの生活の方法とかは先輩に聞けって言われたんですが、教えてもらってもいいですか?」

「うん? いいよ、えっとね……」


 学園での生活、その一。

 講義参加は自由、単位は無い。

 

 おお、日本の大学生達よ、楽園エデンはここにあったぞ!

 この学園では単位とかはないので、聞きたい講義だけ出ればいい。

 二年ごとにある試験さえクリアできれば何をしていてもいいらしい。

 とある強者は試験がある数日以外はずっと旅に出ているとか。


 尚、講義は十日分が毎日更新されながらホール、寮の掲示板に張られるらしいのでそこで確認すること。


 その二。

 学園金は分割でもまとめてでもいいので年に金貨一枚分はらえばよい。


 ここでは学費を学園金というらしいが、年に金貨一枚分払えばOK。

 教員室に行って誰かに学園金ですと言って渡せばいい。

 

 安い。

 金貨一枚分を一年で稼ぐのはDランクの討伐依頼をちょこちょこやってるだけで稼げる。 

 しかも寮でのお金は要らないので衣食だけのお金で済む。

 お金が無い貧乏学生とかいないんじゃないか。

 あの奇天烈な大百科の苦学生も大喜びだ。

 ん? あの人浪人生だったっけ? じゃあ意味ないか。


「これで全部だよ」

「え、これだけですか?」


 これまたずいぶんと、自由というか適当というか……。

 でも日本みたいに義務教育ってわけでもないし、自分で学びに来てるわけだからそれでもいいのかな。

 

「あ、そうそうこれつけとかないと」

「それは、バッチですか?」

「うん、この学園章は常につけておいてね」


 そういって私の胸に付けてくれる。

 近づくとふわりと甘い匂いが香ってくる。

 あまったるい感じでも無く、不快感が無いいい匂いだ。

 急に自分の匂いは大丈夫か気になってきた。

 たぶん汗臭くは無いと思うけど……。


「はい、できたよ」

「ありがとうございます」


 杖と剣が交わった形の赤色の学園章。

 赤か。


「ソ連か?」

「え?」

「いやなんでもないです」


 とりあえず大体のことはわかったので荷物を取りに行ってくるとヨナ先輩に伝え寮を出た。

 


~~~


 

 寮の入り口で待つ私。

 ここは四棟すべてを囲む塀の入り口だから絶対ここを通るはずなんだが、アヤメとセリシアはまだ来てない。

 もしかして先に宿に帰ってるとか?

 別れる前にどこかで集合するように言っといた方がよかったな。


 目の前を色々な人が通り過ぎていく。

 本当に色々な種族がいる。

 さっきなんて頭がトカゲの形した人がいて驚いた。

 というかちょっと怖かった。

 あの人たち普通に喋れるのかな、と考えていると声を掛けられた。


 声を掛けてきたのは女性の二人組み。

 両方かわいい、おっとアヤメに言われたことだしキリッとした顔しとこう。


 そのかわいこちゃん達が言うには、もしお暇でしたら一緒にお茶でもしませんか? というものだった。

 これはあれだな、逆ナンだ。

 しかもこんなかわいい子達からだ。

 しかも一人はスカートが短く、一人は結構胸元が開いている。

 

 ……いかんいかん! 鼻の下を伸ばさずにキリッとしなければ!

 でもお茶に行くわけにはいかないので、その場で楽しくおしゃべりする。

 この姿だとやっぱりイケメン男子に見えるのか。

 これはこれでいいな、悪くない。

 にしてもセリシア達来ないな、やっぱり先に宿に行ったのかな。

 というか宿で待っててもよかったのか。今から宿に行ってみようか。

 そう思い、そろそろ話を切り上げようかとした所でまた声を掛けられる。


「出入り口でいちゃついてんじゃねぇよ! 邪魔だ邪魔!」


 見ると背の高いつんつん頭の男が私を睨んでいた。 

 一応通れるくらいはスペースがあるんだけどね。


「すいません、この子達とのおしゃべりがあまりに楽しくて」


 女の子達に一緒に移動するように言って出入り口から離れる。

 入学早々先輩方と問題起こしたくないしね。


「ちっ、貴族のぼんぼんが。お遊びで来る場所じぇんえんだよ」


 捨て台詞をはきながら去っていく男。


 腹立つっ! なんだあれ!


 確かに今の私見たらチャラついてるように見えるかもだけどさ、そこまで言わなくてもいいじゃん!

 こっそり遠くからスナイプしてやろうか! しないけど!


「あ、カレン様!」

「その子達はどうしたのよ?」


 大天使セリシアとその従者アヤメが来たので女の子たちにまた今度といって宿へ向かう。

 離れるときセリシア達になんか視線を感じたが、嫉妬とかその類かしら。

 もてる男は辛いね! いや私女だけどもね。


 宿の行き帰り、途中で昼食をとりながら話を聞く。

 セリシアもアヤメも同室になった先輩はいい人らしく心配なさそうだった。

 セリシアの同室の人は人間族で、アヤメの方は頭に兎のような耳が生えた獣人らしい。

 ウサミミ……ぜひとも見てみたい!

 きっとパンツで飛び回るアニメに出てくるナイスバディな人に違いない!

 今度アヤメにつれてきてもらう。



~~~



 さて寮に戻って荷物も置いてきた。

 ヨナ先輩は出かけているようで部屋にはいなかった。

 とりあえず校舎のホールに集まりこれからどうしようかと話し合う。

 その結果、まだ時間があるから何か講義を受けてみようという事になった。

 どれを受けようかとホールにある掲示板を見てみると、ギルドのように縦に三つに区切られていた。

 それぞれA、B、Cクラスで分けられており、下のクラスは受けられるが、自分のクラスの上は受けられないようだった。

 

 まぁ私達Aクラスだから好きなの受けられるんだけどね!

 というか全員Aクラスでよかったのだろうか。

 セリシアは魔力Cで、アヤメもBだったし、基準がいまいちわからん。


 掲示板には色々な講義が書いてあった。

 Cランクは魔法の基礎知識やら剣術の構えなど、基礎を重点的に組んであり、Bランクはそれの実践的な使い方かな? Aランクは無詠唱などの応用、新魔法の作成研究、剣術等の実践に魔物狩り等々。


 んー正直どれを受ければいいかわからん。

 

「ねぇどれか受けたいのある?」

「んーそうねぇ。私はAランクの無詠唱の魔法による効果の差かしら」

「じゃあそれでいいか」


 効果の差、無詠唱だと魔力を食うけど発動が早く本人の魔力量しだいでかなり強くも弱くもできるってて認識だったけど、他に何かあるのだろうか。

 講義をする教室の場所を見て、少し迷いながら何とかたどり着いた。

 

 ずらっと並んだ机、私達は開いている後ろ側の席に座った。

 結構人がいるな。

 Aランクってそんなにすごいことじゃないのかな。

 講義の内容を見た感じCはほんとに基礎ばっかりだったから基本BかAばっかりなのかもしれないな。


 きょろきょろ周りを見ていると、さっきの女の子二人組みがいて、こっちに気づいたのか手を振ってきた。

 どーもどーも。

 周りの男からの痛い視線を感じる。

 ふっ、イケメンは辛いぜ……。

 そうこうしているうちに先生らしき人が入ってきて講義が始まった。


 講義を受けて感じたことは、私の認識は間違ってないということだった。

 アヤメはよく分かってなかったのか、時折驚いたようにへーとかなるほどとかつぶやいていたが。

 私が旅の途中でたまに無詠唱魔法のコツを教えたりしていたが、あんまり伝わってなかったらしい。

 講義が終わった後のアヤメの興奮具合から見て私の説明がいかにだめだめだったのかよく分かった。


 もう今度から人に教えるのやめよう……。

 アヤメのきらきらした笑顔に苦笑いしか返せない私……。

 セリシアは興味なかったのか途中から寝息を立てていた。

 正直講義の半分くらいはその寝顔に見とれていたのは内緒ね。


 その後もう二つほど講義を受けて寮に戻った。


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