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なんてこった

一体どんな魔法が使えるスキルが与えられるかとちょっと期待して配信の行く末を見守っていたのだが、帰着した先はこれまでと同様に無難なスキルの取得で手打ちになった感じだ。

やり取りを聞いてた感じだと高校生男子ぐらいかな。

親や学校、果ては社会にまで不満を募らせ、全部魔法でぶっ壊してやると息巻いていたが、年上のお姉さんにうまく丸めこまれて毒気を抜かれて更生しましたというところだ。


こうなってくると自分たちの能力を見せつけて優位性を感じさせるというより、人生相談のバラエティー番組を見せられている感じが強いんだけど気のせいだろうか。

結局、23時すぎまで50人ぐらいにスキルが与えられていたが、脅威と思えるようなスキルの付与はなかった。

これだと逆に自分たちはそんなに危険じゃないんですよ、安心してくださいねってアピールしているようにも見える。


「安藤さんはどう思われましたか。」


「そうですね。中には狭窄的な考えを持つ者もいたようですが、激昂させることもなくうまく対応していましたね。タオタオが下根大桜だとすると、カウンセリングについて学んでいる学生なのでそういう話術に長けているのも納得できることではあります。」


「へー、そうなんですね。」


下根大桜に関しての調べはきっちりついているようだ。

この調子だと当然のように私たちのことも十分に調査がされていると考えられるので、下手なことを言うといろいろと不具合が生じるかもしれない。

皆にも一応くぎを刺しておいた方がいいかなと思い、「伝心」を使おうとして愕然としてしまった。


「ところで、ステータスが人によって見え方が違うというのは聞いていましたがこんな風だったとは。」


はい?

なんでしょうね。今初めてステータスを見ましたみたいなことを仰っているように聞こえますけど、まさか…。


「気になっていたのは自分の旦那様は多田さんになっておりますが、これはそういうことでよろしいのですか。」


やっぱりそうなんですね。

「伝心」でこの場にいる人たちに注意喚起しようとして眷属一覧に安藤永遠の名前があるんだもの。驚き桃の木山椒の木、ブリキに狸に洗濯機ですよ。


「ぐぬぬ、私はご主人様だというのに…ここでも一歩先を行かれて悲しいやら情けないやら…。」


「右に同じなのですわ。私の何がいけなかったのか誰か教えてほしいのですわ。」


「恵理ちゃん、大丈夫。まだまだ挽回できるよ。諦めたらそこで試合終了よ。」


「奈美さん、多田さんの子供が産みたいのですわ。」


「あんたたち、うるさいわ。コントやりたいなら自分たちの部屋でやってちょうだい。」


紀香の一言でどうにか落ち着きを取り戻すと、改めて安藤さんから話を聞いた。

安藤さんは警察の官舎とかではなく、ご家庭の事情で親御さんと同居を続けていて、その住まいも一軒家であることからステータスはこれまで見えることはなく、もちろんスキルも発現していなかったとのこと。

警察車両を降りてからのいい子いい子のくだりの後、しばらくして「スキルを獲得しました」なんて言われて、もしやと思い確認したところステータスが見えるようになっていたとのこと。


「え?ちょっと待ってください。今なんて仰いましたか。」


「ステータスが見えるようになっていました、と。」


「その前です。」


「スキルを獲得しました、のことでしょうか。」


「そうです。それです。」


「多田さんが教えてくれたのではないですか。それがどうかしたのでしょうか。」


「はい?」


どうやら安藤さんにも「天の声」が聞こえるようだが、なんとそれが私の声とほぼ同じように聞こえたらしい。


「ずるいのですわ。私には聞こえないのに安藤さんには聞こえるなんて、しかも多田さんの声と同じなんて羨ましすぎるのですわ。」


「確かにいやらし過ぎる。あんなことやこんなこと言わせたいわ。」


どう聞き間違えるとそうなるんですか。

そして私の声に何させるつもりですか。

音声合成技術が世に出始めた頃のツールに卑猥な言葉を言わせようみたいなのはどうかやめていただきたい。


「なにそれ。聞こえる人と聞こえない人がいるんだ。そうなの。へー、そうだったんだ。そうならそうと先に言ってよね。」


紀香、まさかのその反応って。


「私も聞こえる人だと思う。」


なんてこった。パンナコッタ。パン残ったんでパンダ食った。なんのこっちゃ。


「紀香さんまで裏切るのですわ。あんまりなのですわ。」


「なんで裏切り者みたいに言われなきゃいけないのよ。」


「それで皆さんが話されているのは、多田さんにいやらしいことを言われたことがあるかどうかってことで合っていますか。」


合っていません。


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