運命の日
第三章: 運命の日
あの日も、君と僕はいつものように病院を抜け出して、街へ出かけた。病室の窓から見える景色とは違う、広がる青空と街の賑わいが、僕の心を解き放ってくれる。
「リョウ、今日は特別な日だよ。僕たち、いつも以上に楽しもうね」
君のその言葉に、僕は心からの笑顔で応えた。君の目には、退院の日が近づく喜びと期待が溢れていた。その光景は、僕にとっても希望の象徴だった。君の退院が近づくにつれ、僕たちの未来にはもっとたくさんの楽しい出来事が待っていると信じていたからだ。
晴れ渡った青空の下で、僕たちは公園へ向かった。公園に着くと、青々とした芝生と色とりどりの花々が迎えてくれた。君はとても楽しそうに駆け回り、僕もつられて自然と笑顔になった。
「見て、リョウ!この花、すごくきれいだよ!」
君が指さした花の花びらは、太陽の光を浴びてキラキラと輝いていた。その輝きが、君の無邪気な喜びと重なり、僕の心にも優しく広がっていった。
公園で遊び疲れた後は、近くのショッピングモールに寄った。君と一緒にアイスクリームを選びながら、僕たちは笑い合った。アイスクリームの甘さが、君との楽しい時間をさらに引き立てていた。
「リョウ、君のアイス、溶けそうだよ!急いで食べないと!」
君の冗談に僕は大笑いし、溶けたアイスクリームを急いで食べた。その楽しげなひとときが、僕にとっては幸せそのものだった。君の存在が、日常の些細なことさえも特別なものに変えてくれる。
君と過ごす時間は、どんなに小さな出来事でもかけがえのない瞬間だった。君がそばにいるだけで、僕の心は満たされていった。
その日、帰り道に差し掛かると、君は突然立ち止まった。
「リョウ、少しだけ道を変えてみようか?」
君の言葉に、僕は不思議な気持ちになりながらも頷いた。君が提案するのは、いつもと違う道を通ることだった。君の目にはどこか神秘的な光が宿っていて、その光に引かれるように僕たちは歩き始めた。
しばらく歩いた後、交差点に差し掛かると、周りの風景が変わっていた。賑やかな街の雰囲気が少しずつ薄れ、どこか落ち着いた雰囲気の場所に来ていた。
「ここ、なんだか静かでいいね。」
君がそう言うと、僕は頷いた。
「うん、ここは落ち着くね。まるで別の世界に来たみたいだ。」
その瞬間、幸せな時間がずっと続くことを願っていた。しかし、運命はその願いを打ち砕くかのように、突然の恐怖を引き起こした。
交差点の向こうから、車のエンジン音が近づいてきた。その音がだんだん大きくなるにつれ、僕の心臓が不安で締め付けられるような感覚に襲われた。周囲の景色が一瞬で静止したかのように感じられた。
「危ない!」
君が突然、僕を引き寄せて身をかがめた瞬間、車の音が響いた。僕の目の前で、君の体が宙を舞い、ひときわ大きな衝撃音が鳴り響いた。僕の心臓が、悲鳴のように激しく脈打つ。
「ユウタ!ユウタ!」
僕は震える手で君の名前を呼びながら、必死に駆け寄った。君の身体が地面に横たわっているのを見た瞬間、僕の全身に冷たい恐怖が広がった。周囲の音が遠くに感じられ、世界がぐるぐると回るような錯覚に陥った。
「ユウタ、大丈夫だよね?」
僕の声は震え、涙が溢れてきた。君の顔を見下ろしながら、どうにかして状況を理解しようとした。君の目は閉じていて、呼吸もわずかしか感じられなかった。
そのとき、周りに集まった人々の声が現実を引き戻してきた。
「誰か、救急車を呼んでください!」
様々な声が交錯する中で、僕はただ君の手を握りしめていた。君が意識を取り戻してくれることを祈りながら、心の中で何度も君の名前を呼び続けた。
その後の時間がどう過ぎていったのか、僕にはわからなかった。救急車が到着し、君が運ばれていくその後ろ姿を見送るしかなかった。
「ユウタ、、、、絶対に大丈夫だよね?」
心の中で何度も呟くその言葉が、虚しく空回りしていった。青空の下で楽しかったはずの一日が、突然の悲劇で覆い尽くされてしまった。
病院の中で待つ時間は長く、どこかで希望の光を探し続けるだけだった。君が無事であることを願う気持ちと、自分の無力さに対する悔しさが入り混じり、胸の奥で苦しみが募っていった。
そして、ようやく医師が現れる。その顔を見た瞬間、僕の心は大きな期待と恐怖で震えた。
「ユウタは…どうなるの?」