7BOX BREATH CARE
青い空の下、はためく大量のシーツを、煙越しに眺めていた。
ここは病院の屋上、本当は禁煙。でも時々看護師や医者が吸ってるから俺も使わせてもらう。
吸っている煙草は、隠し持っていたライターと、近くの自販で買ったもの、俺が吸ってる銘柄が無かったから適当なので我慢。
ふぅ、やっぱりこれがないと、俺は駄目だな。
煙草を吸うことに至上の安堵を得ていた。
真理に、入院してるときくらい禁煙してよ!? といわれたので、仕方なく今まで我慢していた。煙草の没収もされた。
今日は退院日、病院を出る前、一足お先に吸わせてもらってる。
病院にいる原因は、この前の怪我、どうやらそうとうな重傷だったらしく、二ヶ月の入院、しばらく通院する必要もあるらしい。
その間は、煙草は吸えない退屈な日々だった。ほとんど暇なときは、空を眺めて、結局暇なままだった。
毎日真理が来てくれたから、そのときは暇つぶしになった、逆に、監視でもあったからタバコが吸えなくて辛かったが。
真と八重刃は、三回ぐらいしか見舞いに来ていない。ユーニにこき使われているんだろう。
心の整理がどうついたか知らないが、真もマシな顔つきになってた。
次の一本を吸おうとすると、屋上へ続く扉が開く音、見つかっちゃさすがにまずいから急いで隠した。
「叢紫、ここにいたんだぁ」
屋上に上がってきたのは、真理だった。
にこにこ笑いながら近づいてくる、何かいいことでもあったんだろうか?
「ねぇ、今日ね……て、なんか、臭うんですけど?」
「ん? そうか?」
やばい、鋭い嗅覚で察知された。適当にはぐらかそうとしても、もう遅い。
「ちょっと! 煙草吸ったでしょ!?」
「ん〜、あぁ、まあいいだろ? どうせ今日で退院なんだし」
「いくないよ! 退院するまでは駄目って言ったじゃん!」
俺の体をあんじて怒ってくれてるのだろうか。
「あ〜……悪かったな」
適当に謝っておく。
「もう、それだけだからね!? どうせ午後になって退院すればどんどん吸うんだから、そこまで我慢!」
「はいはい」
うるさいなぁ。
「で、話を戻すけど、今日って、何の日だかわかってるよね?」
「あ? 退院日、つまり俺の煙草解禁日」
「それだけ? 本当にわかってないの?」
ん〜、なんかあったか?
「もう! 今日は叢紫の誕生日でしょ!?」
……ああ、そうか、最近日付を確認してなかったから、すっかり忘れてた、自分の誕生日なんて。
「で? それがどうしたんだ?」
「……だから、誕生日、おめでとう……」
恥ずかしそうに顔を赤らめていって、最後のほうは消え入りそうだった。真理らしくもない。
「あんまうれしくないがな」
「ちょっと!? 後、はい、これ、プレゼント!」
はずかし紛れに、押し付けるように箱を渡してきた。
「開けていいか?」
「いいよ、別に」
紙を破いて、中の箱を開けると、でてきたのはジッポ、少し上等な奴。
「……あぁ、こんなものより、煙草本体のほうが俺はよかったなあ……」
「なんでそんなこというのよ!?」
頭を殴りつけられた、グーだったけど、病人に手加減してるのか、ほとんど痛くない。
頭を抱えてその場から逃げる。
「嘘、冗談だ。……ありがとうな」
「どう……いたしまして」
もう一度顔を紅潮させて、真理はそっぽを向いた。
俺達の二人の上では、相変わらず、煙草の煙のような白い雲が青い空を流れ続けていた。
これで、とりあえずは、この物語はひとまず幕が降りました。今まで読んでくださった皆さん、ありがとうございます。
とは言うものの、叢紫の物語は、まだまだ続く可能性があります、まだ書ききれていませんし。でも次回を書くのはいつになるかわかりません、なにぶん、勢いだったもので。
ここで、小話、この作品が生まれたきっかけ。
はじめに出てきたのは、煙草を使った魔法(法術)でした。これかっこいいんじゃね? という感じで友達と盛り上がって、それで、しばらく経ってから、じゃあこんな話はどうだ? と俺の中で膨らんできました。
始まりは、キャラとか世界観よりも、あの煙草法術でした、なので、読者の皆さんにも、あの技のかっこよさが、伝わっていると幸いです。
続き読みたい! ッて人は、感想とか、評価とか、してくれるとうれしいし、とても参考になるし、 あぁ、じゃあ書こうかな! という気持ちに俺もなるので、どんどんしてください。