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願い事

掲載日:2013/04/22

ブログの拍手としてあげていた小説です。

短いです。

 寝る前に、次の日起きる時間の数だけ、枕を叩くの。

小さな頃、何かの本で読んだおまじない。

そして、手を合わせて願うんだ。

明日も、あなたと笑えますようにって。


「赤城、おはよう」

 自分を呼ぶ聞きなれた声に、赤城優菜は急いで振り返った。

「お、おはよう。加藤くん」

「あ、そういえば、昨日ありがとうな」

「え?」

「試合見に来てくれただろ?」

「うん。…でも、よくわかったね。私が見てたって」

「俺、視力だけはいいんだよ」

 そう笑いながら、加藤慶太は優菜の隣を歩く。それだけで、優菜の心臓は音を立てた。

「だ、だけって、そんなことないでしょう?一年なのに、サッカー部で試合出てたし」

「違うよ。あれは、経験を積ませようと監督が出してくれただけ。他にも一年で出てた奴いただろ?」

「え…あ、そうだっけ?」

「まあ、ほとんどが俺たちと違うクラスだから、赤城がわからないのも無理ないけどな。でも、高校入ってもうすぐ一年経つんだから、そろそろ覚えようぜ」

「加藤くんはちゃんと覚えてるの?」

「…男子はな」

「私だって、女子はちゃんと覚えてるよ。でも、男子と関わることってあんまりないし…」

「それならまたサッカー、見に来いよ」

「え?」

「ほかのクラスの奴らもいるからさ」

「うん。応援に行くね!」

「約束な」

 そう言って慶太は小指をすっと横に出す。そのしぐさに優菜は笑った。

「今時、指切りってあんまりしないよね?」

「いいじゃん。わかりやすくて。それに…」

「ん?それに、何?」

 首を傾げる優菜に慶太は照れたように笑いながら言った。

「赤城に絶対来てほしいからきっちり約束しておかないと」

「…え?」

「赤城が来たら、いつも以上に頑張れるし!」

 慶太の言葉に優菜は顔を赤くする。深い意味はないのだと頭では理解しているのに、体温は勝手に上がっていった。

「そ、そういう発言すると誤解されるよ」

「誤解って誰に?」

「誰にって…周りに」

 優菜の言葉に、慶太は周りを見回す。

2人の周りには、学校に向かう生徒たちが数名いた。けれど、そのどれもが、友だちと談笑をしている。

「俺たちの会話なんて誰も聞いてないと思うけど?」

「で、でも、噂って変なところから広がるでしょう?誰かが聞いてて、変な噂流されたりしたら大変だよ!」

「大変って、誰が?」

「誰がって…加藤くんが!」

「別に、俺はいいけど?」

 慶太の頬がかすかに赤く染まっている。自分自身が誤解してしまいそうだった。

胸がまた音を立てる。どんどん大きくなるその音が慶太に聞こえてしまいそうで、優菜は歩くペースを速めた。

 けれど、2人の間に距離はできない。早歩きの優菜に比べ、慶太はただ少し、歩幅を広げただけだった。

「なんで離れようとするんだよ?」

「別に、離れようなんて…」

「してるよね?だって、赤城、息切れそうじゃん」

「…」

「そんなに俺の隣、歩きたくない?」

「そ、そんなことない!!」

 優菜は思わず叫んだ。周りがこちらを見ていたが、それでも気にしなかった。

そんな優菜の反応に、慶太は一瞬目を丸くさせ、すぐに微笑んだ。

「そっか」

「そうだよ。隣を歩きたくないなんて、絶対にないからね」

「ありがとう」

「…ありがとうってなんか違う気がするけど」

「いいんだよ。嬉しいから」

「また、そういう発言する…」

 すねたような表情。その顔に、慶太はさらに笑みを深めた。

「だって、本心だし」

「だから、誤解されたらどうするの?」

「だから、誰に?」

「……加藤くんの好きな人…とか?」

「誤解されてもいいよ。ってか、誤解じゃないし」

「…え?」

「好きな人」

 そう言って、慶太は、優菜を指さした。

 自分に向けられた指をじっと見つめる。歩く足も止まり、ただ、その指先を見つめていた。

「…赤城?」

 不安そうに呼ばれた名前に、はっとして、顔を上げる。そこには心配そうに自分を見つめる慶太がいた。

「え…あの…」

「俺じゃダメ?それとも、誤解されたくない好きな人がいる?」

 揺れる瞳が優菜を見つめた。グラウンドで走り回っている時の強気な目が嘘のようである。

 心臓の音がうるさかった。体温は上がる。

 優菜は目を閉じ、震える手をゆっくりと上げた。

「…好きな人」

 その言葉と同時に、抱きしめられた。「やった!」と喜ぶ声が耳元で聞こえる。

はしゃぐ背中に、優菜もゆっくりと手を回した。

 そして聞こえる声に、優菜の優しく微笑んだ

「好きだよ」



毎日、毎日、同じ願い事。もう、癖になっている。

あなたが笑えば私も幸せ。毎日、「も」って言えることそれが嬉しい。

 でも、それだけじゃ、やっぱり足らないから。

今日は、枕を6回叩いた後に、あなたの言葉を思い出すわ。

明日も同じ言葉が聞けるように。

短い小説ですが、どうでしたでしょうか?

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


感想や評価をいただけたら、嬉しいです!!!


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― 新着の感想 ―
[一言] このおまじない知ってます。 こんかいも甘くかわいいお話ありがとうございました。 新しいお話しも期待してます。
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