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32.間違いの本

 ミラの家族計画のお手伝いでシュルツ家のサロンへひとりで飛んだ。


 今日はミラの排卵予想日だ。サロンには既にミラが待っていた。


「おはようございます。月夜見さま」

「おはよう。ミラ。こうしてみるとミラはもう立派な侯爵家のご夫人なんだね」

「まぁ!月夜見さまったら。私、もうひとり生んでいるのですから・・・子供ではないのですよ」


「そうでしたね。でも相変わらずミラは可愛いからね」

「まぁ!またその様なことを」

 笑いながら診察した。あ!排卵している。


「ミラ。もう排卵していますね。今朝の体温を見せてください」

「こちらです」

「あぁ、そうか。急がないと!今回は間に合わないかも知れません。でもまだ分かりませんから、すぐに性交した方が良いですね。エミールは大丈夫ですか?」

「はい。私は問題ありません」


「では、すぐにグリーンゼリーを挿入しましょう。ミラは今日、このまま昼食時までベッドで安静にすることはできますか?」

「はい。こうなることも考えていましたので大丈夫です」

「では、ミラの寝室に行きましょう」


 ミラの寝室に二人で入った。

「ミラ、下着の下だけ脱いでベッドに入ってください」

 僕は壁に掛けられた絵に視線を向け、ミラの支度を待った。服を脱ぐ衣擦きぬずれの音が聞こえる。

「月夜見さま・・・」


 呼ばれて振り向くと、ミラは服を全て脱ぎ捨て全裸ですぐ目の前に立っていた。

僕はミラの全てを見てしまい固まった。


「はい?・・・うっ!」

 次の瞬間、ミラは僕の頬を両手で押さえキスをした。僕は驚いて動けなかった。

そのまましばらくキスをし、そして彼女はゆっくりと身体を離した。


「ごめんなさい。私。結婚前、月夜見さまに「私の大好きなだって、私の大切なミラを泣かせる様なことがあれば」って、あんな風に言ってもらえたことが嬉しくて、月夜見さまのことが・・・ずっと忘れられなかったのです」

「そう・・・」

「本当にごめんなさい。思い出が欲しかっただけなのです・・・」

 ミラは胸の前に両手を組み、吐き出す様につぶやいた。


 僕は内心、かなり動揺していたけれど、ひとつ深呼吸をして自分を落ち着かせると、

「分かったよ。僕もミラのことが大好きなのは変わらないからね」

「月夜見さま・・・ありがとうございます」

「では、ゼリーを入れようか。横になってこのクッションを腰の下に敷いて」

「はい」


「では膝を立てて足を少し開いてね。落ち着いて・・・力を抜いて。入れるよ」

「うっ!」

「さぁ、終わったよ。このまま、エミールが来るまでこの姿勢のままでいるんだよ」

「はい。分りました」

 僕はシーツをミラに掛けた。


「ではエミールに声を掛けたら僕はこのまま帰るからね」

「あ。月夜見さま。お手を・・・」

 ミラが右手を伸ばして来る。僕はその手を両手で包んで言った。

「ミラ。幸せになるのですよ」

「はい。ありがとうございます」


 僕は部屋を出ると、エミールを呼んで注意事項を伝える。僕の役目は終わり、屋敷を後にした。


 あぁ、この人生のファーストキスを奪われたな・・・でもミラで良かったのかも知れないな・・・




 その夜、僕は夢を見た。


 それは今朝、ミラの部屋で起こったことの続きだった。

ミラにキスをされた僕はそのままベッドに押し倒された。ミラの裸はしっかりと脳裏に焼き付いていた。ストロベリーブロンドの長い美しい髪がベッドに広がり、ルビーの様に輝く瞳に見つめられる。


 ピンク色のきれいな形をした唇。十七歳の若さに白く輝く肌。その美しい肢体したいに魅せられ、吸い込まれる様にミラを抱きしめる。甘い香りに酔い、なすがままに身体を重ねていった。


 そして、そのまま高まっていき果てた。


 だが、果てた瞬間、抱いていたのはミラだったはずが、ステラリアになっていた。

ベッドに横たわるステラリアは天女の様に美しく、そして僕に柔らかく微笑んだ。


 そして眠りから目が覚めた。僕は下半身に何か違和感を覚えた。

ふっと右に視線を移すとお母さんが上体を起こして僕の下半身を見ていた。え?と思い、自分の下半身を見ると、下着は下ろされ、それは天に向けてそそり立っていた。そして、そう。夢精むせいをした後だった。


「お、お母さま・・・僕」

「おはよう。月夜見。いいのよ。男の子はこうなるのでしょう?」

「お母さまに見られるとは・・・ちょっと、恥ずかしいものですね」

「でも、少し早いのではありませんか?」


「そ、そうですね。八歳ですものね。普通は十歳くらいかと。あ!僕は身長がもう十歳くらいに成長しているのでそちらも成熟したのですね」

「そういうことですか」


「でも、そうなると今後はお母さまと一緒のベッドで寝る訳にはいきませんね」

「え?何故ですか?良いではありませんか!」

「そうですか・・・」

 まぁ、自分が自制すれば良いだけかな。お母さんに欲情する訳はない・・・のかな?


「でも、月夜見。こうなるということは、そういう夢を見ていたのでありませんか?相手は誰だったのですか?」

「え?相手ですか、そ、そんなこと言えませんよ」

「あーっ!やっぱりその様な夢を!お願いです。教えてください!」


「しまった!かまをかけたのですね!あーっ。どうしても言わないといけませんか?」

「えぇ!どうしても聞きたいのです!」


「そ、そんなに目をキラキラされてもなぁ・・・まぁ、夢の話ですからね。ステラリアです」

 ミラのことは余計なことを言って問題になるといけないと思って言えなかった。

「まぁ!やっぱりそうなのですね!」

「え?何故、やっぱりなのですか?」


「それは毎日、一日中ずっと一緒に居るのですからね。それにステラリアはどんどん女性らしくなって来ているではありませんか」

「あぁ、まぁ、そうですね。確かに毎日顔を見ていれば、夢にでて来ても不思議ではありませんね」


「そうです。無意識の内に心に残っているのですよ」

「そんなものなのでしょうか?」

「そうですよ。そういう対象として見ているということです。これはステラリアに教えてあげなくては!」


「だ、駄目ですよ!そんなこと!絶対に駄目ですからね」

 僕は思わずお母さんに抱きついてしまった。するとあれがお母さんに当たってしまって、はっとする。


「あ!僕、ちょっとお風呂に入って来ます」

「あ、私も。洗ってあげますよ」

「い、いいですよ。ひとりで洗えます」

 振り切ってお風呂に来たが、結局お母さんも後から入って来た。


 あぁ、もう。この人にはかなわないな。なんて無邪気で純粋なのだろうか。だから愛しているのだけど。まぁ、ここは地球ではないのだからこれくらいはいいのかな。


 それにしてもミラには当分、会えないな。ステラリアにもどんな顔をして会えば良いのだろうか。


 それから小白やアルにご飯をあげて自分たちも朝食を食べた後、部屋にステラリアがやって来た。

「アルメリアさま。月夜見さま。おはようございます」

「おはよう。ステラリア」

「おはよう」

 僕はステラリアの顔をまともに見ることができなかった。


「???」

 ステラリアが不思議そうな顔になった。まずい。普段通りにできないや。どうしよう。まだ朝方の夢からそれ程時間が経っていない。それに最後はステラリアで果てた様なものだから鮮明に思い出してしまうのだ。顔を見るとドキドキしてしまう。


「ステラリア」

「あ!あー、お母さま!」

 僕は焦ってお母さんに抱きつくと耳元で囁いた。


「お母さま。言っては駄目ですよ!」

 お母さんは僕を愛おしそうに抱きしめると、

「大丈夫。言わないわ」

 そうつぶやいた。


 僕はばつが悪そうな顔をしてお母さんから離れるとバルコニーへと逃げた。

「アルメリアさま。月夜見さまはどうされたのですか?」

「いえ、何でもないのよ。気にしないであげて」

「は、はい。そういうことでしたら」


 僕はバルコニーへ出ると空に浮かぶ二つの月を眺めながら考える。なんてことだ。これも全てはミラがいけないんだ。キスなんてするから・・・


はぁー。でもそのもとを正せば、僕が種を蒔いていたのだよな。そうだ。間違いのもとは僕なのだ。ミラは被害者なんだな。


 僕はミラのことは好きだ。だけどそれは妹とか近所の馴染みの年下の女の子って感じだ。恋愛の意味ではない。そう思っていた。違ったのか?本当は愛しているのだろうか?


 ステラリアに対しては僕の侍従として一生仕えるなんてことになったから気に掛けずにはいられないのだ。ある意味、お母さんと同じ様に生涯大切にするべき人だと考えてしまう。そう思っていたはずだ。


 でも、今朝の夢だ。お母さんの言葉にもあった様に、僕は無意識の内にその様な対象として見ていたというのだろうか?


 いや、そんなことはない。ただの夢だ。溜まった精子を吐き出させようと無意識にそういう夢を見せただけなのだろう。


 いずれにしてもこれからは言動に気をつけないと・・・

お読みいただきまして、ありがとうございました!

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