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百合な彼女の転生後(仮)  作者: バルメ・メリーゲート
第三章 学園編
33/39

一発ネタ、そして選択

 身だしなみ良し。

 髪型良し。

 持ち物良し。

 天気も快晴、気分も良し。


「セリシア準備できた?」

「うん、できたよ。行こう?」


 セリシアの準備も良し。

 さてアヤメの様子を見に行くか。


「こっちも準備できてるわよ」


 すでに開いた扉の先にアヤメが立っていた。


 ノックをしないなんて、もし着替えてたらどうするの!


「別に同姓だから気にしないでしょう?」


 一部の人間には当てはまらないけれど、ぐぅ正論……。


 料理を運んでもらって三人で朝食をとる。


 アヤメの部屋は別なので、私とセリシアの部屋に来て一緒に食べている。

 なぜ別なのかというと、三人で泊まれる部屋が大部屋しかなかったからだ。

 グルーブでは元々別の部屋で泊まっていたし、王都ではフラウさんが大部屋で一緒に泊まってくれたから問題なかった。

 だがここにきて、問題が発生した。

 普通宿はシングルか大部屋しかないらしい。

 大部屋だとさすがにお金がかかるので、シングルを二つ取ることで落ち着いた。

 なんで三つじゃないかって? いわせんな恥ずかしい。


 宿を出て昨日見に行った門のところへ移動する。

 

 なんか入学するって思ったら緊張してきた。

 見ず知らずの人たちといきなり同じ教室で勉強するのだ。

 きっとグループができて目立つ奴はいじめられるに違いない。

 あの子私よりめだってうんたらかんたら言って上履きを隠されたりするのだ。

 いやそもそも上履きに履き替えたりするんだろうか?

 まあいいか。

 ともかくあまり目立たないようにしよう。

 一応これでも前世ではばりばりの現役JKじょしこうせいだったのだ、学生としての処世術は身に着けている。

 友達も何人も……あ、だめだだめだ、あれは思い出すな、だめだ。

 朝から嫌なものを思い出してしまった……。

 

 ふと隣で歩くセリシアを見る。

 実に普段どおりである。

 ただまったく知らない人たちの前で発表とかあったらやばそうだなぁ。

 普段感情が顔に出にくいからな、出るときはすでに感情が一定以上になってるときだから回りの人達気がつくかな。

 心配である。

 

 セリシアの隣、セリシアを挟むように歩いているアヤメを見る。

 むちゃくちゃ緊張しているのがわかる。

 顔は口を真一文字の形にして、変に眉間にしわを寄せている。

 これで手と足が一緒だと完璧だったんだけどな。

 と思っていたら何もないところでこけそうになった。

 自分で自分の足に躓くとか、器用だな。


「落ち着いて」

「私が緊張してるって? 大丈夫よこれくらい」


 私は誰とも言ってないが。

 こっちも大変心配である。


 

~~~



 いかにも学園という感じの洒落た門、その前に集まるまったく学園らしくない集団。


 使い古されたローブを革の鎧の上に着ている男が三人。

 見た目二十台前半くらいだろうか。

 たぶん冒険者だろう。


 その三人から少し距離をとっている男が二人。

 格好からして普通の庶民だろう。

 こちらは少し若く見える。


 そしてその二つのグループをちらちらと見ている地味な色のローブの少女。

 少女と一緒に少し高そうな服に皮の胸当てや手甲、脚甲をつけた男女。

 そのうち猫耳が生えている少女は凛としてまるで女神が降りてきたかの様な神々しさを感じるほどの可憐さを備えている。

 もちろんセリシアと私達だ。


 門の前には計八人が待機していた。

 門の横にある受付には人がいない、少し早く来すぎたかな。

 一応門は開いているが勝手に入ってはだめだろうな。

 ちらほらと生徒らしき人達が見える。

 征服は着てないようだがないのだろうか。

 まことに残念である。

 

 にしても暇だ。

 セリシアはそんなに喋るほうではないしアヤメもかちこちになってるし、いきなり他の人達に話しかけるのは嫌だし。

 しょうがない、かちこちになっているアヤメの緊張をほぐしてやろうか。


「ねぇ知ってる? 学園って特殊な挨拶があるんだって。それを知らないと卒業まで無視されるとかするらしいよ」


 二人にそう振ってみるとセリシアはふーんと興味なさそうな返事、アヤメは……すごく聞きたそうにしている。


「ねぇそれってどういう挨拶なの? すぐここで覚えられるようなもの?」


 聞きたそう、というかすごい食いついてきた。

 そもそも私はアヤメに聞くまで全然学園があるなんて知らなかったし、どっかでそんな話を聞いてたらすでに話てるだろう、とか少し考えたらわかるだろうが、アヤメさん緊張しすぎて頭が回ってないな。


「まずは右肘を突き出して、そうそう。その後手をぴんと伸ばして左肩の前に。まっすぐ腕が横になるようにね。そして目線は上を向いて、まっすぐ目を合わせるのは先輩に対して失礼だから」


 私はそんなこと聞いたことないけど。


「上を見たら自然にあごが出るでしょ? そのままあごを突き出して、これ中途半端だと相手怒っちゃうからね」


 やばい、ここまでですでに噴出しそう。

 だが、我慢だ。

 アヤメは上を向いているからわからないだろうが、庶民の一人がうつむいて肩を震わせている。

 まだだ、まだ早い。

 すてんばーい、すてんばーい……。


「そして最後にこういえばいい、いくよ? はい、ア〇ーン!」

「あ、ア〇ーン!」


 一瞬の静寂の後、爆笑。


 決まった、完璧だ……。

 

 門の前の集団はアヤメを除いて腹筋が崩壊した。

 恐ろしい破壊力だ……。

 あのセリシアでさえ笑っている……。


 私はその後アヤメさんの全力びんたで顔半分が真っ赤になった。



~~~



 受付に現れた男性職員が全員に紙を渡し、それに名前と年齢、種族を書いて渡す。


「えーでは今から魔力検査などをするので、私についてきてください」


 ぺらぺらとそれをめくりながらそう言って歩き出す。

 

 男性職員の頭の上が寂しいというか虚しいというか、風に吹かれふよふよと少ない芝生が踊っている。 見た感じ四、五十台くらいに見えるが、ここに案内役で来るってことは教頭とか上の人ではないのか。


 ぞろぞろと私たちは後を付いていく。

 アヤメさんはまだ目すらあわせてくれない。

 今回はちょっとやりすぎちゃったかな……。

 後で何かおごってあげよう。


 移動中在校生らしき人達とすれ違う。

 やっぱり制服はないみたいだ。

 残念無念。

 にしてもやけに視線を集めている気がする。

 私がイケメンだからかな? と思ったがよくよく見てみると、皆セリシアを見ているような気がする。

 一応殺気を飛ばして威嚇する。

 ちゃんと殺気が出てるかわからないが、雰囲気で察してくれ。


 そうやって威嚇しながら歩いて、外から見えた神社のような大きな屋根の建物に到着。

 中に入ると畳はひいてないがまんま武道場に見える。

 アヤメの名前とかこことかちょこちょこ日本ぽいところがあるのは何でだろうか。

 偶然なのかな。

 というかここ板張りなのに土足でいいのか。


「えーこれから順番に呼ばれた順で並んでください。えーまずはセリシアさん」


 セリシアが最初か。

 というかこれさっき渡したままの順番じゃないか?

 それなら私達は最後に渡したから最初に呼ばれることになるな。


「次は、えーアヤメさん、カーレントさん、えーアイブナルさん……」


 そうして次々に呼ばれ並んでいく。


「では順番にこれを握って一気に魔力を流してみてください」


 そういって握力計のようなものをセリシアに渡す職員さん。

 セリシアが受け取り魔力を流していく。


「セリシアさん、魔力量Cと」


 セリシアの魔力量がC。

 少ないのかな。

 魔力計? を次のアヤメの渡しセリシアが横によける。

 次はアヤメか。


「アヤメさん、えーBと」


 B、いやアヤメの大きさだとCはあるんじゃないか。形もいいし私的には結構好きだけどな。

 あ、そっちじゃないって? これは失礼。


 アヤメが横によけて私に魔力計が渡される。

 

 セリシアとアヤメが見ている。

 ここはちょっといいところ見せようかな。

 

「えーカーレントさん……」

 

 魔力計には数字が書いてないが針だけ付いていた。

 それが三つに線で分けられている場所のどこの部分で止まるかでランクを分けているようだった。

 セリシアは一つ目のゾーンの真ん中、アヤメは二つ目のゾーンの後半あたり、そして私は、


「あの、これどうすればいいでしょうか……」


 振り切れた。

 

 いや最近無詠唱でしか魔法を使ってなかったし、それなりに増えてると思っていたけど……。


「え、えーと、一応Aランクで……」

「あ、はい」


 Aか。

 横によけて次の人に渡す。

 なんか後ろからの視線が痛い……。

 さっそく目立ってしまった。


「カレン様すごい……」

「あんたほんとに何なのよ」


 私をきらきらとした目で見るセリシアとあきれ気味のアヤメさん。

 目立ってしまったがセリシアの私に対するポイントは上がったように感じる。

 うふふーもっとほめていいのよ?


 一通り全員が終わった。

 後ろの人達はBが一人と後はCだった。

 まぁ見た目脳筋ぽい人しかいなかったしね。

 君たちMPにもステ振らないと後々困るかもしれないよ?


「次はですね、えー剣術の腕を見ますので、各々一組ずつ手合わせしてもらいます。あ、怪我は私が治せますので心配せずに。えー木剣などはそこにありますので好きなのを選んでください。あくまで腕を見るだけなので、えー過度な攻撃などはしないように」


 まじか、いきなり手合わせか。


「ちょっといいか?」


 後ろの方から声が上がる。

 冒険者ぽい人の一人が手を上げている。


「はいどうぞ」

「魔法は使っていいのか?」

 

 あ、そういや何も言ってないな。


「あ、すいません魔法は禁止です」

「そうか、わかった」

 

 魔法禁止か。


 ゴルドールやセリシアと訓練してそれなりにはできると思ってるけど正直自信ないんだよな……。


「えーではセリシアさんとエルードさん」


 いきなりセリシアか。

 普段どおりの顔でいつものように大き目の両手剣を選ぶセリシア。

 相手は冒険者ぽい人達の一人で、彼も同じように両手剣を選んだ。

 両者武道場の真ん中で向かい合う。

 てかこうしてみるとすごく広いなここ。

 周りに観客席もあるしイベントとかあるのだろうか。


「おいおい手加減してやれよー」

「女の子泣かすなよー」

 

 後ろから野次が飛ぶ。

 それにエルードと呼ばれた彼が手を上げて答える。

 結構体格差があるけど大丈夫だろうか。


 だがその心配は一瞬で杞憂であるとわかった。

 開始の合図の後、一分持たずに彼は沈んだ。

 

 セリシアは上段からのみえみえのテレフォンアタックに、抜き胴のようにすれ違いながらの斬撃を叩き込んだ。

 そして過度な攻撃は禁止とさっき言いましたよね! と怒られていた。

 相変わらずのセリシアの容赦のない打ち込みにあらためて戦慄した。


「えー次は……」


 今回はランダムみたいで最後に私とアヤメが残った。

 てかアヤメとやるのか私。


「手加減はいらないわ。私だって強くなったんだから」


 キッとアヤメが睨んでくる。

 これ絶対さっきのあれの怒りも含まれてるよね?


 お互い片手剣を選んで向かい合う。

 ん? アヤメが近接武器使ってるところなんて見たことないけど、使えるのか?

 構えはそこそこできそうには見えるけど……。


「では、はじめ!」


 合図があり両者駆け出す。

 結果、最初の私の攻撃を剣で受たアヤメがその衝撃で剣を落としてしまい終了……。

 若干涙目になっているが、さっきのはただの強がりか……。

 

 にしても、これでちゃんと剣術の腕がわかるのだろうか。


「ではえー、皆さんこれで検査は終わりです」

 

 この後私は一旦離れるので、門から入って正面の建物の入ってすぐのホールで待っていてください。

 そう言って職員さんは行ってしまった。


「これ調べてどうするんでしょうね」


 移動しながらアヤメが話しかけてきた。

 やった! 許された!


「もしかしたらグループが変わってくるのかもしれないね。ABCの三ランクで分けるとか」

「離れるのかな」

「え、何寂しいの? もーアヤメは寂しがりなんだから」

「違うわよ! 誰もそんなこと言ってないでしょ!」


 もうツンデレさんなんだから。

 いや、まてよ。

 もしそうならセリシアと分かれることになるのかも……。

 分かれてしまったら断固拒否して同じクラスにしてもらおう。

 あなたは上のランクのクラスですって言われてもだが断るって拒否しよう。


 全員がホールに移動して待つ事数十分。

 さっきの職員さんが頭の綿毛をふわふわさせながら戻ってきた。

 彼は淡々と誰がどのクラスか言っていく。


 私、A。

 セリシア、A。

 アヤメ、A。


 って全員Aかよ!

 いやうれしいけどさ、判断基準がよくわからない。

 

「これは皆さんの能力を総合的に見たもので能力が上がったと判断されれば上のクラスにいけますし、逆に下がったと思われれば下げられますのでえー皆さん気を抜かずに精進してください」


 下がることもあるのか。

 怠けてたりしたら罰として下げられたりするのかな。


「では最後に皆さんの寮に案内しますので、他の詳しい説明などは同室の先輩方に聞いてください」


 寮。

 え、寮生活なのか!


 まぁ考えればそうか、ずっと宿代払うとしたらかなりのお金がかかるしな。

 ただ同室のって事は最低でも二人で生活するのか……やっていけるかな私。


 そんな不安をよそに寮がある方向へ歩いていく。


 寮は学園の門から見て左、十時の方向、学園の中心の校舎の裏手にあった。

 周りは塀で囲まれていて、大きな四階立ての建物が四列ででんと並んでいる。

 塀の中に入ると、その四棟のうち二棟ずつさらに塀で分けられていた。


「ごきげんよう皆さん。今回は女性もいるとの事で私が女子寮の案内をさせていただきます」


 丁寧な挨拶をしてきた赤い髪の女性。

 彼女も職員なのだろうか。にしてもすごく若く見える、二十台前半くらいかな。

 

 早速移動するというので私とセリシアとアヤメの三人で付いてい――


「君、カーレントさんはこっちですよ」


 こうとしたら肩をつかまれた。


 え?


「おいおいそんなに女に植えてるのかよ。それともどっちかは恋人か何かか?」


 冒険者の一人が野次を飛ばしてくる。


 っていやいやいや私女性、いや今は男装してるから、あれ? いやいや。


「とにかく君はこっちです」


 ぐいぐいと綿毛の職員に引っ張られる。

 ここは正直に言うか。


「いや私……」


 ……いや待てよ。

 もしここで女だと言ったら、セリシアを男共に狙われてしまう。

 このまま男としてすごすか……?

 いやさすがにそれは難しいか、個室じゃないみたいだし着替えるところを見られたら……。

 待て待て、でもよく女子高に男のとして入学して生活する漫画もあったし、逆もあった。

 

 いける、のか?


 いやでも……。


 

 

 ど、どうしよう……。 


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