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瑠奈が代わっておしおきよ!

「へー、これがクマでこっちがサイ。そんでもってこれがウマ。」


須奈乃がクマ男たちをしげしげと観察し始めたわ。

須奈乃って動物好きだったりするのかしら。

その脇で麻酔銃の餌食にならなかった寮生を集めると軽くお仕置きしておいたわ。


そう言えば「お仕置き」って刑罰、特に死刑のことだったって知ってるかしら。

江戸時代の文献にも確実に残ってるのよ。

公事方御定書くじかたおさだめがきは八代将軍・徳川吉宗が作成させた江戸時代の基本法典なんだけど、その中ではかなり事細かく御仕置というか刑罰が定められているわ。

今でいう、「強盗罪」「窃盗罪」「遺失物等横領罪」「盗品等関与罪」等に相当するものはもちろん、不倫や重婚に関するものまであるのよ。

御仕置例類集おしおきれいるいしゅうなんてのもあって、文字面だけ見ると「おしおきだべえ」とか「月に代わっておしおきよ」なんてのが載ってそうなんて勘違いしそうだけど、これは江戸幕府が作成した刑事事件に関する判例集なの。

実は奉行や代官って専決できる事例・刑罰に制限があったのよ。

現在の簡易裁判所では、原則として罰金以下の刑しか科すことができないけど、住居侵入、常習賭博及び賭博場開帳等図利、窃盗、横領、逸失物横領、盗品譲受け等の罪等の罪において3年を超えない範囲で懲役刑を科すことができて、それ以上に関しては地方裁判所が担当するのと似てるのかしらね。

その制限を超える時はどうしたかって言うと、上部組織である老中にお伺いを立てて判断を仰いで、老中はその事案を評定所に諮問することになっていたそうよ。

その際に作成した評議書(答申)をまとめたのが御仕置例類集なんだって。

現存本の一部は関東大震災で焼失しちゃったんだけど、残ってるのは国立国会図書館に所蔵されているそうよ。


で、誰が死刑執行したって言ってるのかしら。

ちょっとクマたちにハリセン渡して憂さ晴らしをさせてあげただけよ。

容赦なく顔面に入れてるのもいたけどしょうがないわよね。

瑠奈も「こうなの」とか言いながら腰の入ったいい手本を披露していたわ。


「クマはともかくサイもウマも手足というか前足も後ろ足も五本指って奇妙っていうか微妙ですね。」


「能美先輩はそういう視点でこの子たちを見るんですね。」


「全然気にしてなかったの。」


怪物のモデルを抽出するときに、そこまで詳細な情報を抜き取らなかったのか抜き取れなかったのかどっちかしらね。

大体そこまで動物の骨格を知りつくしている人なんてそうはいないと思うのだけれど、馬といえば蹄があることを知らない人もそうはいないわよね。

もしかしたら骨格を大きく変えすぎると行動に支障があるとでも考えたのかしら。

もしそれなら、そもそも変態させる必要ってあったのかしらね。


「なんとなく判りました。後は帰ってから調べてみます。」


「何を調べてるのかしら。」


「ただの興味本位なんで今は内緒、ってことで。」


「…ふーん。」


この後、別の場所で事態を収拾しようとしてできていない承太郎を見つけたわ。

全部のカードが封印解除されていたことを確認すると、もう一度封印するのも気の毒な感じがしてそれぞれの住居に怪人たちを転送することにしたわ。

須奈乃を無駄に刺激しないため封印するところを見せたくないっていう思惑が少しあったことは否定しないわ。

ついでに調子に乗って騒いでた馬鹿たちも一緒に転送して、元の人間に戻れるまで通いで世話係をするように言いつけておいたわ。

一応、女性ものの服を着用していたのもいたから、部屋の様子とかを確認して元が女性であることが確認出来たら女子寮の方で担当するから速やかに連絡するようにとも付け加えておいたわ。


近年は、普通に異性用の衣服を着用している人も多いから気を遣うわよね。

性自認や性的指向の話になるともっと取扱いに慎重にならなきゃいけないから大変よ。

少し前までだと性的少数者ってLGBTぐらいに分類されてたみたいだけど、そんな単純な話じゃすまないみたいなのよね。

ここで全てを語るととんでもない時間がかかりそうだから多くは語らないけど、血液型の性格判断と同じように主観で決めつけると痛い目にあうこともあるから気を付けるといいわ。

日本でも以前からそういう特定の性的指向の人が集まる街というかスポットって各地にあったみたいだけど、十年ぐらい前に女装できるお店が増えてそこから一気に一般にも広がった感じがするわ。

ただ、その時に性的少数者じゃない人も入店OKになってることに目を付けて、形だけ女装して「女性には興味ない」ように装って安心させて普通の女性に近づいて毒牙にかけようとする不届き者も一時的に増えたみたいね。

いつの世でも人を騙してどうこうしようっていう輩は後を絶たないから困ったものね。


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