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しょっちゅう出張

最後のページを見せるためだけに作られたかの写真集は、なし崩し的に返すことも叶わずとなってしまったが二度と開かれることはないだろう。

下手にそこら辺に置いておいて紀香に見られては余計な言い訳をする羽目になると思い、異次元収納へと永久に封印することにした。

今は「実物を御覧に入れますね」と目の前で着替えを始めようとする安藤さんをなんとか思いとどまらせることに成功したところだ。


「旦那様の警棒の使用感を試せなくて残念です。」


安藤さんは一体何を言ってるんだろう。

意外と歯止めが効かない性格なのかもしれない。気を付けよう。


「それでは出かける準備をしましょうか。」


「はい?」


着替えを思いとどまってくれた安藤さんは行動の切り替えが早く、スマホでどこかへ連絡を取ると、私にそのスマホの画面を見せてくる。

テレビ通話状態になっていて相手の方が映っているが、話が見えないのでもう少し説明がほしいところだ。


「話はついてるので、相手に降伏するように言ってください。」


どういうことだろう。

話はついているということなら、ここで時間を取らせるのも申し訳ないので後で聞けばいいか。


「降伏してください。」


『降伏するからあんじょうしてな。』


ん?関西の人かな。

毎度おなじみの「天の声」が降伏が成立したことを告げるので安藤さんにもそれと分かるように頷いてみせる。


「それでは今後の予定は先だって取り決めた方法でご連絡ください。」


安藤さんは通話を切るとようやく説明してくれた。


今の通話相手は大阪に本社がある会社の人で東京の支社に毎週のように出張してるんだとか。

今年の夏ぐらいから出張時に使っていたホテルの宿泊費が高騰しつつあり、上司から出張費を抑制する方法を検討するように言われていたところに拠点間移動が可能な話を聞いて、これは渡りに船とばかりに飛びついたということらしい。

この話を聞いて、コーポ大家は現在すべての部屋が埋まっているが、大家さんが健在の頃から仲介していた不動産会社からも空き室の問い合わせが来ていたことを思い出した。

既に夏前に比べると東京での宿泊費が1.5倍ぐらいになっているところもあって、頻繁に出張を繰り返すような人ならウイークリーマンションとか普通の賃貸を借りた方が安くつきそうだからと空き物件に対する問い合わせが増えていて、いっそのことならと不要になったら売却すればいいと購入してしまう人までいるんだとか。

コロナ禍で本来の宿泊需要は減っていたはずだが、軽症者の宿泊療養などの動きもあり、いろいろ業界としても大変だったことだろう。

何が理由でここまで高騰しているのかは私にはその詳細はとんと判らないが、先月には外国人旅行者の受け入れも解禁されたし、今後益々宿泊費が上がっていくことが懸念されるだろう。


「って、いろいろ訝しいんですけど気のせいでしょうか。」


「な、なんのことでしょう。」


安藤さんの様子から後ろ暗いことがあるのはどうやら間違いないようだ。

私以外なら普段通りのクールな安藤さんで難なく誤魔化せたのかもしれないが、私に対しては心情的な問題から防御が甘くなってしまうようだ。

先の説明からは、安藤さんが一般企業の人にわざわざ仲介する必要があったとはとても感じられないのだから何か隠していると疑うのはしょうがないよね。

改めて聞き出すと本当のところは次のような経緯だったらしい。


まず昨日、副署長さんに拠点間の移動について話した後に事実関係を調べて分かったのが次のようなことだ。

・自由に移動可能なのはダンジョンマスター本人の拠点と配下拠点間

・移動させられるのはダンジョンマスター自身と直系の眷属、および物体

・移動可能な人数、距離に制限は今のところなく、所要時間は一瞬

一つ目の補足として、降伏した側は降伏させた側の拠点と配下拠点に移動することはできないが、反対方向は移動可能ということだ。

つまり、今回の大阪の人にしてみると、自由にコーポ大家に移動してくることはできないが、コーポ大家から自分のアパートかマンションには移動できるってことだ。


まあ、私が適宜大阪から東京へ移動してあげれば、複数日に亘る出張でも日々の仕事を終えた後に日帰り可能になり、宿泊費だけでなく移動交通費まで浮かせられるのは確かに会社として得るものが大きいことは判る。

だからといって、副署長が懸念していた転送に関する情報を流出させたくないという思惑を飛び越えてまで今回のことを実施するには至らないはずだ。

それに利便性を考慮するなら大阪のダンジョンマスターが東京のダンジョンマスターを降伏させた方が自由に行き来できるようになって、私に降伏するよりよっぽどいいはずだ。


安藤さんの話には続きがあった。


「警察庁にもダンジョン特別対策室を本格的に発足することになりましたので、つきましては旦那様には特別顧問としてご就任いただきたく今回の件を謀らせていただきました次第です。」


「はい?」


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