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オーバードライブ

「この辺りがダンジョン発生の境界みたいなのですわ。」


面近さんの言う通り、疎らではあるが今立ってる辺りを境に西側には怪しい空き地が確認できたが、東側には一つも見当たらない。


「それじゃあ、さくっと攻略してくるのでちょっとだけ待っててください。」


そう言って、手近な怪しい階段に向かい十分もかからずに攻略して戻ってきた。

ちなみに怪物の種類は鹿っぽかったが、これといって手強くもなく、あっという間に6体を倒して素体を確保させてもらった。

広域連携の進み具合も確認したが、取り壊しアパートで見たよりも壁のくぼみは深く大きなものではあったがまだ他のダンジョンと連携できてはいなかったようだ。

うちのアパートとババアのアパートみたいに隣接してればすぐに繋がったかもしれないが、ここら辺のように一軒家が多くてアパートが点在しているようならそう簡単にはいかないようだ。

逆に、都内だとすでにいくつも連携してるところがあるかもしれないが、そこは国の力でなんとかしてもらいたいものだ。


「音もなくいつの間にか建物があって結構驚いたのですわ。」


取り壊しアパートの時と同じように、この二階建てアパートも支配下においたので建物が元に戻ったようだが、面近さんはそれがいつ起きたのか全く気が付かなかったというのだ。

どういうことだろう。

何もなかった空間にこれだけの容量のものが突然現れれば、その分の空気を押し退けたり何かしらの物理作用があって然るべきだと思うのだけど、音も風圧も一切感じなかったというのだ。

これまでのことも現代科学で説明できるかと言われれば、できないことの方が断然多いのは明らかだが、理解というか納得できるかどうかはまた別の話だ。


最初に取り壊しアパートの地下に降りた時には、地上から消えた建物が地下に潜ったのかと思ったんだけど、造りが全然違うしすぐにそうじゃないと思えたんだよね。

それに、建物が元に戻っても地下部分はなくならずに並存してたからね。

地下自体が異空間のようだったから、地上部分も異空間に移されているって考えるのが妥当かもしれない。

ふと、元々地下階のある建物の場合はどうなるんだろうと思ったが、地上の部分だけ切り取られてるわけでもなさそうだし、そこら辺はダンジョンがうまいことやるんだろう。


「もし、私が建物が戻ってくる瞬間にそこに立っていたらどうなったのか気になるのですわ。」


うわ、怖いこと考えますね。

最悪は戻ってきた建物と重なって「いしのなかにいる」みたいになることだろう。

次点としては、建物と入れ替わって異空間に飛ばされちゃうとか。

だけど、そこら辺もダンジョンがうまいことやる気がしている。

実際に、建物の中にいたはずの住人というか怪物が地下の異空間にいたわけだし、地下から戻ってきた建物の各部屋に当然のように怪物も戻っていたんだからね。

そう思うと、全てのことに転送のようなことが関わっているような気がしてきた。

この時もうちょっとで何かの答えに手が届きそうだったんだけど、それが形になることはなかった。


「次回、どうなるか試してみませんか。ということで北の方に行きましょう。私のというか両親の家がここからなら車で二時間ぐらいだと思います。」


面近さんが突然そんなことを言い出すんだもの。

そんな危険なことわざわざ試さなくても良いと思いますし、それをするのに面近さんのご両親の家に向かうのも意味が分かんないです。


「別に「お嬢さんをください」なんて言わせようとかそんなことは全然考えてないですからご安心くださいなのです。ただそれなりに近くまで来たので両親の家の近くにもすぐ移動できる拠点があると安心できるかなと思った次第ですがダメでしょうか。」


そう言われると断りにくいけど、もしかしたら最初からこれを狙っていたということはないですよね。

まあ、親のことを持ち出されては仕方ないですから付き合うとしましょうか。

一人でも行くとか言い出されても余計に困ってしまいそうですから。

ということで、タクシーでもつかまえて北上しようかと動き始めようとしたところで、面近さんがアパートの駐車場の方を指さした。


その十分後。

本当にこんなことしちゃってよかったんだろうか。


「これぐらい全然大丈夫ですよぉ。ちょっとお借りしてるだけですもの。持ち主は絶対に何も文句言わないですよ。」


確かに持ち主は私が駒にしちゃったので当然何も言うことはできないんですけどね。

何がどうなっているかというと、鹿アパートの駐車場にあった車をお借りして那須を目指しているところです。

ガソリンは満タンにしてお返しするし、幾ばくかの御代も置いておいたのでどうかご容赦ください。


「こういう二人乗りの車でドライブデートするのが憧れだったんですよね。多田さんとそれが出来てとても幸せなのですわ。」


それは良かったですね。

だけど、今は運転に集中したいので何もお返事できる状態ではないです。

だって、かなり久しぶりの運転の上に、スポーツカータイプで視野が低くて、さらに前回はいつ触ったかも覚えていないマニュアルトランスミッションなんですよ。


「これで愛を囁かれたら幸せ過ぎて死んでしまいそうなのですわ。」


下手な突っ込みを入れたら本当に事故りそうなので、冗談でもやめてください。


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