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第4話 転送された先


「くっら。こっわ。」


思わずそんな呟きが漏れた。



転送された先は薄暗い石造りの部屋だった。

学校の教室くらいの広さで、光源は部屋の中央に位置する半透明な"板"のみ。

板の大きさは縦1m、横50cm程で、床から浮いている。


板が放つ光はこの部屋を照らすには到底足りず、むしろ不気味さを演出するだけであり、その光景は夜の病院の非常灯を思わせた。


「みんな無事かー?」

「おうよ。」

「わたしはへーき!」

「私も大丈夫だよ。」

「せ、先生もです!」

「...うむ。」


とりあえず全員無事らしい。

転送された時に1人居ませんでした、などという事が無くて良かった。


「多分、アレがダンジョンコアだよな?」

「そうなんじゃねー?...ちょっと触ってみる?」

「...佐俣。壊すなよ。」

「壊さねぇって。レゴ助はオレをなんだと思ってんのよ?」

「ガサツ。チャラ男。アホ。非モテ。」

「後ろの2つはただの悪口だよね!?」


とりあえず俺達は唯一の光源である板に近付いた。


近くで見るとその半透明の板には何やら文字が浮かんでいる。

そこには日本語で「ダンジョンメニュー」と書かれていた。


「ダンジョンコアで間違いなさそうですね。」

「ここからダンジョンの編集をするみたいだね。私もちょっと触ってみたいかも。」


無遠慮にダンジョンコアを触る佐俣の両脇から、羽根田先生と有栖川がメニューを覗き込みながらそう言った。


「ふんふん。...これってあれに似てますね?」

「あ、初期設定で使ったウィンドウですよね。私も思いました。」


確かに。

尤も、どちらもダンジョンを作るためのシステムなのだから似ていてもおかしくないが。


「それイジる前にさー。とりあえず外見てみない?わたしダンジョンがどうなってるのか気になるー!」

「だな。...っと、その前にちょっと失礼。」


ダンジョンコアの前で屯する俺達を急かすように吾武がせっつくが、俺は少しだけ見たいものがあったのでダンジョンメニューを操作した。


「んーっと。...あ、あった。みんなちょっと。これ買ってみても良いか?」

「ん?どれどれー?」


俺がメニューの中から探し出したのは、【ショップ】とか書かれた欄にあった電池式のランタンだ。

ファンタジー世界らしく松明とかがあればいいなーと思って探していたのだが、もっと良さそうなものがあったのでそれを提案する。

いくつか種類があったが、その中でも1番安いものを表示させた。


「この部屋も暗いし、遺跡エリアもまともな光源が無いかもだろ?とりあえずこれ1個あると便利かなーって。」


初期設定で遺跡エリアを作った時は、ホログラムみたいな映像だったので詳細までは分からなかったのだ。

罠や家具の追加というソフト面の調整を行わなかったのもこの辺りが理由の一つだったりする。


「80DPですか。良いんじゃないでしょうか?足下が暗くて転んだりしても怖いですし...。」


羽根田先生の賛成の声に続いてみんなも了承してくれたので、俺はメニューからランタンを選択し、購入と書かれた箇所をタッチする。


すると、ダンジョンコアの目の前...その中空に、どこからともなくランタンが出現した。


「「「おぉ〜!」」」


目の前で起きた不思議現象に感嘆の声が挙がる。


パシっ、と

重力に従って落下するランタンをどうにかキャッチした。

早速スイッチを入れると、薄暗い部屋がパッと明るくなる。


「よし!明かりも手に入ったし、早く行こ!」


待ちきれないといった様子の吾武に従い、俺はコアルームの出入口を照らすと、そこには簡素な鉄扉があった。

先程ダンジョンメニューを覗いた時にチラッと見たのだが、この辺りもDPを支払えばカスタム出来るようだ。

後々DPに余裕が出来たらいじってみても良いかもしれない。


「開けるぞー。」


明かりを持っている都合上、俺が先頭に立って進む。


扉を開けると、コアルームとは少し素材の違う石で出来た通路があった。


通路には左右の壁に松明があり、そこに灯る火である程度の明るさが確保されている。

どうやら遺跡エリアを選択するとデフォルトで松明が付いているらしい。

...換気とかされているんだろうか。


「ランタン要らなかったな。」

「でも暗いは暗いよね。御厨くん、一応足下照らしながら前歩いてくれる?」

「わかった。」


罠などは設置してないので危険は無いが、段差などで転びそうな所が無いか確認しながら進む事にした。


「なんかすごいねー。わたしこういう所初めてだー!」

「ちょっとテンション上がるよな!」

「2人とも、はしゃいで転ぶなよ?」

「レゴ助はお父さんか?」

「わたしレゴにゃんみたいなお父さん欲しかったー。」

「......。」


本物のお父さんが聞いたら泣くぞ。


なんて考えていたら、みんなのテンションが露骨に下がっていく。

誰も口には出さなかったが、元の世界にいた家族の事を思い出してしまったのだと思う。


邪神は「元の世界には帰れない」と言っていた。

本当に帰る手段が無いのかは分からないが、少なくとも今の俺達には見当もつかない。


出来ない事を考えるのでは無く、出来る事を考えよう。

今はダンジョンの確認とその整備だ。



通路を少し歩くと、大きな部屋に出た。

上にも横にも広く、体育館くらいの広さがある大きな部屋だ。


「...ボス部屋ってやつか?」

「いや、ボス部屋は設定しないと作れないらしいし扉も付いてないから違うと思う。」


礼護の問いかけに答える。


「この広さは色々活用出来そうだね。」

「だな。」


隣に立つ有栖川に返事をしつつ、使い道を考えてみる。

遺跡エリアは、外敵からコアを守るための防衛施設と、俺達が生活する居住空間、そのどちらにも使えそうだと思い選んだ。


この部屋はコアから近いから居住空間の方にしたい。

皆で使用するにも充分な広さがあるし、すぐにコアに行けるのも良さそうだ。


まぁこの辺の作りは初期設定の時にある程度確認しているので、今見たいのは明るさや肉眼で見た印象などだ。


「確かこの先に個室として使えそうな部屋もいくつかあったと思うぞ。」

「おお、いいねぇ〜。とりあえずもっと見て回ろ!」


俺達は探索を再開する事にした。

一先ずは遺跡エリア全体を見て周り、居住空間の整備と最低限の防衛力を持たせたいところだ。


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