スキルの可能性
「マナカナは置いといて、スキルの一覧をこんな感じでまとめてみたんですけど…」
須奈乃が再びタブレットを操作して一覧を表示させる。
「本人に見えているスキルの名称と実際に把握できている効果、それに私の独断と偏見で有用性のランクを松竹梅の三段階で評価してみました。」
松竹梅でランクって…さては須奈乃は回らないお寿司屋さんに入り浸っているのね。
特上、上、並って並んでると並って頼みづらいというかプライドが邪魔するというかそこら辺を配慮してそれぞれ松、竹、梅を割り当てたのが最初なんて言われてるそうよ。
松竹梅って元々は優劣を表す言葉ではなくてどれも等しく縁起の良いものとされていたはずなのに梅の立場がちょっと切ないわね。
詳しく知りたい人は歳寒三友で調べてみるといいわ。
「あら、なんで須奈乃の音痴が梅なのかしら。」
リストを流し見していてちょっと気になったので確認する。
「まぁそんなもんじゃないですか。伊代先輩には全然効果なかったみたいですし。」
「それなりに不快ではあったわよ。危機感を感じなかったのはダンジョンの謎の力でマスターには危害を加えられない、とかかもね。」
「不快、ですか。はぁ…。システム上、下剋上はできないということかもしれないですね。」
「まあ、他のみんなの反応を見る限り破壊力は抜群だったんじゃない。レベルを上げれば効果も上がるっていうなら、音響兵器として十分活躍できると思うわ。」
「はぁ、音響兵器ですか。あんまり人前で歌いたくないんですけどね。」
「極めればジャイ〇ンも真っ青よ。」
「そういう先輩は性格がジャ〇アンですぅ。」
「誉め言葉と受け取っておくわ。で、朝一で言ったことを撤回するみたいだけど、この後怪物の様子を見に行くからメンバーを募ってちょうだい。」
「オードリーの件ですね。結構近所ですもんね。目的は観察だけですか?戦闘を行うことも想定して攻撃できそうなスキルを持った人を連れて行った方がいいですかね。」
「基本的に様子見だけよ。戦闘は可能な限り回避するわ。そういう意味では身を守れるような能力の方がいいわね。」
「じゃあ津雲台の方も含めて人選してみますね。午後まで待てば他の寮の情報も集まってくると思いますけどどうします?」
「そこまでしなくてもいいわ。本当に様子を見に行くだけのつもりだから。」
「とか何とか言って、いつも結局は徹底的にやっちゃうんですけどね。」
「なんか言った?」
「いーえー。まあ、普通に募集したら伊代先輩と同行できるってだけでレイドパーティがいくつもできそうなので、私の方で声かけてみますね。」
「レイドパーティが何なのかはよくわからないけど頼んだわね。出発は十一時で津雲台から来るようならそっちは現地集合でいいわ。」
「了解です。活きのいい肉盾を用意しておきます。」
肉盾って何をさせるつもりなのかしら。
須奈乃…恐ろしい子!
まあいいわ。人選は任せましょう。
私は出発時間までナビ子と話してみることにしたわ。
怪物について教えてもらえることはあるのかしら。
『…。』
漠然とした質問には答えられないのかしら。
ポンコツね。
スマホの音声アシスタントだって何らかの応答ぐらいしてくれるわよ。
『…。』
普通に会話はしてくれないのかしら。
振り返ってみればナビ子が話すのはダンジョンに関する通知がほとんどね。
後は、ダンジョンに関する明確な質問に対する回答のときかしら。
しょうがないわね。
そういえば、須奈乃が作ってたスキルの一覧のようなものってナビ子が作ることはできないのかしら。
『個別のスキルは下僕詳細から参照することができます。』
まさか私に三千人を超える一人ひとり確認させるなんて非効率なことをさせようっていうのかしら。
そう、今や5つの寮生を合わせると下僕の数は三千二百ほどになっているのよ。
データはナビ子が把握できてるんでしょ、だったらインターフェースぐらいちゃちゃっとなんとかしなさいよ。
『…スキル一覧を作成しました。』
やればできるじゃない。
その調子で頼むわよ、と言いたいところだけどスキルの効果というか説明がないじゃない。不十分よ。
『スキルの効果は不定のため把握できません。』
どういうことかしら。
須奈乃は、スキルのレベルが上がると効果も上がるって言ってたからそういうことを指して言ってるのかしら。
『否定します。』
スキルの名称が決まってるなら、その効果も当然決まってるんじゃないのかしら。
『スキルにより発現する効果は名称により制限されますが、変動幅が大きく固定ではありません。』
あら、意外なところから金脈を掘り当てたかしら。
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