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百合な彼女の転生後(仮)  作者: バルメ・メリーゲート
第一章 幼年期編
3/39

新しい私

「ん……ぅあ」


 声がうまく出ない……

 

 私は、どうなったのだろうか……


 ここは、病院?

 ベッドに寝ている感覚はあるが、何か違和感がある。

 私は記憶の最後を思い出す。

 あの大きさのトラックにはねられたのだ、たぶんすごい重症か、最悪寝たきりになるんじゃないだろうか。

 いっそのこと、そのまま死んでいれば……


「---~@;;--~」


 何か声が聞こえる。


 なんだろう。

 まったく聞き取れない。

 英語じゃない。

 今まで聞いたことも無いような言葉だ。

 今いるのは日本じゃないのだろうか。

 もしかしたら手術のために外国に行ったとか。

 さすがにないか。

 まずそこまでして助けてくれる人が思いつかない。


「んぅあ……」


 やはり声がうまく出ない。

 出ないというか、舌が動かしにくいような……

 とりあえず周りを見てみればわかるかもしれない。

 ゆっくりと目を開けてみる。


 金髪の綺麗な髪の女性が私を覗き込んでいた。

 色は白く、目鼻立ちは整っていて、まるでどこかのハリウッドスターのようだった。

 だが、この女性は普通の人と違うところがあった。

 普通の人より耳が長かったのだ。


 女優さんのようなこの女性の耳は、普通の人に比べて横に長く突き出ていた。

 とんがった典型的なエルフ耳。


 エルフ、コスプレ?


 いやさすがに病院でコスプレして診察する先生などいないだろう。

 もしかしたらこの人は生まれつき耳の形が変わっているのかもしれない。

 気にしているかも……

 あんまり目線をそっちに持っていくのはやめておこう。


「~--=^^@;ll~~-」


 なにか私に対して言っているが、まったく何を言っているかわからない。

 フランス語っぽくないし、もしかしてロシア語とか?

 何か語りかけながら私の頭をなでている。


 この年で頭をなでられるのは正直恥ずかしい……


 そしてじっと見つめてくる綺麗な青色の目。

 なぜかこの人にはまったく視線に対して恐怖感が沸かなかった。

 いつもは初対面では目を合わせるのが怖く感じるのに。

 すると、もう一人少し低い声が聞こえてくる。

 女性の肩に手をかけながら、茶色の髪をオールバックにした口ひげを生やした男性が語りかけている。


 この女性の旦那さんなのだろうか?

 そう思わせるくらい、その二人は仲睦まじく会話している。

 内容はまったくわからなかったが。


 二人から視線をはずして周りを見渡してみると、ここが病院にしては変わっていることに気がついた。

 変わっているどころか普通の家じゃないのかなここ。

 少し洋風なつくりで、電化製品がまったく無い。

 壁についているのはランプだし、近くのテーブルには蝋燭が立っている。

 ここはかなりの田舎なのだろうか?

 私はもう助からない状態で、残りの人生をのどかな場所でってことでこんな外国の田舎に寝かされているのか……

 

 なわけないか。

 

 まったくどうなっているのだろうか。

 頭の中でぐるぐると答えが出ない問題を必死に考えていると、ふいにまぶたが重くなってくる。

 まだ全然眠くないはずなのに体はどんどん眠りに落ちていく。

 もしかしたら薬かなにかの効果かもしれない。

 私はそのまま深い眠りに落ちていった。



~~~



 私が目を覚ましてから数ヶ月の月日が流れた。

 私の体はなぜか赤ん坊になっていた。

 まさか、とは思うがこれはあれだ。

 

 転生。

 

 生まれ変わったってことだと思う。

 ということはやっぱりあの時私は死んだのだ。

 ショックは感じなかった。

 前の人生ではそこまで生に執着してなかったし、後悔もない。

 私はこれから新しく人生を歩み始めるのだ。

 前の人生は終わった。

 暗い過去は終わった。

 新しい私、デビューだ。


 ともかくまずは言葉を覚えるところからだった。

 周りの人とたちの会話を聞きながら行動を見て考えていく。

 最初はかなり時間がかかると思っていたが、意外にもすんなり理解できた。

 その生活の中にいたら自然と言葉を覚えるってどっかで聞いたことがある気がする。

 きっとそういうことなんだろう。



~~~



 あれからまた数ヶ月たち、ハイハイができるようになった。

 体は赤ん坊なので、意思はあるのにそれに体がついてこない感覚がもどかしい。

 とにかく情報を集めようといろいろハイハイで動き回った結果、ここは完全な別世界のようだった。

 家はそこそこ大きく使用人が二人、綺麗な母とそこそこイケメンでがっちり体系の父の四人で住んでいるらしい。

 そして技術レベルはまだ電化製品などができる前。

 明かりはランプや蝋燭、洗濯物は手洗い、食事は火をおこすところからというレベルだった。

 そしてもうひとつ。

 完全に別世界だと思わせるモノ。


 この世界では魔法が存在しているということだった。


 ある日私は母、アーレ・アウドというらしい、に抱かれたまま庭にいた。

 いつも昼食前の少しの間、父が庭で剣を振っているのだが、今回は私と母もいて、静かにそれを見ていた。

 父、ゴルドール・アウドが持つ剣は両手もちで、左腕に小さな盾がついているガントレットを付けていた。

 びゅんびゅんとなる音。

 剣は重そうなのに、重さを感じさせない速さで振り下ろす。

 私はおぉすごいな、と素直に感心し、赤ちゃんながらに拍手した。

 するとこちらをチラッと見たゴルドールが調子に乗っていろいろな技を披露し始めた。


 振り切ったと思ったらいつの間にか元の位置に戻っている居合いのような型や、片手で振り切った後空中で剣を持ち替えて連撃を繰り出すような技など。

 正直ミリタリーのほうが好きな私でもカッケー! と思わせるほどさまになっていた。

 そしてさらに調子に乗ったゴルドールが剣に手をかざして何か唱え始めた。


「赤の精霊よ、わが剣に宿りしその力を今こそ現界せよ! フレアソード!」


 えええなに中二病? こんなイケメンおじさんがまさかの中二なの? 母様これどうよ? と思っていると、剣が真っ赤に染まり、次の瞬間には刀身を包むように炎が上がり始めた。

 少し離れている私の方にも伝わるほどの熱量。

 そしてこちらに向けられるドヤ顔。


 ――え? まさかこれ魔法ってやつ?――


 これが私が最初にみた魔法であった。

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