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「何事ですか?」


「ゴミが…そのぉ…消えちゃったの。」


「はい?」


時計を見てみるがいつもの収集車が回ってくる時間にはまだまだ早い時間だ。

ということは誰かが持ち去ったということだろうか。

うちに住む女性陣は皆さん素敵な方なので、変態さんに狙われることもあるかもしれない。

話を聞いてみると、ついさっきゴミを出し、太陽を浴びながら伸びをしてちょっとしてから振り向いたらすでにゴミがなくなってたんだとか。

気まずそうにしているのは、昨日の夜から女性特有の月のものが始まっていて、ゴミの中には使用済みのものが入っていたから、変態さんにどう使われるか心配してるというわけだ。


「うちも芸能人の端くれやから、ストーカーでもおるんかなぁ。朝から気が滅入るわ。」


もしかして、さっき集積所を見た時にゴミがひとつもなかったのは既に誰かが持ち去っていたからなのだろうか、と思い至った。

これは管理人として早急に対策を考えないといけない問題ですね。

ということで、私のゴミをまだ出していなかったので、これを使ってゴミ持ち去りの犯人をおびき寄せることができるかどうか試してみることにした。

犯人がオッサンのゴミに興味を示すとは思えないので、お手数ですが尾茂さんに集積所に持って行っていただいた。

しばらく尾茂さんと二人で物陰から様子を伺っていると、程なくして集積所に近づく影がある。

その影が集積所のゴミに手を伸ばすと瞬く間にゴミ袋が消え去ってしまった。


「多田さん、これってどういうことなん?」


私たちがゴミを消し去ったであろう犯人を取り押さえようとしないのは、それがゴーレムだったからだ。

そう、チラシ男の成れの果ての泥ゴーレムくんだ。

なるほど、そういうことだったのか、とようやく気づいた。


「多田さん、一人で納得してないでうちにもどういうことか教えてよ。」


ゴーレムに敷地内の掃除をさせているのはちょっと前に言ったと思うが、集めたゴミについては特に指示していなかったことに思い至ったのだ。

ゴーレムはちゃんと言いつけを守ってお掃除をしてくれていて、枯れ葉一つも落ちていない完璧なお仕事をこなしてくれていたのに、その集めたゴミは一体どこにいってしまったのかについて全然気にしていなかった。

答えは今見たとおりだ。

恐らく、ゴーレムの身体を構成するものとして取り込んでいるのではないだろうか。

掃除を指示した時に集めたゴミは不要なものと理解して、己の糧にするようになったのかもしれない。


「マジ?ストーカーじゃないんならちょっと安心したけど…えー、アレ取り込んじゃってんのぉ。ちょっと勘弁してほしいんだけど。」


「まあいいじゃないですか。究極のリサイクルだと思えば。」


「多田さん、アレをリサイクルされる女性の身にもなってほしいわ。しかも、それがそこら辺うろついてるんよ。ドン引きするわ。」


それもそうか。

せめて自分の見えないところでリサイクルされて別のものとして戻ってくるならまだしも、身近なところで吸収されて活用されているとなると気にするなって方が無理か。


「見なかったことにして忘れるっていうのは…。」


「できるかっ。」


私としては自治体のゴミ処理量が少しでも減らせるんならゴーレムリサイクルも悪くないと思ったんだけど、ここまで拒絶反応を示されては配慮しなくてはならないだろう。

それに自治体がリサイクルしている瓶や缶、ペットボトルなんかをゴーレムに吸収させると逆に地球に優しくないかもしれない。

あれ?そう言えば昨日は不燃物のゴミの日だったが、ゴミ袋が集積所にあったのを見たような記憶がある。

もしかして、ゴーレムがリサイクル出来るものと出来ないものがあったりするのだろうか。

気になってしまったからには確かめないと気が済まない。

ということで、ゴーレムの前に次々といろいろなものを並べて吸収できるのかどうかを試してみる。

尾茂さんにとってはつまらないことで部屋に戻るかと思ったのだが、意外と食いついてきたので一緒に見ていた。

昨日のお土産のカニの握りをパクつきながらというのが何とも言えませんけどね。


「めっちゃ美味しいっ。幸せの味がする〜。やっぱりカニカマとは違うよねぇ。」


可燃ごみは集積所に何も残っていなかったので、それ系統に吸収できないものはないと思い、不燃系のものを試してみたのだが、今のところペットボトルとかのプラスチック系以外はほぼほぼ吸収していない。

スチールやアルミの空き缶、ガラス瓶など吸収するように促しても、手を伸ばそうとすらしてくれない。


「好き嫌いは許しまへんでって言いたくなっちゃうね。硬いの苦手なんかなぁ。吸収してるのは渋谷区の可燃物ゴミと一緒やね。ゴーレムもちゃんと分別するんかなあ。」


「え?7月からプラスチック系は資源ごみに変わってますよ。もしかして忘れてますか。」


「あ゛。」


「その顔は忘れてる顔ですね。次からはちゃんと分別してくださいね。」


「ひゃい。」


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