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取り急ぎ鳥居

なんやかんやであちこちそちこち移動を繰り返し、地図上での移動距離は朝からだと500㎞は超えていそうだ。

一応、面近さんのご両親のオーベルジュ近くからの移動を説明しておくとこんな感じだ。

先ずは那須高原から那須塩原に作った拠点まで車で戻り、そこから恵比寿に転送で戻っていくつかの雑用を済ませると、宇都宮市の東部に作った拠点に転送で移動し、そこから日光へ車で向かったのだけど、私が用事をしているうちに面近さんが探した餃子の美味しい店に立ち寄り、宇都宮市内と日光市内で怪物化していた数か所を攻略して、日光東照宮の石鳥居の前に立っている。


神社の鳥居って不思議な存在だよね。

大概の神社に存在するけど全くおんなじってわけでもない。

形というか構造も少しずつ違ってたりするし、材料も木材や石、銅などいろいろだ。

近年、造られたものだとジュラルミン製なんてのまである。

鳥居の起源については正確なところは判っていなくて、日本でできたとする説もあれば、海外から伝わったとする説もあるようだ。

なので語源の方も不明なのだが、奈良時代にだいたい今のような形になったことは確認されているらしい。


「こちらの鳥居って穴が空いてた気がするのですが空いていないのですわ。いつの間に建て替えたのでしょうか。」


「日光東照宮は世界遺産に登録されているのでここ十年ぐらいの間で建て替えはあり得ないですし、仮に修繕工事があったとしても元通りに復元されると思いますよ。」


「おかしいのですわ。子供の頃に父に連れられて来た時に、願掛けでその穴目掛けて小石を投げて通そうと頑張った記憶があるのですわ。」


なるほど。

それなら、以前にテレビの情報バラエティで見た気がする。

それってここではなくて近くの日光二荒山神社の運試しの鳥居のことだろう。

鳥居の額束がくづかもしくは額柱がくばしらと呼ばれる部分に穴があり、この穴を目掛けて小石を投じて3つの中1つでも入ると願いが叶うといわれていることからそう呼ばれているようだ。

今は鳥居の保護の為にやわらかいゴムボールが用意されていて、気兼ねなく挑戦できるようになってるんですよ、みたいな形で放送されていたのを覚えている。


「そうなのですね。小学校に入ったばかりの頃だったと思うので記憶が混ざってしまったようなのですわ。小さかったので石が全然届かなくて泣いて父を困らせたことははっきり覚えているのですわ。今は多田さんに想いがなかなか届かなくて泣いてしまうのですわ。」


面近さんが言いながら泣き笑いの表情で微かに涙を浮かべるので困ってしまう。


「本当に泣くことないじゃないですか。」


ポケットからハンカチを取り出して渡すと、なぜか涙が増量してしまった。


「中途半端に優しくされると本当に泣けるのですわ。」


涙を拭いた私のオジサンハンカチは面近さんのポケットにしまわれてしまい、代わりに面近さんの可愛らしいハンカチを渡されてしまった。

交換は確定のようで、再交換を受け付けていただける様子が微塵も感じられなかったので、大人しく子猫の刺繡のついたハンカチをポケットにしまうしかなかった。


「これでハンカチのことと一緒に鳥居のこともしっかり記憶しなおせるのですわ。」


他の神社でも石を投げて鳥居に乗せられると願いが叶うとされているところもあるようだが、手当たり次第にどこの鳥居でも勝手気ままに試すべきではないことは言うまでもない。

同様の事例で、自然、人口を問わず池や沢にコインを投げ入れる愚か者の多さにも辟易する。

愚か者は皆がやってるから問題ないとかどこにもやるなと書かれていないとか言うが、それこそ愚の骨頂だ。

愚か者の所為でどこに行っても折角の景観の中にいくつもの禁止事項が書かれた立て看板ばかり見かけるような世の中にするつもりだろうか。

殺人とかの明確な犯罪だっていちいち街角に禁止するものなんてないだろうが。

その乏しい想像力を十二分に働かせて、愚かな行動をする前にどうにか慎んでくれと思う。

これからコロナも沈静化というかインフルエンザと同じ扱いになって観光地にも人が多く戻ってくることだろうし、外国人旅行者もコロナ禍前のように増えてくるだろうけど、どうか節度を保って行動してほしいものだ。

進入禁止とか撮影禁止の類ならスマホやアプリに仕込めばなんとかなりそうだけど、そんなもの使わなくてもいい世の中の方が快適なのは間違いないだろうから、どうにかそういう類のものが義務化される前に踏みとどまってほしいね。


「どうします?その二荒山神社の方に行きますか?」


「いいえ、そちらはまた今度にして今日のところはこちらを見て回ることにいたしましょう。」


なし崩し的に次の約束をさせられてしまったようだ。

そう思いながら鳥居をくぐった時にそれは感じた。


「多田さん、今のって…。」


何度もダンジョンに出入りしたことで感じるようになったことがある。

今スキルが使えるか使えないかの差だ。

正に今、鳥居をくぐってスキルを使えるようになったと感じた。

つまり、今はダンジョンの中にいるということだ。


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