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バブみが深くオギャっててぇてぇ

「自分を置いて皆さんはどちらへお出かけされていたんでしょうか。とても悲しいです。」


安藤さんのお顔がとても怖いです。

皆もそれを十分に感じているのか私の背中を圧して矢面に立たせようとします。


「ほら、お父さん。ちゃんとフォローしてっ。」


「じゃあ私、明日も早いからそろそろ失礼するわね。」


「あ、逃げた。くっ、愛を取るべきか、勇気ある撤退をすべきか。」


「なんで自分は置いて行かれたんでしょうか。やはりこんな胸の自分では満足できないということなのでしょうか。」


「そ、そんなことはないですし、そんなことをしてきたわけでもないのですわ。ねぇ、多田さん。」


「あっ、はいっ、決してそのようなことは…」


この後、安藤さんの損ねた機嫌を回復するのにそれなりの時間を要したのだった。


「それでお父さんはダンジョンに寄生された私たちってどうすればいいと思ってるのかしら。」


方向性としてはダンジョンが成長しようとしていることは間違いないと思う。

このまま地球全体を覆うほどのダンジョンになろうとするかもしれないし、ある程度の大きさで成長を止めるかもしれないが、問題は成長して何をしようとしているのかだ。

大きくなって「はい、お終い」になるとはとても思えないので、寧ろそこから何かが始まるのだろう。

それが何かは明確な答えなど当然持ち合わせてはいないが、黙ってなされるがままにされるつもりなど毛頭ない。

ダンジョンが理不尽なことを要求してくるようならどうにかして抗ってみせる。

とは言え、今のところはダンジョンからの具体的な攻撃ってダンジョンに閉じ込められて怪物化させられたことぐらいだから、それに対抗するならやれることは限られてくる。


ダンジョンに関する情報を世間に広めて閉じ込められている人を解放するのと、怪物化しているダンジョンの連携を邪魔するためのダンジョンマスター同士の降伏による連携は継続すればいいが、私たち自身がダンジョンの成長を後押ししすぎないように拠点の数をある程度の規模までに抑えることも意識した方がいいだろう。

規模を抑えることについてはタオタオたちとも連携を取り付ける必要がありそうだが、すでに千を優に超えていると思われるので手遅れかもしれない。

拠点数が16進で位階が上がるとすると私よりもうひとつかふたつ上がっているかもしれないね。

そうか、もしかしたらその位階が上がったことでスキルを付与するような力が得られたのかもしれない。

だとすると、私たちもそこを目指した方がいいのだろうか。


「それでは引き続きテレビ、ラジオによる情報の共有を行うようにする一方で、これを機に暗躍しようとする連中に対抗する方法も検討するのでこちらも何卒ご協力をお願いいたします。それとタオタオには接触できたようですが、今のところ全面的な協力を得られてはいないようです。ですが、敵対されているというわけではなく、今は一線を画しているという感じのようです。」


仰っていることは堅いのだが、この体勢はそろそろどうにかならないだろうか。


「あ、安藤さん、そろそろ普通に座っても構いませんよね。」


「約束が違います。それは膝枕をさらに延長したいという理解でよろしいですね。」


はい、そういうことなんです。

安藤さんに機嫌を直していただくために、私が安藤さんに膝枕されているという状況です。

さらに、少なくとも今日中は安藤さんのことを下の名前で呼ぶことも約束させられてしまいましたが、そう簡単にできるはずもなくいい年こいて恥ずかしがってるわけです。

だって、しかも呼び捨てってことになってるんですよ。


「まったく職権乱用もいいとこよね。」


「多田さんの髪をあんなに撫でまわして羨まし過ぎるのですわ。」


こんなオッサンを膝枕して安藤さんは何が嬉しいのか謎だが、取り敢えずさっき部屋に戻ってきたときのあの怖い表情に戻る方が怖いのでこの状況を受け入れるしかなさそうだ。

後は、極力呼びかけないで済むように専念するしかない。


怪物化した住人を無害化する方法についてはタオタオたちに実績があるので真似できるものなら是非とも真似したいので、うまく情報を聞き出してほしいところだ。

まあ、こっちに関してはほぼイメージは出来ていて後は再現できるかどうかという感じではあるので、政府関係者にも封印技を使えそうな人に頑張ってもらえば何とかなるかもしれない。


「スキルのそんな可能性にまでご自分でたどり着くなんてとても素晴らしいです。いい子いい子ですね。」


「くっ、バブみが深い。」


「このままでは多田さんがオギャってしまうのですわ。でも、それを見たい私もいるのですわ。」


「こんなお父さんの姿が見られるなんて、ありがてぇてぇ。」


もう泣きたいです。


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