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百合な彼女の転生後(仮)  作者: バルメ・メリーゲート
第二章 駆け出し冒険者編
25/39

依頼と誤解と

 私達は依頼主の店、武具屋についた。

 とりあえず店主にギルドから来たと伝えると、こっちだと横にある倉庫へと案内された。

 店主の話によると、倉庫を改装してそちらも店にするから、中の荷物を新しい倉庫に移してほしいということだ。


「わかりました。で、新しい倉庫はどこですか?」

「あぁそれなんだが……」




「これが達成書だ。いやぁ助かったよ、店が忙しくてなかなか手がつけられなかったんだ」

「お役に立てて何よりです。では失礼します」


 にこりと笑顔で礼をしてギルドへ帰る。

 依頼主への対応も評価に入るらしいからスマイルスマイル。

 予想以上に荷物が多く、すでにあたりは暗くなってきている。

 今日はこれで終わりかな。

 私は少し後ろでぜいぜいと苦しそうに息をしている人に声をかけた。


「大丈夫? よければ肩を貸すよ」

「い、いや、大丈……大丈夫で、す」


 アヤメは苦しそうにしながらも私から手を借りるのを断った。

 セリシアが気を使って水の入った水筒を渡している。


 今回の依頼主は武具屋。

 運ぶ荷物はどれも重量があるうえに、その量もかなりあった。

 私とセリシアは身体強化を適度に使ったり、もともと体を鍛えているのもありそこまで苦にならなかったが、アヤメにとっては地獄だった。

 身体強化が苦手なのかたまに使っても持続させれてなかったり、そもそも力仕事が苦手なようだった。

 途中休憩がてら話を聞いてみると、彼女は完全な魔術師タイプで青属性をメインに使っての回復と支援が得意だという。

 言われてみれば確かに魔術師っぽい薄い鼠色の地味なローブを着ている。

 動いてるときに見えたズボンも同じような色をしていた。

 いや、地味なのは個人的な趣味なのかもしれないが。


「あ、これはただ、これしか買えなかったからで」


 服装について聞いたとき何かを察したのか、あたふたと説明するアヤメをにやにやと見ているとセリシアから変な顔してると突っ込まれた。

 ということでアヤメは力仕事ができない完全なヒーラータイプなのだった。


「これ、達成書」


 アヤメを入ってすぐの椅子に座らせている間にセリシアに達成書を渡してもらった。

 

「落ち着いた?」

「ええ、ごめんなさい……今回の報酬はいらないわ。二人で分けてください」

「気にしてないよ。アヤメはアヤメなりに頑張ってくれてたし、今回は依頼の内容が君に合わなかっただけで」

「でもあまりお役に立てませんでしたし」


 うーん頑固だな。

 正直まだお金に困ってないからほんとにいいんだけどな。

 旅に出るときゴルドールが結構持たせてくれたし。

 これはこれで危ない気もするが。 


「アヤメは頑張ってたよ。そんなに気にすることない」

「ほらセリシアもそういってるし、ね?」


 そういってセリシアの貰ってきた報酬の半分をアヤメの手に握らせる。


「あ、え、ほんとにいいですから」


 慌てて返そうとする手をやんわりと押さえる。

 どうしたら納得するか。

 あー、じゃあこうしようか。


「もしよかったら少しの間一緒に依頼を手伝ってもらえないかな。これはそれの報酬ってことで。こうしてパーティーも組んだことだし、今は討伐依頼は受けられないけど回復できる人がいれば心強いし、セリシアもそれでいい?」

「うん。アヤメいい人だし私もうれしい」

「セリシアもこういってくれてるし、どうかな?」

「いつか剣士の人とか前衛をできる方と組まないとと思っていたので、私も助かりますけど……ほ、ほんとにいいんですか?」


 そこでダメ押しの、


「うん、僕は君がいいんだ」

 

 なんてきざな言葉と手をとってからのイケメンスマイル。

 おぉ湯気が出そうなほど顔が真っ赤になってる。


「で、では、よろしく、おねがいします」


 テーレッテテー。

 ヒーラーのアヤメがパーティーに入った!!

 なんてね。

 後は言葉の固さかな。 


「あとそんなかしこまった言葉じゃなくてもいいよ。年も同じでしょ?名前もカレンって呼び捨てでいいよ」

「わ、わかりました」

「固い固い」

「わ、わかった……カ、カレ、ン……」


 最後のンはあんまり聞こえなかったけどこれでよし。

 同じ年なのに敬語ってつかれるしね。

 まぁ実際私の年齢って前世と合わせて……あれ、合計ですでに三十路じゃ、いややめよう今の私はぴっちぴちの十代だ。

 年齢は転生してからリセットされた、私は十代、いいね? 


「よろしくね、アヤメ」

「は……うん、よろしくねセリシア」


 いい感じに打ち解けたところでパーティー結成祝いとして皆で夕食でも食べようかな。

 ちょうど時間的にもちょうどいいし。

 アヤメもOKとのことなのでギルドで三人で夕食を食べた。

 代金は初めてのパーティーでの夕食なので皆で出そうということになり割り勘になった。

 食べ終わった後、アヤメの私に対しての反応はだいぶ普通になった。

 あんまりにも恥ずかしがってたら話すのも大変だしね、慣れてくれてよかった。 


「じゃあまた明日、ギルドに集合で」

「わかったわ。また明日もよろしくね」


 アヤメも宿を取っているとのことで、ギルド前で別れる。

 なんかこうやって別れると学校の帰りを思い出すなぁ。


 校門を出てから、手を振ってまた明日。

 懐かしい思い出と、それに付随して嫌なものも思い出す。

 あの時はあんなことになると微塵も思っていなかった。

 また明日も変わらず続いていくものだと思っていた。

 あーだめだ、なんか気分が沈んでくる……


「カレン様?」

 

 セリシアが顔を覗き込んでくる。

 また心配させちゃったかな……


「ん、大丈夫だよ。それより今日は疲れたね、早く帰ってお風呂に入ろう」


 うん、と返事を返される。

 前世は前世だ、今はこんなに楽しいんだ。

 私は昔の嫌なものに蓋をするように、帰ってからのセリシアとのお風呂を思いえがいた。


「アヤメも一緒に入る?」


 そうそうアヤメも……

 え、セリシア今なんて?


「アヤメ、後ろにいるよ?」


 後ろを振り向くと、少し離れたところに気まずそうにアヤメが立っていた。


「えーと、なんかまた明日って言ったのに、帰る方向が同じだったから、その、なんとなく……」


 なんとなく気まずくて離れて歩いてたのか。

 なんとなく気持ちわかるから何とも言えない……とりあえず離れて歩くのもなんだから、

 

「同じ方向なら言ってくれればいいのに。分かれるまで一緒に行こう」


 その後三人で、明日は薬草採取など採取系がやりたいねーなど話しながら眠れる戦乙女まで帰った。

 三人で眠れる戦乙女まで。

 そう、なんと 

 

「え、まさか二人ともここ?」


 まさかの同じ宿だった。


「おかえりなさい、あら三人とも知り合いだったのかい?」

「いやそれが偶然……」


 エルノラさんに簡単に説明してそれぞれの部屋に戻った。


「え、その部屋私の隣……」


 隣の部屋……ってことは、


「まさか朝急いで出て行ってたのって」

「朝怒ってた人って」


 そこでお互い朝のことを思い出して、お互いに謝ったのだった。



 

 部屋に戻ってから少ししてお風呂の準備ができたとのことで、セリシアと一緒に部屋を出た。

 今日は汗かいたからなぁ。

 がちゃっとドアを開けると、すぐ隣からもドアを開ける音がした。


「あ、もしかしてお風呂?」

「うん、アヤメも?」

「そうだけど、先に入るならどうぞ。私は後でいいよ」


 この宿は最上階以外はお風呂場がないので、準備してもらったら他の入りたい人と譲り合って入るというシステムだった。

 なので、湯を沸かすときは他の部屋の人にも伝えているのだ。

 この世界には当たり前だが湯沸かし器などない。

 人力か魔法かで火をおこして湯を作らなければならない。

 だからもったいないし、沸かしなおすのはめんどくさいのでこうなっている。

 

「そう? じゃあ先にはいらしてもらうね」


 お先に失礼とセリシアと一緒にお風呂へ


「え、待って、セリシアも? 確かここってひとつしかお風呂場ないわよね」

「うん、いつも一緒に入ってるから」

「い、いつも? あれ、でもカレンって男でしょ?」


 あ、あー……

 そうだった、そういうことになってたんだった。

 アヤメがなにやら混乱している、なんて誤魔化そうか。

 え? セリシアと分かれて入れって? それが一番いいのかもしれないが、その案は私の脳内会議で審議中AAを貼るまでもなく即却下されました。


「そういえば部屋も一緒よね……ま、まさか」


 まさかって? あっこらこらこらー。

 言うが早いかアヤメはすぐとなりの部屋を覗き込む。

 すぐ隣、私とセリシアの部屋だ。


「ベッドが……ひとつ……」


 そう言って私たちの顔を見る。


「うん、カレン様といつも一緒に寝てるから」


 とセリシア。

 うんセリシアちょっとお口閉じてて。

 

「いつも一緒に、寝る……?」


 え、てことは、え? となにやら考えながらみるみるうちに顔が真っ赤になっていくアヤメ。

 あらら、これは完全に選択肢ミスっちゃいましたね……


「あーその、アヤメ? 誤解しないでほしいんだけど」

「いやいいの、わかったわ、ごめんなさい邪魔しちゃって、私後から入るから先にどうぞ、ええ、ごめんね邪魔して、ええ」


 アヤメは真っ赤な顔でなにやら早口で言いながら部屋に戻っていった。

 これは完全に誤解してますね……きっと今アヤメの頭の中では私とセリシアがピーしてピー入れてピーしてるとこが再生されているのだろう。

 これはこれで面白いけどちゃんと話ししないと後々めんどくさいことになりそうだ。


「どうしたのかなアヤメ」

 

 きょとんとしてるセリシア。

 いや、君の言った言葉のせいでもあるけども。

 ほんとのことを面白がって伝えなかった私のせいでもあるのだけれど。


「アヤメ、あの子疲れてるのよ……まぁいいからお風呂に行こう」

 

 お風呂に入り終えて部屋に戻る途中、アヤメの部屋をノックしてドア越しに上がったことを伝えたが、返ってきたのは何かから転がり落ちた音と、裏返った返事だった。

 これは明日伝えたほうがいいな、とセリシアとベッドに入る私なのだった。

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