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だってしょうがないじゃない

アンケートの終了を待つ間、改めて獣人と入り乱れて写っている画像を確認して気づいたのは、獣人たちがもれなく衣服を着用していることから誰一人として一度もリスポーンしていないだろうということだ。

一度リスポーンしてしまうとこれまでの経験では衣服は再生されないし、リスポーン後に衣服を改めて着用しようとしても画像のようにパツパツな状態ではまず無理と思われるからだ。

私なんて今もガーゴイルを利用してポイント稼ぎしているため、この一点においてかなり引け目を感じてしまっている。

しかし、私もそれなりに考えて周りの人たちの安全を確保するために行動してきたのだ。

仕方がなかったなんて身勝手な言い訳をするつもりはないし、罪があるというならちゃんと償う覚悟はある。

言い訳と言えば、言い訳にもなっていない言い訳をするとんでもない人の話を知り合いから聞いたことを思い出したよ。


そのとんでもない人っていうのは、とある小さな会社の総務を担当していた社長夫人なのだが、知り合いがその会社に勤めて初めて有給休暇を使用した時に何気なく給与明細を確認して気づいたという。

支給額が減っていることにだ。

ちょっと見てみるとマイナス表示されている謎の金額があるので、何の金額がマイナスされているのか総務に問い合わせると社長夫人から驚きの回答があったそうだ。


「だって当たり前でしょ。皆が働いてる時に休んでるんだからその分のマイナスよ。」


は?話を聞いた時の私も理解に苦しんだが、知り合いも何を言われたかよく判らなかったらしい。

総務担当のくせに有給休暇の意味もちゃんと理解できてないんですかね。

給料が有る休暇だから有給休暇って言うんですよー。

有給休暇を取得したにもかかわらずその分の給料が支払われないのは違法ですよー。

大丈夫ですかー、労働基準監督署とか出るとこに出たら問題になるのは間違いないですよー。

その会社では知り合いが言い出すまで誰も気づいていなかったのか見て見ぬふりをしていたのかは謎だが誰も表立って不平を口にしていなかったみたいだが、これ以降はちゃんと文字通りの有給休暇が成立する運びとなったそうだ。

ちなみに追及された社長夫人は私は悪くないの一点張りで、社長も勘弁してやってくれと口だけ申し訳なさそうにするだけだったとか。

会社を自分のものだと勘違いしてたのだろうが、せめて法令とか知っとくべきは知っておかないとねぇ。

そして、この社長夫妻は他にもやらかした話を聞いているのだが、それはまた機会があれば披露することもあるだろう。


「スキル付与について発表されましたね。」


発表されたのは次のような内容だ。

今日この後21時からスキル付与の様子を生配信する。

23時ごろまで実施予定で付与しきれない分については翌日以降に改めて実施方法等を連絡する。

スキル付与に当選した人には本人に連絡するので自ダンジョン内で待機すること。

ただし、応答しない場合にはスキル付与の権利を失うものとする。

付与するスキルについては希望は聞くが、必ずしも希望通りになるとは限らない。

スキルの使用に際して公益を損なわないように留意すること。

スキルの悪用が発覚した場合は直ちに剝奪し、処罰を与えることもある。


「遠隔でスキルの付与を行うつもりなのでしょうか。」


「他にもいろいろ気になるのですわ。」


連絡自体は「伝心」があるので簡単にできそうだが、ダンジョン内で待機していろということはスキルを使うためと考えられなくもない。

だが、自ダンジョンを指定しているということは転送を使って呼び寄せる、もしくは付与者が行くことを想定しているのかもしれない。

一番気になっているのはどんなスキルを付与するかの希望を聞くというところだ。

希望通りにはならないかもと断ってはいるが、スキルの種のように固定のスキルを付与する方法ではないということだろうか。

スキルガチャも基本的に何が付与されるかわからないので、それだったら希望を聞くなんてことは最初からしないだろうし何よりポイント効率が悪すぎるだろう。

まあ生配信するということだから、実際に見てればいろいろと判ることだろう。


「公益を損なわないようにというのは聞こえはいいが、処罰するとあっては私刑の疑いも考えねばならんかもしれんな。何にしてもいろいろ忙しくなりそうだ。」


確かに。

この配信の様子次第ではスキルのあり方が加速的に変わるかもしれない。

そしてダンジョンとの向き合い方も。

それもしょうがないよね。

というか、これだけ環境の変化があってこんなに安穏と過ごせている方が異常なのかもしれない。


「それじゃあこっちから連絡することもあるかもしれんが、多田君からはいつでも気兼ねなく連絡してくれたまえ。そのうち上の方から謝礼とか公式に連絡がいくだろうが、今日のところは安藤警部を護衛兼財布係としてつけるからワシの驕りで好きなものを食べて来るといい。安藤警部、くれぐれも頼んだぞ。」


副署長さんはこの後いろいろと判明したことなどを上層部に報告して対応を検討するらしい。

私たちは渋谷署を辞去すると、副署長のお財布にダメージを与えすぎないよう程々に贅沢な夕食を求めて渋谷の街をうろつくことになった。


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