第8話 魔物召喚
改めて皆に仕事を振り直す。
俺
ギフト:【保管庫】
仕事:監督、食料調達、DP獲得手段の模索
郷田 礼護
ギフト:【土いじり】
仕事:畑作り
佐俣 銀河
ギフト:【操流】
仕事:礼護の補佐
有栖川 来夢
ギフト:【奇跡】
仕事:魔物召喚、魔物育成、DP獲得手段の模索
吾武 莉那
ギフト:【鑑定】
仕事:俺の補佐、有栖川の補佐
羽根田 陽世子
ギフト:【天候操作】
仕事:礼護の補佐
と、こんな感じになった。
「まず俺、有栖川、吾武の3人で魔物召喚を試してみる。防衛力として...というよりも、生活の助けになる要員が欲しい。」
「分かった。頑張る!」
「りょ!みっくん隊長!」
「魔物召喚の目処が立ったら俺は森に食糧調達に行ってくる。...って言っても何が食えるか分からんからとりあえず適当に【保管庫】に突っ込んでくる感じかだな。んでそれを後で吾武に鑑定してもらおうかと。」
「それ1人で大丈夫なんか?この世界、ダンジョンじゃなくても魔物とか居るんだろ?」
「深入りはしないさ。森の入口をちょろっと散策するくらいで、何も見つからなければすぐに諦めて帰ってくるよ。」
「そかそか。くれぐれも気をつけろよな。」
とりあえずしばらくの間はDPで食料を仕入れる事になると思う。
が、なるべく支出を減らす為にも調達出来るならしておきたいし、本当のところは自給自足が理想ではある。
よって...
「そんで礼護、佐俣、羽根田先生の3人には畑作りに着手してもらいたい。礼護のギフト【土いじり】を活かしてもらう形だな。」
「うむ。任せろ。」
「あ。そういえばレゴ助の家って農家なんだっけ?」
「そうなんですか?郷田君のご両親には会ったことありますが、確か...」
「農家なのは祖父母だな。両親は普通に会社員だ。...ただ、休みの日には手伝いに行くこともあったし、俺は割とそれが好きだったから、実は少し楽しみにしてる。」
「おお!頼もしいな!手伝える事あったらガンガン指示出してくれよな!」
「せ、先生も頑張りますっ!」
礼護は昔から寡黙な質だが、部活動で主将をやっていた事もあってリーダー的な立場を任せるには最適だと思っている。
少なくとも俺よりは...。
「今日はあんまり時間無いからある程度やったら終わりにしてくれ。」
「わかった。...理久も無理するなよ。」
「おう。」
ようやくやるべき事が明確になったので、俺達はそれぞれ行動を開始した。
――――――――――
「それで御厨くん。どんな魔物を召喚するの?」
「わたしも気になってた!生活の助けになる子って言ってたよねー?」
礼護達を見送った後、俺達は早速魔物召喚を試すべくダンジョンコアに向き合っていた。
実は候補は既に考えてある。
「まずは【スライム】だな。」
「あ、なんか王道って感じだね。」
某有名RPGから来るイメージなのか、最初に仲間になる魔物がスライムというのは、多くの人にとっての共通認識な気がする。
「理由があるの〜?」
「ああ、もちろんある。けどあくまで推測が元になってるから、まずは調べてみてだな。」
話しながらもダンジョンメニューを操作して、魔物召喚と書かれた項目からスライムを選択する。
詳細を表示させるとこんな説明文が出た。
【スライム】
召喚コスト:10DP
維持コスト0.1DP/日
ランク:F
進化による派生先が最も多い魔物。
食事や環境によって進化先が決まる。
戦闘力はほぼ無く、雑食で食事欲旺盛な為、人類と共存しゴミや糞尿の処理を担うことも多い。
「お。ビンゴ!」
異世界モノの漫画や小説で読んだ通りのスライムだ。
そして俺が「こうだったらいいな」と思っていた通りの性能である。
「スライムにはゴミ処理なんかをやってもらおうと思ってるんだ。」
「ゴミ処理?...今のところパンの袋やペットボトルくらいしか出てないけど...。」
「それ急ぎで必要なのー?」
「おう。まぁ濁したけど...ぶっちゃけトイレ担当だ。」
「あ、なるほどね。」
ダンジョン編集で作ったトイレは汲み取り式となっていた。
一応ダンジョンには自浄作用があるらしく、時間を置けばある程度の糞尿や汚れはダンジョン自体が吸収してくれるらしい。
が、待てない。
自分達の生活空間にあるトイレくらいは常に綺麗にしておきたい。
そこでスライムにこの仕事を任せる事にしたのだ。
説明文にある通り、スライムにトイレ掃除を任せるのはこの世界において割と一般的な手法なのだと思う。
ならばうちでも取り入れるべきだろう。
「召喚は後で2人にやってもらうとして、次を見てこう。」
「スライム以外にも欲しい魔物が居るの?」
「うーんと、こっちも俺が思ってる通りならって感じだな。」
次に探すのは労働力としての魔物だ。
魔物のリストをスクロールして探していく。
「人型である程度の知能がある魔物...。そんで出来るだけ安いのがいいんだけど。」
「あ。わたし分かったー。当てていい?」
「おう、いいぞー。」
「畑仕事とか狩りをしてもらう要員でしょ?」
「ん。正解。」
「わーい!」
メインは畑仕事の方だ。
正直現状では狩りを任せられるほどの魔物はコスト的に難しい気がしている。
「そういう事なら後は私達に任せて。御厨くんはこの後森に行くんでしょ?あんまり帰りが遅くなっても心配だし...」
「そだねぇ〜。わたしは召喚した魔物を【鑑定】すればいいんだよね?」
「そうそう。魔物召喚の画面でも説明は見られるけど、実際に召喚すると個体差があるみたいだし、その辺を見といてくれ。理想は狩りを任せてDPを稼ぐって所まで行きたいけど、多分予算的に無理だな。畑仕事要員を見繕って欲しい。」
「おっけー。」
という事になったのでお言葉に甘えてここは2人に任せようと思う。
「ほんとくれぐれも気を付けてね...。」
「そうだよ〜。もう...自分1人の身体じゃないんだから。」
「そうだな。有栖川を1人にするわけには...」
「ちょっと2人とも!?」
「いや、レゴにゃんとそのお腹の子が悲しむから。」
「そっちかい。」
「え?え??」
混乱する有栖川も可愛い。
「んじゃ後は任せた!行ってくる。」
「はーい。行ってらっしゃ〜い。」
「あ、あの...えっと、行ってらっしゃい!」
俺はダンジョンコアを離れ、食料調達に向かうべく部屋を後にした。
「やっぱり御厨くんと郷田くんってそういう関係なの?」
「そうだよ〜。リク×レゴね。」
「...わぁ。」
ツッコミ不在の会話を背中で聞きながら。