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百合な彼女の転生後(仮)  作者: バルメ・メリーゲート
第一章 幼年期編
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期待

 目が覚めた。

 頭がずきずきする……

 私は眉間を左手でぐっと押さえる。

 あれ?腕が動く。

 

 左腕も右腕も包帯が巻かれていない。

 傷跡はうっすら見えるか見えないかくらいで目立たないまで回復している。

 寝てる間にアーレが回復してくれたのだろう。

 感謝感謝だ。


「うぅん……」


 隣で寝ていたセリシアが寝返りをうつ。

 起こさないようにベッドから出る。

 何か食べたい、ものすごくおなかが減ってる。

 ふらふらした足取りで私は食堂に向かった。

 

 食堂にはアーレとマリアがいた。


「あらカレンおはよう。もういいの?」

「おはようございますお母様。腕の怪我を治してくれてありがとうございます。まだ頭が少し痛いですが、それよりもおなかが減って、何か食べないと寝れそうにないです」


 いいのよ、なにか食べれるなら大丈夫そうね。と言って笑うアーレ。


「カレン様、ちょうど私が作ったサンドイッチがありますよ。ささ、どうぞぉ」


 マリアの手作りか。

 マリアは繊細な料理などは作れないが、サンドイッチやワイルドな肉料理などはかなり上手い。

 冒険者だったときは自分で調理していたのだろう。 

 ただ、今は肉料理じゃなくてよかった。

 さすがにおなかが減っていても朝からは重過ぎる……


「ありがとうマリア。いただきます」

 

 私はマリアが作ったそれを口に運ぶ。

 美味しい。

 このしゃきしゃきとしたレタスのような野菜の食感! 

 ほかを邪魔しない程度に、しかしちゃんとかんじるハムの味!

 そしてチーズとほんのりと感じるバターの……

 やめよう、味が嘘くさくなりそうだ。

 マリアの料理は普通に美味しかった。


「ごちそうさまです」

 

 胃にものを入れたからかまた眠たくなってきた。

 私は食べてすぐに寝る事を伝え、食堂を後にした。


 自室に戻るとベッドではまだセリシアが寝ていた。

 私はセリシアの横にこっそりともぐりこみそのまま目を閉じた。



~~~



 あれから二日たった。

 やっと私の魔力と体調が戻った。

 まさか二日もかかるとは思わなかったが、午前中に模擬戦でほぼ使い切った後にあれほど使ったのだ。

 アーレから今回は本当に死んでもおかしくなかったと言われたくらいだしね、そりゃ回復に時間かかるか。


 私は伸びをして体をほぐす。

 セリシアはベッドにいない。もうおきているようだ。

 二日間食べて寝てを繰り返してたので、体がなまっている感じがする。

 ちょっと庭で木剣でも振るか。

 

 まぁその前に朝ごはんだ。

 私は首を回したり腕を回したりしながら食堂へ向かった。


 食堂に下りるとアーレとマリアとセリシアがいた。

 三人で仲良く話している。

 マリアは暇なのだろうか。

 

 私は挨拶をし、マリアに何か食べ物はないか聞く。


「用意してきますのでちょっと待っててくださいね~」

 

 そう言ってぱたぱたと調理場に行くマリア。


「カレン体調はどう?だいぶおちついた?」

「えぇお母様。私はもう大丈夫です。ただ二日間寝てばかりでしたので、後で木剣でも振ろうかと思っています」

「私も、私もやる」


 セリシアもやるようだ。

 

「そういえばカレン、セリシアから見た事もない魔法を使ったって聞いたけど、魔物をミンチにしちゃうってどんな魔法を使ったの?」


 あれか。

 この世界には無い物を再現したからそりゃ見た事もないよね。


 ただ、教えてしまってもいいのだろうか。

 前世でのゲームや漫画では未開惑星や過去に行ったとき、現代的な武器を教えてはいけないってのはよくあった設定だ。

 それが元で国同士が争ったり、無駄な血が流れたりってのもよくある設定だった。

 ただ今後もあのような魔物に襲われないとは限らない。

 近年魔物が増えているとゴルドールも言っていたし、この世界には盗賊や強盗など危険な存在は数多くある。

 それに対抗するための力をつけるのに、前世での知識、戦闘で言えばミリタリー知識、ゲームで聞きかじったものばかりだが、そういうものも試してみようと思っていた。

 そうすればいずれはばれてしまうだろう。

 

 それにアーレが使えばもっと効率のいいやり方がわかるかもしれない。

 そしてアーレなら悪用したり回りに言いふらしたりして広める事もないだろう。 

 そうだな。

 大丈夫だろう。


「わかりました。ただかなり危険なものなので、あまり広めたり無闇に使わないようにお願いします」

「ええわかったわ!」


 見た事もない魔法を見るのが楽しみなのか、元気に返事をするアーレ。

 本当にわかっているのだろうか……

 

 わかってるよね?


 私達は朝食を食べて裏庭に出た。

 とりあえず私から少し離れてもらう。

 お母様鼻息が荒いです、落ち着いて。


「さすがにあのサイズでは魔力の消費が激しいので小さめで発動しますね」


 私は意識を集中させる。

 そしてあの時のように一つずつ段階を踏んで作っていく。

 サイズは前よりかなり小さく、弾のサイズは親指ほどのサイズにした。

 獣人である石の筒もできた。

 

 やっぱりかなりの魔力を消費するなぁ。

 そうバンバン撃てないな。

 また吐いて倒れてしまう。


 さて作ったこれをどこに向けて撃とうか。

 私は標的を探して見回すと


「カレン様!! これ! これどうですか!?」


 マリアが何かを引きずって来た。

 なんだあれ……


 マリアが持ってきたのはなんというか、人型、に近い何かを木で作ったものだった。

 よく射撃練習などで見る板じゃなく、丸太を釘でつなぎ合わせたのか、なにやらバランスがおかしな物だった。

 剣の練習用なのか、所々削り取られたような傷がついている。

 マリアのお手製なのだろうか。

 けっこう不器用なんだな……


 私はマリアが用意してくれたそれを少し離れた場所に置いてもらった。

 

 狙いよし。 

 さぁ撃つぞ! というところでふと思い出した。

 そういえば私の左腕は魔法を撃った反動でぐちゃぐちゃになったんだよね?

 たしかあの時は銃身に蓋をせずに撃ったから、中で爆発させた火の玉の反動をもろに左腕が受けたのだろう。

 

 危なかった。

 また腕にモザイクをかけないといけないような状態にするところだった。

 

 私はさっきの銃身の後ろに蓋をするように黒魔法でふさいだ。

 

 気を取り直して狙いを定める。

 そして筒の中の弾の後ろに赤魔法で小さな火の玉を作る。

 それに魔力を注いで小さいまま威力を上げていく。

 魔力がぐんぐん吸われていく感覚。

 見えない銃身の中を想像して、さらに火の玉を大きくせずに圧縮していくイメージ。


 そろそろいいかな。

 私は火の玉への魔力を止めて、中の弾にぶち当てた。

 ばんっという音と閃光が走り、ほぼ同時に木製の人型に着弾する。

 

 人型の腕が木っ端微塵になっていた。

 

 すこし狙いが甘かったか。

 それに銃身にした筒がひび割れている。

 中で爆発させる威力も考えないといけないな。

 できれば銃身を鉄でつくりたいんだけどなぁ。

 

「それは赤魔法の爆発で、中の石の粒を飛ばしたのね?」


 アーレが興奮気味に言う。


「はい。ただ今回のは前に作ったときよりかなり小さめなので、威力は低いですが」

「確かに赤魔法でもこれくらいは爆発で吹き飛ばせますもんね」

「そうですね。ただあの時は腕を噛まれていた状態だったので、赤魔法では爆発に巻き込まれると思いこれを作りました」

 

 マリアにそう答えると、なるほど確かに近距離ではこっちのほうがいいかもしれませんね。と納得していた。

 アーレはともかくとしてもっと驚くかと思ってたんだけどなぁ。

 意外と反応が薄い気がする。


「にしてもよく思いついたわね」

「まぁの時は必死だったので……」

 

 これは前世で知っていたショットガンというものでぇなんて言えない。

 アーレは黒魔法で粒を作って、となにやらぶつぶつ言っている。

 

 そうだ、とその時私は閃いた。

 黒魔法は土を操作するって事は鉄も作れないだろうか。

 私はアーレに黒魔法で鉄を作れないか聞いてみた。


「鉄ねぇ、作れるって人はいるらしいけれど私は見た事無いわねぇ」

 

 かなり高度な魔法なのだろうか。

 自分で作ってのはあきらめたほうがいいな。


「魔法で作らなくてもゴルドーに言えば知り合いの鍛冶屋さんに頼んでもらえると思うわ」


 ふむふむ。

 今日ゴルドールが帰ってきたら聞いてみよう。


 その後私とセリシアは暗くなるまで木剣を振って汗を流した。



~~~



 夜ゴルドールが帰ってきてから鉄の筒を作るのを頼んでもらえないか聞いてみた。

 最初そんなもの何に使うのかと怪訝な顔をしていたが、アーレが言葉を足してくれたので納得してくれた。

 

「そうか、わかった。ただ決して無闇に力を使うんじゃないぞ?力を持った者はそれ相応の行動を……」


 ゴルドールの力を持つものの積とはなどの教えを笑顔で聞き流した。

 一応わかっているつもりですお父様。


「わかりましたお父様」

「わかったのならいい。さて、では明日村長に言って休みを貰ってこないと」


 ん? 何で休みを貰わないといけないんだ?

 私がそれを聞くと


「この村には鍛冶屋が無いからな。知り合いの鍛冶屋は隣のグルーブにいるんだ」


 グルーブ……

 たしか近くにある街の名前だったか。

 でもわざわざ行かないといけないのだろうか。


「手紙で頼めばいいのではないですか?」

「手紙だとどういう物を作りたいかわかりにくいだろう?それに久しぶりに俺が会いたいのさ」


 なるほど。

 たしかにいきなり鉄の筒を作れといってもわからないだろう。

 知り合いの鍛冶屋と聞いていたし、積もる話もあるのかもしれない。 

 ん? でも説明しないといけないという事は


「それは私も一緒に行くという事ですか?」

「そういうことだな」

 

 そうか、私も行くのか。

 初めて他の街に行くな。

 グルーブ……

 どんな街なのだろうか。

 やっぱり漫画やゲームで見たような西洋風なファンタジーチックなお城とかあるのだろうか。


「カレン様が行くなら私もいく!」


 セリシアがあせったように言う。


「大丈夫だよセリシア、もちろん一緒に行くつもりだよ。いいですよねお父様?」

「もちろんだとも」

「やった!ありがとうございます!」


 喜び私に抱きついてくるセリシア。

 尻尾がピンと元気にたっている。

 セリシア、つつましいものが当たってる。

 私もいろんな意味で笑顔になる。

 おっと、あんまりだらしない顔してたら気持ち悪いって言われるかな。 


「皆さん夕食の用意ができました~」


 そこにマリアが夕食の準備ができたと私達を呼びに来た。


 私とセリシアは初めて行く隣街への期待に胸を膨らましながら夕食を食べた。

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