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経験済みな私

慧心には「けいしん」も「えしん」もあったのだが、どちらもスキルとしての能力がよくわからないものだった。

ちなみに次のような意味があった。

慧心けいしん: 正しい理解や判断がすばやくできる心。賢明な心。

慧心えしん:かしこい性質。ものを判断するこころ。

慧心えしんの方には仏教用語みたいなのもあって、「智慧を研く心。三学の一である慧学。心精が現前すれば純真の智慧が自然に発起すること。」と説明があったが更に難しすぎてよくわからなかった。

なんでも、菩薩が修行して得られる菩薩五十二位っていうのがあって、その下位から数えて1番目から10番目の位を十信じゅうしんというのだそうだが、その中の一つらしい。


とりあえずはどういう意味でも発動しようとすれば問題なくできるだろうけど、スキルの力を実感したいということなのでスキルガチャで新しいスキルを取得することにした。

結果、得られたのは「遠見」で微妙な感じだが、スキルの使用感を味わうという意味ではお手頃かもしれないのでこれで我慢してもらおう。


「へー、すっごい良く見えるわ。もう眼鏡なんていらないわね。」


「世の中そんなに甘くなくて、スキルが使えるのってダンジョンの中だけなのですわ。」


何をしてるかというと、面近さんが新聞を持って部屋の壁際に立ち、反対側に紀香が立ってその新聞を読んでるのだ。

何とも言えない地味な使い方だが、冷静に考えてみればこの後つくばに帰る紀香にとってはスキルなんて無用の長物のはずだった。


「それで、紀香はいつつくばに戻るんだい?」


「そうね、お父さんの無事というか問題ないことは確認できたからいつでもいいんだけど、さすがに一睡もしてない状態ですぐまた長時間かけて車で帰る気にはなれないからどうしようか迷ってる。」


別にゆっくりしていけばいいとは思うのだが、紀香の性格を考えるとこのまま仕事を休むのを良しとはしないだろう。

そう言えば、配下の拠点間って転送できるってことだったけど、実際に自分では体験してなかったことを思い出した。

安全性に問題ないなら紀香のことをどうにかできそうなんだけど、そこんところどうなんだろう。


『ダンジョン内の階層移動は転送を伴いますので、既に何度も経験されています。』


げっ、マジですか。

言われてみれば、移動設定で階層待機なんてのもあったわけだし、階層間には何らかの境界みたいなものがあったようで、それを越える時に実は転送されていたというのは納得できる話ではある。

一体、私は何回転送されていることになるんだろう。

とにかく、今のところ身体に変調はきたしていないので、転送の安全面に問題はないということでいいか。


それで、紀香をどうしようと思っていたかというとこういう感じだ。

まず、私がつくばの方まで乗り込んで、適当なダンジョンを攻略する。

その間、紀香はここで仮眠でもとって休んでいればいい。

私が攻略後に転送で移動させれば、そのまま出勤も可能だろうという筋書きだ。

これから電車で向かっても、紀香の車で向かってもどちらでも二時間かからないでいけるだろうから、遅くても午前休ですむだろう。


「そういうことなら、同僚のところのダンジョンマスターがまだ降伏していないか聞いてみるわ。」


なんでも昨日副署長さんに渡した情報が公共の電波で大々的に報道されていたそうで、紀香はこちらに向かう道中ずっとラジオでも関連情報を聞きまくっていたのでそこら辺の情報は明るかった。

降伏する、もしくはさせれば周囲の空き地が元に戻るということも、その降伏先として公共機関が手を挙げていることも知っていた。

もし、すぐに降伏してくれれば移動と攻略に要する時間が不要になるでしょ、との言い分に子供の頃から聡い子だとは思っていたが改めて紀香の合理的というか効率的なところに感心するしかなかった。

ということで、昨日出勤できないと連絡があった同僚に連絡してみたところ、まだ降伏することを躊躇していたことが判り、それなりに話し合ってなんやかんやで最終的に私に降伏することになった。


「それでは、降伏してください。」


『ほら、父さん。この人は絶対大丈夫だから。っていうか、将来的に親戚になるかもしれないから失礼のないようにしてくれよ。』


『仕方ないな。だが、ちゃんと後でどういう人か説明しろよ。』


『いいから早く。』


『降伏する。』


『敵陣を制圧したのでポイントを獲得しました。』


「これで降伏の手続きは完了しました。」


「それじゃあ職場で。」


紀香は用件を済ませるととっとと通話を切ってしまったが、本当にそれでよかったんだろうか。

なんか気になることを言ってたようだけど、と気をもんでいたら紀香が弁明を始めた。


「全然、ただの同僚だから。私に気がありそうってのも今わかったぐらいだし、今のところ口説かれた覚えもないし、二人きりで食事すらしてないから。」


ふーん。

後で聞いて判ったのは父親の経営するアパートに住んでいる会社の同僚ってことだけだったが、父親のアパートに部屋を借りて住んでいるっていうのも今日知ったということだ。

まあ、そのおかげで割りととんとん拍子で話が進んだのだから良しとしようか。

名も知らぬ同僚くん、前途多難なようだけど頑張るんだよ。


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