一日一回
「拠点をつくりに行く必要がなくなったことは理解できたのですわ。ですけど、私との約束を反故にして何もないというのはあんまりなのですわ。せめて子作りの方だけでもお願いしたいのですわ。」
その話をまだ引っ張るんですね。
子作りはしませんが、せっかく九州にも拠点があることですし、お詫びもかねて晩御飯に何か九州名物でも食べに行きましょうか。
ちなみに拠点一覧はいつの間にか地図上でも場所が確認できるようになっていたので、勢力範囲も把握しやすくなっている。
地図の縮尺も自由自在な上に便利機能もいろいろ使えるので某検索サイトの地図情報にも引けを取らない優れモノだ。
眷属の一覧もそうだったけど、いつの間にか使い勝手が向上していて驚くよね。
一体何がきっかけでユーザーインターフェースが更新されているのか謎過ぎるんだけど。
まさか、「天の声」が自ら使用感を評価して改善してる…なんてことはないよね。
それならダンマスの意志が伝わってる可能性の方が高いかなと思い、ちょっとこんな風にならないかなあとお願いしてみたが叶えられることはなかった。
お願いの仕方が悪かったのか、私にはお願いする資格がないのかは判らないが、今のところ不便な方に変わったものはないのであまり気にしないでいいかな。
「それなら貸切露天風呂があるところで一緒にしっぽりして美味しい物を食べるついでに私もお召し上がりくださいなのですわ。」
大変申し訳ないですが、ご飯以外の部分は謹んでお断りさせていただきます。
「仕方ないのですわ。私を召し上がっていただけないなら、私が多田さんをいただいちゃうのですわ。」
そう言いながら、既に検索していくつも目星を付けていたようで次から次へとおススメの温泉宿が提案されていく。
こう言っては何ですが、せっかくの可愛らしいお顔がすごくだらしないスケベおやじみたいになってますよ。
「自分を置いて二人だけで行けると思ったら大間違いですよ。」
「どうしてなのですわ。元々は二人で行く予定だったのですから、部外者は連れて行く必要はないのですわ。」
「護衛役として旦那様から離れることは考えられません。」
「…。そういうことならついてきても構いませんけど、それなら手配とかはお願いするのですわ。」
何だろう。
なんか変な間があったみたいだったけど。
「了解した。」
この後、意気投合というほどでもないが安藤さんと面近さんは揉めることもなく行き先を決められたようだ。
突然の二人の変化に戸惑いつつも余計な突っ込みをしなくてもよくなったことの方を良しとして受け入れることにした。
「いざ行かん、呼子なのですわ。」
呼子?
聞いたことあるようなないような。
「旦那様、この辺りです。」
安藤さんがスマホの地図上で示しているのは佐賀県の北部の海岸沿いの方だった。
拠点一覧でその辺りの拠点を探すと直ぐ近くにあったので問題なく移動できそうだ。
まだ16時を回ったくらいで夕食の時間にはちょっと早いと思うけどどうしようか。
そろそろ日没時刻も近いみたいで外はそれなりに暗くなりつつある。
そこでひとつ試しておきたいことを思い出したのでやってみたが期待していた結果を得ることはできなかった。
試したのはスキルファームの「採種」だ。
ひとつのスキルからは一日一回だけ「採種」できるということだったので、最初に「目薬」から採種して24時間ぐらい経ったと思うんだけど未だに実行できなかったのだ。
一応、日本標準時で0時を回った時と、今朝起きた時にも試しているのだけど実行できなかったんだよね。
こうなると「天の声」が認識している一日が地球でのそれじゃない可能性も出てくるかもね。
地球の一日じゃないとしたら他に何が考えられるだろうか。
何かしら関係がありそうなところだと真っ先に思いつくのは天王星と月か。
ちなみに自転周期は天王星が17時間15分ぐらいで月が27日と7時間43分ぐらいだ。
天王星の一日ならもう十分に過ぎてるはずだし、月だと「採種」の実用性が絶望的だな。
まあ、ちゃんと24時間経っていない可能性もあるのでもう少し時間が経ったらもう一度試してみようかな。
「ところで呼子って何が美味しいんですか。」
「玄界灘の新鮮な魚介がいろいろあるのですわ。中でもイカが絶品らしいのですわ。」
イカですか。
昼もイカだったけどああいうのとは違ってお刺身とかだろうしまあいいか。イカだけに。
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