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百合な彼女の転生後(仮)  作者: バルメ・メリーゲート
第二章 駆け出し冒険者編
26/39

秘密

 朝、今日は静かな朝を迎えられた。

 だが私はこれから一仕事しなければいけない

 昨日のアヤメの誤解をこれから解かなければならないのだ。

 ほんとはこのままでも面白い……いや、このままだと色々と問題になりそうなので、誤解を解くには早いほうがいいだろう。

 

 部屋を出て、隣のドアをノックして声をかける。


「アヤメ、起きてるか? ちょっと話したいことがあるんだけど」

「わ、わかったわ! 少ししたらいくからちょっとまってて!」


 なんかどたどたと歩き回る音が聞こえるが、起きたばかりなのだろうか。

 とりあえず私は自分の部屋にもどって待つことにした。


 ほどなくしてノックの音がする。

 返事をすると、アヤメがすごく挙動不審に部屋に入ってきた。 


「お、おはよう……で、話って?」

「それなんだけど、実は今まで秘密にしてたことがあってさ」

「ふーん、秘密ねー」


 話を聞きながら、いや聞いてるかどうかわからないくらい視線がベッドにいっている。

 顔は真っ赤だし、見ていて面白いが、ちゃんと話そう。

 と私が喋ろうとするのを手で遮って言う。


「わかってる。秘密ってさ、カレンとセリシアが……その、恋人同士って、ことでしょ?」

  

 すんごいもじもじしながら正解とぜんぜん違う答えを出しちゃってる。

 

「そりゃ恋人同士だったら一緒にお風呂も入る、あれ、普通入るの? まぁ入るかもしれないし夜も一緒に寝たり、ほかにも色々と……ある、わよね? 別に私は気にしないから、全然かまわないけど、ただね、ただ……」

「ただ?」

「その、あれよ……部屋が隣だから、よ、夜はその、静かに、してもらえると、うれしい、です…」


 夜は静かに?

 セリシアとの会話がうるさかったのだろうか。


「話し声が煩かった? ごめん、今度から気をつける」


 見てみればアヤメの目が赤い気がする。

 昨日眠れなかったのだろうか。

 もし会話がうるさくて眠れなかったのなら悪い事したな。


「い、いやそうじゃないの、そうじゃなくて」


 違うのか、じゃあなんだろう。

 昨日は特に何もしてなかったと思うけど。


「その、夜にね? 音が、その……ベッドの、音、が」


 恥ずかしさが限界を突破したのか顔をてで覆ってしまった。

 ベッドの音とな?

 それはあれか、ギシギシという擬音のあれなるか?

 別に私はセリシアと夜のピンクなプロレスや大人のお医者さんごっこなんかしてないが、してみたい願望はあるが。

 あ、もしかして。

 そういえば昨日寝るときにセリシアに抱きついたり尻尾を触ったりしていちゃいちゃ、セリシアはただ遊んでる認識だが、してたな。

 あーそれを勘違いしてもんもんとして寝れなくて目が赤い、のか?

 思春期真っ盛りの中学生か!

 だが、思春期真っ盛りな中学生はいじると楽しいのだ。

 どうせばらすんだしもうちょっとだけ遊んでみよう。


「ベッドの音? あぁ昨日セリシアとベッドの上でトレーニングしてたからその音かな」

「ト、トレーニング?」

「そうそう。こうやってうつ伏せに寝て腕で体を持ち上げるトレーニングなんだけど」


 あ、そうなの。となにかほっとしているアヤメ。

 ほっとしているところ悪いが、まだこっちのターンは終わってないぜ?


「どうしたの? 何か別の事をしてると思った?」

「え、いえもしかしてせ……なんでもないわ、忘れて」

「恥ずかしがることないよ、誰にも言わないから言ってみて? ギシギシとベッドでナニしてたと思ってたの?」

「それは、その……せ」

「せ?」


 アヤメが視線を下に向けたまま少し震えた声で答える。


「せ、せい……」

「せい? せい?」


 ちらと私に向けられた顔は羞恥に染まり、目にはうっすらと涙がにじんでいる。


「せい、こ」


 せいこ。

 ここまでくればどんな言葉を言おうとしているかわかる。

 あの目元キリッと黒髪ツインテ美少女の口から卑猥な言葉が出ようとしている。

 私はそれを今か今かと興奮して――


「カレン様」


 はっとして後ろを振り返る。

 女神セリシアがいつもの慈愛に満ちた目ではなく、まるで見ることすらおぞましいというゴミを見るような目で私を見て、こう短く告げた。


「気持ち悪い」



 ――気持ち悪い――

 


 ぎこちなく部屋に置いてある鏡を見ると、そこにはだらしなく鼻の下を伸ばして興奮に鼻息を荒くしている醜いキモオタが一匹映っていた。




「おちついた?」

「うん、ごめん取り乱して」

「カレン様も、誤って」

「申し訳ございませんでした」


 誠心誠意心を込めた日本流の謝罪の仕方。

 DOGEZAだ。

 見たこともない二人は意味をよくわかってない感じだったが、心から反省しているのは伝わったようで、普通に座ってもいいと言われた。


「で、カレン様はほかにも言うことがあるんでしょ?」


 はいあります。

 にしてもセリシアにこんなにリードされるのは初めてだ。

 雰囲気が少し戦っているときみたいで怖い。

 ふざけるのはやめよう。


「アヤメ実はね僕、いや、私は女なんだよ」


 アヤメの目が文字通り点になった。


 説明し終えた後、時間もちょうどよかったのでそのまま私の部屋で昼食を食べた。

 アヤメは何で女だと分からなかったのかと自分を責めたり、今まで私で遊んでたでしょ、と少しご機嫌斜めだった。

 気持ちは分かる。

 私も同じようにされたら怒る、される側ならね。

 なーんてね、アヤメさんナイフは人に向けて持つものではなくってよ。


 昼食を食べた後は、予定より遅くなってしまったがギルドで採取系の依頼を二件終わらせてその日は終わった。



~~~



 それから三日、採取系や時に店番等をこなしていった。

 私達三人に、評価が一定数を超えましたので、ランクをひとつ上げられますがどうしますか? とギルド員に言われたのが昨日。

 皆二つ返事で了承した。

 ランクがDに上がった。

 これで魔物の討伐依頼が受けれるようになった。

 魔物の討伐依頼は報酬も高いし、魔物の牙や毛皮なども報酬に含まれていたりするのでなかなか実入りのいいのだ。

 ただ、自分達の実力を見誤れば命を落とす。

 だからよくよく考えてから受けなければいけないと、アヤメが物知り顔で言った。

 だだ、それは昨日ギルド員のお姉さんから聞いたものだと私は知っていたので、そうだな、あのお姉さんから聞いたんだもんな、と付け加えるとぷりぷりと怒っていた。


 やはりアヤメは面白い。


 とにかくはじめての討伐依頼を受けてみようということになった。

 私はDランクの討伐依頼書をカウンターに持っていった。


 


「まったく、あんたたちは何者なのよ……」


 グルーブに程近い森の中。

 鹿のような魔物、デールの角を肩に掛けなおしながらアヤメがいう。

 今回の依頼はデールの津のを三匹分取って来るといいうもの。

 粉にして飲めば解熱剤になるとか、ほんとかなぁ。

 現在一人一匹分、対になっている二本を紐でまとめて担いでいる。


「何者って、アヤメと同じ駆け出し冒険者だよ」

「一撃で確実に魔物の首を切飛ばす駆け出し冒険者ってなんて冗談よ」

「私達は旅に出る前に色々教えてもらったから」


 ゴルドールはマリアと私達を連れて魔物を狩る方法も教えてくれた。

 冷静に、確実に、一撃で、と何度も言われた。

 魔物は足を切り飛ばすくらいでは殺せないし、中途半端に攻撃して逆に怒らせて殺されるやつも多かったらしい。

 なので、私達にはまず冷静に相手との力量を測って、倒せると判断したら確実に急所を狙い、一撃で決めるようにと教えられた。

 その教えどおり、私とセリシアが殺した死体は首が綺麗に切り落とされている。

 が、一つだけ足が折れていたり、体がくの字に曲がってたり、首が三分の一繋がっていたりと見るも無惨な死体が出来上がっていた。

 実行犯曰く、動いていなければ私も一撃でいけたとのこと。


「あなたたち、旅に出たのって成人してから?」

「そうだよ。成人してすぐに村を出た」

「ということは、成人する前の女の子に魔物の狩りかたを教えてたのね。けっこうなんていうか、すごい教育方針ね」


 そういわれてみればそうだな。

 まぁ私もセリシアも嫌いじゃなかったし、旅に出るには必要なことだとも思っていたからなんとも思わなかった。


「それより出発の準備はすんでるの?」

「いやまだだ。帰ってから色々買おうと思ってる」

「そう、じゃあ私もついていこうかな。セリシアも?」

「うん、私もいく」


 帰ったら三人でお買い物だな。

 

 討伐依頼を受けれるようになった夜、私たちは依頼を終わらしたら次の街に行こうと決めた。

 次の街は王都ハイランド。

 だが目的地はその先、研究都市ストゥーディアだ。

 この国最大の学校、国権立シューレ魔法学校がある街で、正確にはここにアヤメが用があるのだ。

 アヤメはそこに入学して魔法を学びたいという。

 私とセリシアは特にどこに行くという目的地はないので、とりあえずアヤメについていくことにした。

 魔法学校となっているが、魔法だけじゃなくて剣を極める学部もあるらしい。

 それを聞いてセリシアが興味を持ったみたいで色々質問していた。

 セリシアが自分から興味をもって質問したりするのは珍しい。

 

 もしかして入りたいのかな。

 もし入るなら私も入らないとな。

 もちろんセリシア親衛隊として悪い虫がつかないようにだ。

 そういえば制服はあるのだろうか。

 

 セリシアのセーラー服姿……イイ。

 いやもしかしたらブレザーかもしれない、いやいやもしかしたらもっとかわいい制服があるかも。 


「カレン様?」

「あ、はい」


 想像していたら置いていかれるところだった。

 まだ森を抜けたわけじゃないから気をつけないとな。

 

 気を引き締めなおして街へ向かって森の中を行く。

 

「アヤメ、少しの間でも一緒に持とうか?」

「大丈夫よ、これくらいどうってことない、わ」


 にしては苦しそうだが。

 

 前世にいた鹿の角と形は同じだが、こっちの角は大きくかなり太かった。

 重さも結構あり、身体強化が下手なアヤメにはきつそうだったが、こういうときアヤメは頑なに手助けを拒むのだ。


 見た目道理気が強いというか頑固というか。

 まぁまだ日が高いし、街に近いのでそこまで強い魔物は出ないと思うからいいけどね。

 と考えていると、ふぎぁ、という奇声を発して角につぶされてしまっていた。

 私は笑いをこらえつつ、起きるのを手助けしているセリシア達に休憩しようかと提案した。



「あぁもう、なんであんたたちそんなに体力あるのよ……」

「まぁ鍛えてますからね」

「でもあんたに比べてセリシアは華奢じゃない。あくまでもあんたと比べてだけど」


 なんだか性別をばらしてからアヤメさん私にきつくありません?


「セリシアはインナーマッスルってやつじゃないかな。筋肉はついてるんだけど、私のように表面上はわかりにくいんだよ」

「いんなー……?まぁ要するにセリシアもそれなりにあるのね。私も鍛えようかしら」


 ぐっと力こぶを作るが全然こぶになってない。

 というか腕ほそいなぁ、ちゃんと食べてるのか?

 

「まずは食事をしっかり取ってからじゃないと、私のようにはなれないよ?」


 ほらほらこれがほんとの力ぶだ!!

 セリシアもアヤメも私の腕に釘付けになっている。

 ふふふ、どうだどうだ。


「すごいけど、女としてどうなの」

「うっ……!!」

 

 アヤメ、言ってはならないことを……

 

「カレン様が筋肉だるまになっても、私は嫌いにならないよ」

「セリシア……」

 

 あぁやはりセリシアは天使だった……


「セリシアアァァ!!」

「しっ、カレン様黙って」


 えぇ、セリシアさん厳しい……

 

「どうしたの?何か聞こえた?」

「うん、変な音がする」


 うぅ、変な音のせいで私のセリシア分補給が邪魔されたのか。

 ってなんかセリシアの目が戦闘状態だ。

 これはふざけてる場合じゃないな。


「何の音かわかる?」

「わからないけど、激しい息遣いも聞こえる」


 激しい息遣い、魔物かな。


「何にしろ静かに離れるか、音の発生源を確かめてみるかね。どうするの?」

「うーん、セリシアそれが人かどうかわかる?」

「わからない。人じゃない気もするけど……」


 セリシアの耳が音を拾おうとせわしなく動いているが、そこまではっきりとわからないみたいだ。

 静かに離れるのが一番リスクが少ないけど、もし人だとして、激しい息遣いって事は何か逃げてるとか困っているのではないか?

 よし、一応確かめにいう。

 遠くから確認して魔物だったらそのまま離れる。

 人だったら助けるでいこう。

 

 二人にそれを伝えると、二人ともわかったとうなずいてくれた。

 角は一旦ここに置いていくことにした。


 そういえば昔もこんなことがあったような気がするが……

 いや思い出すのは後にしよう、とりあえず今は静かに動くことに集中しよう。


 私たちはできるだけ静かに、音がするという方へ近づいていった。

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