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百合な彼女の転生後(仮)  作者: バルメ・メリーゲート
第一章 幼年期編
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毬栗再び

 早朝。

 武器が完成したと報告に来てくれたハルトと共に工房に向かった。


「最初はどうなるかと思ったが、案外すんなりいったぜ。見たら絶対に気に入るぜ」


 そう言ってすごくドスのきいた笑顔で笑いかけてくるハルト。これ笑顔でいいんだよね?

 それにしても結構無茶言ったからどうなるかとも思ったけどなんとか上手くいったらしい。期待させてもらおうかな。

 

 ハルトの工房について客間、といっていいのか分からないくらい散らかっているが、に待たされる。

 少ししてハルトが二つの細長い布包みを持ってきた。


「こっちが猫のお嬢ちゃんのだ」

 

 セリシアが差し出された包みをおっかなびっくり受け取る。

 ハルトが目線でさぁ開けて開けてとせかしているように見える。なんか睨んでる風にも見えるけど私の解釈であってるよね?

 セリシアが気をつけながら布を解いていくと、中から細身だがしっかりした長剣が現れた。


「これが、私の…」

「あぁそうだ。これはバスターソード。長さを生かして突くもよし斬るもよし、少し重いかもしれないが猫のお嬢ちゃんなら扱えるだろう。質はそこらの奴らの物よりいいと保障するぜ」


 細く長い刀身が、窓から入ってくる朝日に照らされてきらきらと光っている。


「きれい… ありがとうハルト」

「いいってことよ。それとこっちがカレンお嬢ちゃんのだ」


 セリシアのバスタードソードより少し短い包みを渡される。

 布をゆっくりと解いていく。


「おぉ、すごい…」


 きらきらと光る片刃の刀身。

 峰にはきれいに真直ぐな銃身がついている。

 柄は銃のグリップの形だがそこから少し延長され、両手でも一応握れるようになっている。

 私の要望道理の形、ガンブレードだった。

 ハルトのほうを見ると、どうだと言わんばかりのどや顔、好意的に見ればどや顔、普通に見ればただすごんでいる様な顔をしていた。

 

「すごいですハルトさん。私の想像道理のできです」

「だろう? だがこれで終わりじゃないぜ、ちゃんと試してみねぇとな」


 というハルトの一言で私達は街からでて少し離れた草原に向かった。


「さて、お嬢ちゃん達獲物を振ってみな」


 セリシアが鞘からバスタードソードを抜き、縦に横にとびゅんびゅん風を切りながら剣を振る。そしてしっ、と全速の突きを放って止めた。


「これ、すごく振りやすいけど、少大きい」

「あぁ、それはお前さんたちが成長しても使えるように大きめに作ったんだ。これからどんどん手になじんでいくと思うぜ」


 なるほどね、確かに私のガンブレードも少し大きい気がする。


「次はカレンお嬢ちゃんかな」


 私はこくりとうなずき、銃身も入れるために少し大きめの鞘からガンブレードを抜いた。

 銃身がついているから重く感じる。

 私もセリシアと同じように、縦に横に剣を振る。

 いい感じだ。柄の形が特殊だからどうかと思ったけど、結構しっくりくる。重量のバランスも考えられているのか、持っていても疲れにくい。

 

「いい感じです。すごく振りやすい」

「そりゃあよかった。じゃあ次は例の機構を試してみてくれ」


 私は銃身の後ろについているレバーを引く。するとそこに空洞ができ、銃身内に玉を入れることができるようになる。私の場合、本物の銃と違って魔法で玉を作れるから穴も何もなくてもいいのだが、複雑な魔法を見えない場所で発動させたりするのは結構魔力も時間も消費するのだ。なので、銃身をあけ、その中の見える場所で玉を生成しようと思ったのだ。

 私は魔法を使って玉を生成してがちゃりとレバーを戻す。そして少しだけレバーを戻し、玉との隙間に火炎玉を作る。火炎玉のようなあたれば爆発するなど簡単なものなら見えない場所でも生成しやすい。玉が込められる場所、レバーの先端辺りになるであろう場所には外から分かるようにラインをつけているので、そのラインの中に火炎玉を作ればいいようになっている。

 火炎玉に魔力を込めて、爆発させる。

 ばんっ、と大きな音を立てて内部で爆発し、銃口から散弾が飛び出す。

 標的に持ってきた胸部だけの金属製の鎧が激しい音を立てて吹っ飛んでいく。

 

「ほぉこれはなかなかの威力だな」

 

 鎧は右側がほとんどばらばらに吹き飛んでいた。

 ハルトが今ので剣に異常が出なかったか確かめる。

 

「ふむ、大丈夫そうだな。一応あと二、三回さっきのやってみてくれるか」


 鎧がずたぼろの鉄くずになってしまった。

 剣には異常が無いようで、両方ともこれで完成だ、と笑っていた。なんかすごく怖い顔になっただけのようにも見えたがきっと笑っていた。


 ハルトにお礼を言い報酬とお酒、マリアが買ってきてくれていた、を渡してゴルドールは熱い握手をかわし、私達は宿に戻った。

 

「さて、宿に帰ったら帰り支度するぞ。明日の朝には出発だ」


 明日の朝か。まぁもう目的は果たしたからな。

 あ、ライトとの決闘はどうしようかな。また街に来たときにっていってもいつになるかわからないしな。

 とりあえず後でギルドに行ってみよう。ひげのおっさん達にもお別れ言いたいし。

 宿に戻って荷物の整理をした後、昼食を食べてから私とセリシアはギルドに向かうことにした。

 

 昼食を食べ終えそろそろ出ようかというところで部屋にノックの音が響いた。


「お食事中失礼。カーレントお嬢さんにお手紙ですよ」


 手紙? 誰からだろうか。

 もしかしたらアーレ達からかな?

 ドアを開けてエルノラさんから手紙を受け取る。

 差出人は……まさかのライトからだった。


「えーとなになに……再戦を申し込みたい、ギルドで待つ、か」


 これは果たし状ってことかね。

 って時間も何も書いてないじゃないかい。

 まぁちょうど行こうとしてたしいいか。


「おっ、ライトの坊やからか。どうするんだ?」

「もちろん受けますよ。どっちみちギルドには行こうと思ってましたからちょうどいいです」

「お父さんも行ってみていいか?」


 その後マリアも行きたいと言うので結局皆で行くことになった。

 そういえば、マリアから結局盾の相手への対処の仕方とか聞けなかったな。

 ずっとすれ違いのように外出してて時間が合わなかったからだ。

 まぁ何とかなるだろう。


 ギルドに着いてから早速カウターさんに手続きをしてもらう。

 ゴルドールとマリアは周りにいた人達と話をしている。

 

「さ、ライトとの決闘でしょ? がんばっておいで!」


 カウターさんも知ってたのか。

 というか後ろでゴルドールとマリアが私とセリシアがいかに優秀かを自慢している。

 

「最近は私のフェイントも効かないし切り返しも速くて……」

「俺は思ったね、これは天才だって。なんたってあの年でもう独自の魔法を……」


 うおおお恥ずかしい!!

 私はその場から逃げるように修練場に入った。


「よぉ、遅かったな」

「いやお前そんなに待ってないだろう」

「……言ってみたかっただけだ。速く準備しろ」


 エルノラさんが手紙を持ってきたとき男の子がさっき渡してったって言ってたし。

 

「でもどこの宿に泊まってるか言ったっけ」

「あぁあれはギルドマスターが教えてくれたんだ」


 おいおい、ここのギルマスは個人情報の漏洩の怖さとか知らんのか。

 そもそも誰にも言ってないし書いてないのになんで分かったんだ。

 ストーキングされてたとか?

 何それ怖い、閉じまりしとこ……

 今度から夜道には気をつけようと考えながら修練場にある片刃の木剣を取った。

 ライトも前と同じ盾と片手剣だ。


「ハックルさん、お願いします」

「よしきた!! お集まりくださった紳士淑女の皆々様!! 今回の決闘、私ハックルが取り仕切っていきたいと思います!!」


 周りからいいぞーと野次が飛ぶ。

 てか前はこんなことしなかっただろう。

 しかも野次の中にゴルドール達の声が聞こえた気がする……


「両者、準備はよいか!?」


 私とライトがお互い獲物を構えて返答する。


「では……はじめっ!!」


 うーむ、今回はどうするか。

 ライトの構えは前と同じに見える。

 とりあえず同じように一手出してみるか。

 ふっ、と上段から切りかかる。

 がんっと盾に当たりするりとそのまま外に受け流される。

 私は直ぐに体制を立て直すのに後ろに下がる。が、


「う、おっ」


 私が後ろに下がるのと同時に盾が追ってくる。

 しかも視界を塞ぐように突っ込んでくる。

 どうにか仕切りなおすのに距離がとりたいのに!

 受け流された剣を無理やり外から切り返そうとするが、動き初めを盾で押さえつけられた。

 やばい!


「ぐっ!」


 私はとっさにライトの腹に蹴りを入れてどうにか距離をとることに成功した。

 ライトの右手の片手剣がひゅうと空を切る。

 あのまま密着していたら負けてたな……

 ライトが盾を構えなおす。

 盾の上からライトのぎらぎらした視線がこちらに突き刺さる。

 ライト、前のように防御に徹してのカウンター狙いじゃなく、盾で前に出ながら攻撃してくるスタイルに変えたのか。 

 さてどうしようかと考えていると、盾を前に出しながらライトが突っ込んできた。


「考える時間もくれない、かっ!」


 両手に力を込めてさらに無属性で身体強化をし、思いっきり突っ込んでくる盾に叩きつける。

 さっきより大きな音を立てて盾に剣がぶつかる。


「ふっ、がぁ!」


 正直これで盾が壊れないかと期待したが、これも外側に受け流される。

 しかもさっきより体重を掛けているため、私の体制は前のめりになるように傾いた。


「もらった!」


 私はそのまま地面に頭から突っ込むように、ごろん、と受身を取りながら転がった。

 またもライトの剣は空ぶった。

 だが、すぐさま私の方へ振り返って突っ込んでくる。

 剣を振り払いながら後ろへ下がる。

 逃がしたくないライトは距離を詰めようと突っ込んでくる。

 防戦一方、逃げるので精一杯の状態だ。

 

「逃げてばっかりじゃ勝てねぇ、ぜっ!!」

「くっそ!」

 

 振り払おうとした剣をまた止められる。

 くそったれ!

 心の中でFu○k!! と叫びながらバックステップ、せずに、やけくそ気味に盾に思いっきりタックルする。

 

「うっ!」

 

 身体強化したタックルは、受け流されずにライトを弾き飛ばした。

 さすがにこれだけ大きな物は受け流せないだろう。

 とりあえず、何とか距離を取れた。

 落ち着け、深呼吸、深呼吸……

 前みたいにと考えたが、同じようなフェイントが通じる気がしない。

 フェイントごと潰される気がする。

 どうする、どうする!

 さっきまで突っ込んできたライトが、今回はじりじりと距離を詰めてくる。

 さっきのタックルを警戒しているのか?

 頭の中で速く打開策を考えないと! 汗をたらしながら考えるが、すべてあの盾で潰される気がしてくる。

 あの小さいはずの木の丸い盾、が大きく重く感じてくる。


――今回は、ちょっとやばいかも――


 ”負けるかもしれない”という言葉が、私の脳裏を掠めた。

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