つかもうぜ!龍球!
ナビ子とスキルの効果に関するやり取りを繰り返して判ったのは大体次のようなことよ。
・スキルの名称から逸脱するような効果は発現不可
・スキルの効果は使用者の能力により制限され、レベルによって補正される
・スキルの効果を限定するほどスキルの性能が上がりやすい
一つ目のことは逆に言えば、スキル名称の範疇に収まるような現象なら何でもありってことになるらしいわ。
使用者のイメージの膨らませ方次第で攻撃にも防御にも使えるようで、スキル名称による縛り以外はほぼ制限がないみたい。
となると、私のスキルの「自在」って無敵に近いんじゃないかしら。
なんて言ったって、思いのまま、よ。何でもありだわ。
私だもの、当たり前にして自ずから明らかに言うまでもなく当然のことかもしれないわね。
でも、二つ目、三つ目で世の中そんなに甘くはないってことのようだわ。
例えば、気功ってスキルを持っていたとしてもどこかの戦闘民族の王子みたいにいきなり惑星を破壊できるほどの力は出せないってことね。
私の勝手なイメージだと主人公が最初のかめ〇め波で車を壊したあれぐらいならレベル1でも出せそうな気がするわ。
ほらね、こんな感じ。
「浅草先輩っ。絶対に只者ではないとは思ってはいましたけどまさかの戦闘民族だったなんて…。」
しまった。
つい調子に乗って試し打ちしたところを見られてしまったわ。
仕方ないじゃない。
あの作品は私も大好きでよく弟と一緒に映画にも連れていってもらったのだから。
あれができるかもしれないとなったら、そりゃあ試したくもなるじゃない。
中でも推しは既出の王子で、よく弟をごっこ遊びに付き合わせたものよ。
毎回どんな結末だったかは言うまでもないわね、ってそんな場合じゃないわね。
「先輩、戦闘力…たったの5か…ゴミめって私に向かって言ってください。」
言わないわよ。
しかも、なぜそのセリフなの。
「先輩、もしかしなくても超サイヨ人になれますよね。なってその神々しい姿を是非見せてください♡」
なれないわよ。
なに、私が伊代だからってうまくかけましたみたいなのやめてよ。
それは小学生の時に使い古された男子からの陰口の一つだったりするわよ。
そう、あまりの私の強さに恐れおののいて、そのたびに2になった3になったと言われたものよ。
結構大きな音がして地面にそれなりの大きさの穴を開けてしまったのでわらわらと人が集まってきて騒ぎになってしまったわ。
「なに、騒いでんの?」
「あ、凜。いいところに来たわね。あんた、ちょっと爆死してよ。」
「なんで私が爆死しないといけないのよ。」
「伊代さまの力を更に引き出すためよ、お願い。」
「何のことよ。わけがわからないわよ。」
「久里 凜のことか…くりりんのことかー!を言えば伊代さまの戦闘力が超絶爆上がりするはずよ。」
「だから、何のことよ。りょーちょー、能美先輩に言われて来ました。ご一緒させていただきます一回生の久里 凜です。よろしくお願いします。」
「凜、ご一緒ってどういうこと?羨ましすぎるんだけど。私も凜のおまけでいいから連れてってよ。叶わないならせめて伊代さまの髪の毛一本でもいいからもらってきてね。」
「いやよ、寮長に目をつけられたくないもの。」
くりりん、見どころのある子ね。
もしかしたら地球人で一番強くなれるかもね。
ってふざけている場合じゃないわね。
一旦、周りを落ち着かせて解散させると改めてショートボブのよく似合っている久里 凜と向き合う。
「よろしくね。あなたのこと、なんて呼べばいいかしら。」
「お好きなように呼んでいただいて結構です。久里でも、凜でも。」
「じゃあくりりんで。」
「寮長、もしかしなくてもあの作品好きなんですね。」
「嫌だったらやめるけど。」
「大丈夫です。言われ慣れてるんで。」
「お互い、名前には苦労したのね。」
「多分、寮長ほどじゃないです。」
「…そう。」
「それで、怪物撃退ツアーってことらしいですけど、私でお役に立てますかね。」
なんでそんなことになってるのかしら。
須奈乃には様子を見に行くだけって言ったはずだけど。
ちなみに、ナビ子の作ったリストから確認できる彼女のスキルは「目眩」。
このまま読むなら「めまい」で、彼女が認識しているのも目眩を相手に引き起こすようにする使い方のようね。
私としてはナビ子から得られた情報を試さずにはいられない。
「ねぇ、ちょっとあの技をやってみてほしいんだけど。」
くりりんはその技の詳細は知らなかったようなので、効果と技名とポーズを説明してやってもらう。
「自分ならできるとちゃんとイメージするのよ。絶対成功するはずだから。」
「はぁ…、いきますよ…。太陽拳!」
見事にくりりんの可愛いおでこを中心に眩しい光が溢れ出たわ。
さいあんどこーかよ。
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