できるかな
表で待っていた安藤さんと面近さんを呼んでこの後のことを確認した。
「特別対策室の方で制圧したところと同じように対応しますので設定だけ確認をお願いいたします。」
ダンジョン特別対策室が封印したところは建物の敷地から出られない行動設定にして他は自由にさせているらしい。
ただ獣人の体では元々の生活を何不自由なくこなすには無理があるので、必要な部分については特別対策室の人が世話をしているんだとか。
ここや、これから制圧する予定のところも一部は地元の人たちの協力を得ながら特別対策室の方で面倒をみることになるそうだ。
「多田さん、バナナがもっと欲しいと言っているのですわ。」
「旦那様のバナナが欲しいとは猿の分際で不届き千万ですね。」
「そっちのバナナなら私も欲しいのですわ。でも、そうではなくて普通に食べるバナナなのですわ。先ほどもらったものが欲しいそうなのですわ。」
おや?
どうやら面近さんには獣人の雰囲気で伝わったというのではなくて、「読心」を使ったようだ。
元々人間だし、発話ができないだけで、言語理解力はあるのだから「読心」が使えても何の不思議もないか。
そうすると「伝心」も使えるのかなと思い、試してみると問題なく会話することができた。
そういうことなら、ここのお世話をすることになるダンジョンマスターの配下にできればいろいろと都合がいいと思ったのだけど、「伝心」を使えるようにするには最低限ダンジョンルーラーになってもらう必要があるわけで、もしかしたら他にも条件を満たす必要があるかもしれなくて、それ以前に一番最初に思った配下の組み換えみたいのができないとどうしようもないわけで。
できたね。
どうやら自分の配下については拠点の序列というか木構造における位置を柔軟に変更することができるようだ。
どうやって変更するかはパソコンでのファイルシステムを想像してフォルダが拠点だと考えてもらえると分かりやすいだろう。
ルートにあたるのがコーポ大家になり、そこから深くなるほど序列が下ということになるわけだ。
ただし、序列を下げることに制限はないが、序列を上げることにはポイントが必要になるみたいだけど、ポイントがたまる一方の私にとっては何ら痛痒を感じないので実質的には組み替え放題だ。
後は、お世話する呼子の拠点の配下拠点数がこの後に制圧するところも含めて16以上にすれば取り敢えずダンジョンルーラーになるわけだが、既に6はあるので特に問題はないだろう。
というのも、私が呼子以前に配下にした怪物化していたところは取り壊しアパートを初めとして10拠点になっているので、足りない分はそこから回すことができるからだ。
というか、私の配下の拠点数が200を超えてるんだけど。
近いうちにまた位階が上がっちゃうんじゃないだろうか。
この後、呼子では4つの拠点を制圧して、各拠点を回っている間に安藤さんに私の思惑を伝えて怪物化した住人達をお世話する体制を整えてもらうことになりました。
そういうことならと、拠点の配下数については特別対策室の方で、呼子だけでなく他の地域も含めて適宜調整してもらうことにもなりました。
できるだけポイントを消費しないで済むように調整はするけど、どうしても足りない時は私の方に組み換えを実行してもらうことがあるかもしれないとすぐに相談してくるところがちゃんと仕事ができる人ですねと感心しちゃいます。頼りになります。
仕事ができない人にもいろいろ種類があると思うのだが、私が困ったのは業務を遂行する能力がない人だ。
その必要とされる能力にもいくつかあるが、私の仕事はコンピュータシステムの開発をやっていたので、基本的に使う人間はプログラマーとなり、当然のようにプログラミング能力が求められる。
このプログラマーというかIT業界にいる人間というのは非常に厄介なのである。
というのも業界自体の歴史が浅いのだが、コンピュータの発展は業界の進歩を待たずに日進月歩の勢いで進んでしまったためにシステム開発できる人間がずっと不足しているのだ。
そのためにプログラミングやシステム設計など見たことも聞いたこともないような未経験者にも門戸を開いて採用しまくるわけだが、失礼ながらちゃんと研修してもまともに使えるようになるのは半分にも満たないような感じだ。
誤解がないように言っておくが、プログラムはそれなりに書けるようにはなるが、仕事として十分な水準に達するのが半分以下だということだ。
私が使える人かどうかを見極めるために使っていたお題はこんな感じだ。
1からnまでの自然数を全て足した結果を求めるプログラムを書け
これを目の前で筆記してもらうのだが、私の期待する回答を書けたものは一人もいなかった。
別に私に使えると思ってもらいたいなどと思わない人もいるだろうが、ちょっと考えてみてはいかがだろう。
念のために言っておくと、なぞなぞの類ではなく、普通のプログラミングの範疇です。
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