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思いの丈をぶつける

「護符」のおかげで防御に関しては駒がなくならない限りほぼ無敵になったわけだが、無駄に駒を減らさないためにも異次元収納を使った方法も練習しておこうと思う。

ということで、肝心なところは濁して安藤さんに練習に付き合ってもらうことにした。


「このボールを旦那様に向けて投げればいいんですね。」


「はい、お願いします。」


2メートルほど離れたところで安藤さんに構えてもらう。


「いきますよ。」


「あ、そういうのなしで。いつ投げるかわからない感じでお願いします。」


次の瞬間、山なりのゆっくりしたボールが飛んでくる。

これなら余裕で異次元収納に収めることができたが、もっと強く思いっきり投げてもらわないと防御の練習にはなりそうにない。


「私にぶつけるつもりで強く投げてください。」


「…判りました。ボールに自分の愛をこれでもかというくらい込めてぶつけてみせます。」


何を込めちゃってくれてるんだろう。

しかし、いくら待ってもボールが投げられてこない。

安藤さんは投げようとはしているようだが、どんどん奇妙な表情になり最後には膝をついてしまった。

どうしたんだろう。大丈夫だろうか。


「旦那様、申し訳ありません。禁忌行動の警告を突破できませんでした。」


あ、そういうことか。

安藤さんがボールをぶつけようとする行為がダンジョンマスターに対する攻撃とみなされてしまったのだろう。

位階序列は絶対で肉体や精神に制御がかかるようになっていて序列上位への敵対行動ができないようになっているんだったっけ。

面近さんの「読心」も尾茂さんの「言霊」も私には無効だし、押江さんのマンションで殴りかかろうとした人も腕を振り抜けなかったしね。

それに加えて、安藤さんは「天の声」が聞こえているので、ボールをぶつけようとする意思を持ち続けている間ずっと「天の声」からの警告が発し続けられたようだ。

事前に気付けたはずなのに、無駄な負担をかけてしまい大変申し訳ないことをした。


「自分の思いの丈をぶつけられなくて不甲斐ないです。」


どこまでも真っ直ぐな人だ、と変なところで感心してしまった。

にしても、こんなボールなら当たったところでちょっと痛いぐらいなのに、こんなことすら制御されてしまうなんて位階序列の仕組みはとんでもないな。


「ちなみに警告ってどんな感じなんですか。」


「旦那様の声が頭の中で繰り返しずっと響いて得も言われぬ悦びでした。癖になりそうです。」


「はい?」


安藤さんに聞こえてる「天の声」は私の声色してるんでしたっけ。

それで苦悶だけというのではない奇妙な表情をしていたということですか。

って、そんなことを聞きたかったのではなくて警告の内容を聞きたかったんですけど。


「最初のうちは『警告。序列上位への敵対行動を中止せよ。』だったのですが、そのうち、身体への負荷が上がってきて最後の方では『敵対行動を中止しない場合、位階が下がります』みたいなことを言っていたかと思います。その頃には少しイキかけていたので記憶が曖昧ですから、もう一度やってみましょうか。」


どうやら独特な嗜好の要素がちょっと多めの人らしい。

禁忌行動の再挑戦はご遠慮いただいたが、大変貴重な情報が得られたかもしれない。

警告が発せられるということは、敵対行為を完遂させることもあり得るということなのだろうか。

位階序列は絶対と言っていた割に強制力には限界があるのだとしたらどこまで許されるのかを確かめた方がいいかもしれない。

友軍相撃フレンドリーファイアみたいな誤射や誤爆とかを防いでくれそうなのはいいかもしれないけど、「俺のことは構わずに攻撃しろ」が完全にできないとすると詰みそうな局面もありそうだ。


後は鉄の意志で敵対を続けると位階が強制的に下げられるということも興味深い。

位階を上げられることは聞いていて、下げることも可能だろうと予想はしていたがそれ以上のことは検証してなかったからね。

位階を下げることで得られる有用性についてちょっと考えてみたが、軍隊とかでの降格みたいな印象が強くて懲罰的なことばかり連想してしまう。

より強制力を強くするということなら、位階を下げることで序列の差を大きくして、精神的にも肉体的にもより大きな負荷をかけられるようにする仕組みなのかもしれない。

位階や序列に関してはもう少し詳しく調べた方がいいかもしれないね。


この後、周囲を警戒していた公安の人に協力してもらって異次元収納による防御の練習をしたのだけど、どうやら実戦で使う分には不十分なことが判っただけのようだ。

ある程度の速さまでは対応できるのだけど、意識外から飛んでくるものには当然のように反応できないので背後とかから襲われればどうしようもないのだ。

そう上手くはいかないなと諦めて、護符による身代わりがどれほどなのかを自分で確かめようとしたが、安藤さんに止められてしまった。

私にボールをぶつけられない安藤さんは公安の人との練習を文字通り指をくわえて見ていることしか出来なかったのだが、公安の人に背を向けてボールをぶつけられ始めると居ても立っても居られなくなったのかボールを奪って公安の人を威嚇しちゃったんだよね。

主人を守るワンコみたいだと思ったのは安藤さんには内緒だ。


ちなみに練習はコーポ大家の前の道路でしていた。

というのも、敷地内で練習していて公安の人が敵意を持ったと認識されるとガーゴイルだらけの取り壊しアパートの地下に転送されちゃうことを危惧したからだ。

でも、よい子は道路で遊んじゃだめだぞ。


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