物書きさんに50のお題:13
今までのお題を含めて、これ以降のお題は連載形式を取ることにしました。もしよろしければそちらを読んでいただければ幸いです。2重の投稿になるため、こちらを消そうかと思ったのですが、削除規定に二次作品とかでないなら、サーバーの負担になるので削除しないで、と書いてあったので、とりあえず残しておきますね。問題があるようでしたら、声をかけてみてください。
13,五月病
本日の学業が終わり、生徒たちは鞄を持ち、各々教室を出て行った。
「おい貴様! 少し待て……」
肩越しに手さげ鞄を担いだ男が教室を出ようとすると、別の男がそれを止めた。
「ああん? って、なんだよテメェか。どーしたー、はやく帰ろうぜー」
呼び止められた男は、相手が幼少からの腐れ縁の男だと分かると、とたんに緊張感の無い声を出した。
「貴様。随分と腑抜けた顔になったな。このゴールデンウィークは家で怠けていたのか? だが連休は昨日で終わった。少しは気合いを入れろ」
「気合い、ねぇ。んなもん入れ直しても、どこに向けりゃいいんだよ? 目的ってもんがないぜー。去年までは試験だなんだっていろいろあったけどなぁー」
担いでいた手さげ鞄を下ろして、はぁーと溜息をついた。そんな男を、腐れ縁は無表情ながらも険しい目つきで睨んだ。
「そんなことで事の先どうするつもりだ? それ以前に良くこの学園に入れたものだな」
「自画自賛かよ? 俺の勉強を見たのはテメェじゃねぇか?」
去年の夏ごろまで受験勉強をしていなかった男は、冬を迎えた辺りでやばさを覚え、受験勉強など不要と涼しい顔をしている近所の腐れ縁の家に殴りこみ、勉強を教わったのであった。
「修正しろ。その言い方では俺が貴様に勉強を教えたように聞こえる。俺はただ自分の理解を確認していただけにすぎない」
気に触ったのか、腐れ縁は眉をぴくりと動かした。
「テメェの都合なんざ知るか。結果的には俺はテメェに習ったんだ。それに救われて受験ってのをパスできたんだぜ! 多少は感謝してやってんだから有難く思いやがれ!」
お互いに感謝し合い、これで借り貸し無しだと仁王立ちする男に、腐れ縁はただ呆れていた。
「はぁー、しっかしこの学園はつまんねぇーな。なんかイベントはねぇのかよ? せめて夏に球技大会くらいしようぜ! なぁ?」
「秋に体育祭があるだろ」
分かってないな、と男は首を振った。
「体育祭と球技大会はちげぇんだよ。だいたい入学してから秋まで行事がねぇってのがおかしいだろ! 学園行事ってのは最低でも2ヶ月に一回はしてくれねぇと生徒側としちゃやってらんねぇって。ったくこの学園のやつらってのはその辺が分かって――――」
何かに気がついたようで、ふいに言葉を止めた。
「どうした?」
「そうか……そうだぜ……」
訝しげる腐れ縁の前で突然男は猛獣のように目を爛々と光らせ、犬歯を見せて笑い始めた。
「確かにテメェが言う通り、俺は不抜けていたみてぇだ! 俺が無いことを嘆いて受け入れるなんてことは有りえねぇ!!」