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多田紀香の憂慮

閑話というか幕間というか振り返りというか、まあそんなお話です(;^_^A

私の名前は多田ただ紀香のりか

26歳のいわゆるリケジョでつくばのとある研究所で働いてるわ。

子供の頃はバカな男子から「ただ乗りか?ちゃんと運賃払ってんのか?」なんてからかわれたけど、特に気にすることはなかったわ。

精一杯考えてその程度の悪口なら、相手にする時間の方が無駄に思えたもの。

それより父の名前を知った時に、そこに照準を合わせて来たことにはイラついたわ。

「お前のとーちゃん、ただの豚だ〜」なんて言ってくる男子をぐうの音も出ないほど言い負かして、ついでにわら人形で呪ってやったわ。

あんなに何でもできてカッコイイ父がただの豚なわけないじゃない。

自慢の父を名前だけだろうと揶揄われて私が黙ってると思ったら大間違いよ。

中学受験して中高一貫の女子校に通うようになったから幼稚な男子の相手をしなくてもよくなったけど、父が授業参観とかに来ると友人やそのお母さんたちが色めき立つので複雑な気持ちになったものだわ。

言っておくけど、ファザコンとは違うんだからね。


父と母はイチャイチャするのとは違うけどすごく仲が良かったと思う。

言い争ってるところなんて見たこともないし、お互いのことを大切に思ってるのが会話の端々からも伝わっていたわ。

だけど、三年前に母が突然亡くなってから父の心からの笑顔が消えてしまった気がするの。

私だって母を失って悲しかったのはもちろんだけど、父がこれまでと変わりなく優しくしてくれたから立ち直ることができたの。

父は私に向ける優しい表情は絶やさないようにしてたけど、一人で佇む父の寂しそうな姿を見てしまったときには胸が締め付けられてしまったわ。

その時、そんな父を一人にしておくことができそうになくて、今のつくばの研究所とは別で就職先を探そうとしたのよね。

だけど、父に気づかれちゃって自分のしたいことをちゃんとやりなさいって優しく言われちゃった。

結局、それまで住んでいた渋谷のマンションは一人暮らしするには広すぎるしもったいないからと言って賃貸に出すことにして父はアパート暮らしをすることにしたの。

思い出のつまったあの場所に一人でいるのが辛かったんだろうけど、手放すこともできなかったんだと思うわ。


父の引っ越しを手伝った時に大家さんに会ったけど、父より少し年配の方で誠実そうな感じがして安心したのを覚えてるわ。

就職して一年目は父のことをまだ心配もしたし、母の分も父に親孝行したかったからGWとか夏季休暇でまとまった休みが取れる時は東京に戻ってきてできるだけ様子を見るようにしてたのよね。

少しずつ元気にはなってるように思ってたんだけど、二年目の夏に戻った後はやたらと私を東京に寄せ付けないようにしてたのよね。

大家さんと旅行に行くことにしたとかなんとか言ってたけど、本当にそうならそれはそれで母との別れの痛手が薄れてきているのかなって少しは私の気も楽になれたんだけどね。

楽しくやれてるんなら邪魔しちゃ悪いしね。


ところが、昨日の夜遅くにいきなりメッセージを送ってきたと思ったら「ステータスオープンって言え」なんてわけわかんない内容だし、なんか変なものにでも中ったかと心配しちゃったわよ。

まあ父のことだからちゃんとした理由があるんだろうとは思ってはいたんだけど、まさかこんなことになってるなんて予想の斜め上行き過ぎよ。

今朝、出社してみたら半分近くの人が休んでるし、その半分ぐらいは連絡もないって状況だったのよね。

業務時間中は休んだ人の分をフォローをするのでいっぱいいっぱいだったわね。

昼休憩の時に無断欠勤してる同僚に電話してみたけど、一向に出る様子がなかったわ。

仕事終わったら様子でも見に行ってみようかと思った時に、その同僚の住所がつくばの西、常総のアパートであることに思い至ったわ。

同時に、正確には知らないけど今日休んでる人の大半がつくばエクスプレスを利用してたような、つまり西から来ている人たちなことに気づいてしまったわ。

え、どういうことなの。

父はつくばの西側の集合住宅に近寄らないようになんて言ってたけど、このことを予見していたとでもいうのかしら。

父、ヤバいわ。

もしかして、実は国の諜報機関みたいなところで活動していたりするのかしら。

コードネームは「くれない」とかだったりして。

とりあえず仕事を片づけると同僚のことは心配だけど父の言いつけに従って自分の家に帰ることにしたわ。

多めに残業もしたからいつもよりかなり遅い時間になったけど、軽い夕食を作りながらSNSをチェックしてたら結構な騒ぎになってるじゃないのよ。

友人知人と連絡が取れないことやアパートの敷地から出られないから助けてなんてのに始まって、建物が消えちゃったなんて嘘みたいな画像が上がりまくってるじゃない。

夕食をとりながらテレビも見てみると、どこの局も同じような情報を取り扱ってる特別番組をやってるわ。

そこではダンジョンなんて言葉が普通のように飛び交ってて唖然としちゃったわよ。

その番組の情報によるとダンジョンに囚われた人にはステータスが見えるんだとか。

父、やってくれたわね。


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