コロコロ
「少なくとも私たちに対する攻撃であることは間違いないわね。」
「えー、怖いですぅ。どこが攻めてきているんですか。ミサイル撃ってぼくと遊んでよアピールの強いあのかまってちゃんがいる国…には本気で攻めてくる力はないでしょうし。共和国を名乗ってはいるけど自国民にも外国人にも根本では自由を許さないわけのわからないあの気持ち悪い国ですか。それとも温暖化がもっと進めば広大な氷原の使い道が増して国力も増すぜとかあほなことを考えていそうなあのバカチンがいる国ですか。」
「あんた、そんな風に考えているのね。なかなか面白いわね。でも、敵はそんなんじゃないわ。」
世界には他にも独裁者がいる国はあるけど、独裁者ってどうして歴史から学ばないのかしら。
ろくでもない独裁者って大概自分のために法律とかを変えてまで権力にしがみ付くあからさまに私は独裁者ですってことをやっている本当にどうしようもない奴なのよね。
その国の人たちも権力の集中とかを防ぐために最高責任者の任期とかを決めているはずなのに大人しく唯々諾々と従って法律変えてるんじゃないわよ。全く。
生きてる間に好き勝手やれたとしても死んだ後も奉られている人なんて古代ならまだしも近代ではそうはいないし、どちらかと言うと生前から悪人認定されている方が多いと思うのだけど。
逆に、独裁者を打倒した人こそ英雄視されているわよね。
なるほど、後の英雄を輩出するために自分が悪役を買って出ていると…そんな殊勝なことを考えているわけないわね。
とにかく独裁者の気持ちなんて分かりたくもないし、分かるはずがないわ。
私なら分かるはずだって思ったのは誰かしら。
ちゃっちゃと出てきてそこに直りなさい。
今なら優しく止めを刺してあげるわよ。
「コロナウィルスもかの国の研究所から流出した説がありますけど、今回は怪物化させるような薬物でもばら撒かれたなんてことはないですかね。」
「薬物とかウィルスで怪物化しちゃうようなら地球の生態系ってこんなに複雑にはなってないと思うわよ。DNA組み換えで生み出すようなのも見た目では大きく変わるようなのって聞いたことないし。映画やフィクションの世界じゃあるまいし昨日の動画で見たようなあんな頭を三つにするなんて今の人類の技術じゃとてもできるとは思えないわ。精々が何とかいう酵素を生成する新しい性質を備えましたとか、より甘く美味しくなりましたとかそういうのじゃない。そう言えば、子供の頃に暗闇で光る猫とかちょっと話題にならなかったっけ?」
それにしても新型コロナウィルスのせいで私の描いていた大学生活のほとんどが台無しよ。
都会暮らしがしてみたくて大阪に来たのはいいけど、これでもかというくらい全然満喫できていないわ。
たこ焼きのおいしいあの店もお好み焼きのおいしいあの店にもまだまだ行けていないお店がいっぱいあるのよ。どうしてくれんのよ。
入学式だって一年遅れで行われたものの正直今更って感じであまりアガらなかったわね。
今年の学祭はなんとか実施できたものの昨年は中止になったし、大学に限らず大人数でやるようなイベント事はほとんどダメージを受けた感じよね。
大人たちは残念だったねの一言で片付けようとするけど、片付けられる側はそんなので収まらないんだからね。
まあ、私ぐらいになると基本的に前しか見てないから、今後いくらでも取り返すことはできるというか取り返して余りあるものを手にする予定なんだけどね。
そうは言っても、その時にしかできなかったことってのは確かにあるわけで、各競技の全国大会やインハイ、インカレで活躍することを夢見て頑張ってきた人たちには本当に気の毒だと思うわ。
就職活動では何事もなかったように「学生時代は何に力を入れてましたか」なんて能天気に聞いてくる面接官に殺意を覚えた人も多かったみたいね。
そういうデリカシーのない大人は豆腐の角にでも頭をぶつけて彼岸に行けばいいのだわ。
ちょっと愚痴っぽくなってしまったわね。
「つまり先輩は今回の敵が人知を超えた存在だと言うんですね。」
「そうね、もしかしたらあんたの好きな魔法少女にもなれるかもよ。」
「地球のピンチに妖精の国から使者が訪れて魔法の変身アイテムを託してくれる、憧れの激アツシチュエーションじゃないですか。そうなったら絶対に先輩も一緒に変身しましょうね。是非とも地上波でも放送できるギリギリを攻めるエロいコスチュームでお願いします。それでもって先輩の武器は何と言っても鞭がいいですぅ。」
「未だにあんたの性格が掴みきれないわ。ちゃんと涎拭きなさい。」
「もしくは先輩がダンマスとして特殊な能力に目覚めて私たちを魔改造しちゃうっていう展開もありですね。先輩にあんなところやそんなところまで弄られちゃったらどうしよう。お嫁に行けない体にされちゃったら先輩責任取って私のこと最後まで慰み物として使ってくださいね。」
「どこの悪の組織が改造人間を慰み物として使うのよ。話が進まないじゃないのよ。」
「あと、お薦めは先輩と私が合体して一心同体になるパターンですね。それか入れ替わりもいいなぁ。先輩のカラダに私が入って、私のカラダに入った先輩を…むふふ。」
「はい、そこまでよ。」
「先輩、痛いですぅ。」




