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24.蓮とリリア

 プリムローズ王城を去る時、リリアは僕の手を握ってすぐには離してくれなかった。


「翼お父さま、きっとまた来てくださいね」

「リリア。心配しなくてもまた会えるよ」

「そうよ、リリアちゃん。約束するわ」

「翼お父さま、セシリーお母さま。お待ちしています!」


「では、またね。リリア。伊織兄さま、連絡します」

「うん。翼、ありがとう。お母さま、またいつでもお立ち寄りください」

「えぇ、伊織、クラリス。また来るわね」

 僕とセシリー、詩織お母さまは三人で月の都へと飛んだ。


「シュンッ!」

「あ。お帰りなさいませ。詩織さま、翼さま、セシリーさま」

 サロンに出現すると、数人の侍女たちが声を掛けてきた。

「フィーネ、カミーユ、皆を集めて頂戴」

「かしこまりました」


 三人でクララの淹れたお茶を頂いていると、お父さんとお母さま方が集まって来た。

「詩織、お帰りなさい」

「翼、セシリー。プリムローズはどうでしたか?」

「はい。琴葉お母さま。色々とありました」


「ほう。色々かい?ゆっくり話を聞こうか」

 お父さんはシルヴィーの淹れた珈琲を飲みながら穏やかな表情で言った。


「まず、伊織兄さまの娘のリリアは、僕とセシリーの千五百年前の娘の霞月かつきでした」

「へぇーそうなんだ」

「伊織からは以前から聞いていたのですが、リリアが全くなつかず、余所余所よそよそしくて困っていると」

「そうだね。それは私も聞いていたよ」


「リリアは千五百年前の記憶を夢の中で断片的に見たり、未来の予知夢も見ていた様です。そのせいでリリアにとっては翼と雨月が本当の親ではないかと錯覚していた様です」

「え?リリアは神の力が全く無いと聞いていたのだけど、前世や未来を夢で見る能力を持っていたんだね?」


「はい。でもそれだけではありませんでした。翼とセシリーと一晩過ごしたら、前世の記憶と神の能力を取り戻したのです」

「ほう!では、霞月であったのは本当で、神の能力も復活したのだね?」

「はい。そうなのです。お陰で、前世と今世の区別もはっきりして、伊織とクラリスのことも真の親であると認識できたのです」


「それは良かったね。伊織も喜んだだろう。それで神の力はどれくらいあったのかな?」

「私たちと変わらぬ力を持っています。既に全ての能力が使えています」

「そうか、翼。それはお手柄だったね。ところでどうやってリリアの記憶を取り戻させたのかな?」

「やはり気になりますよね?」

「それはそうさ。後学のために聞かせて欲しいな」


「それは私からお話し差し上げます。朝、私が目覚めたところ、リリアが翼さまに絡みつく様にして眠っていたのです。私はベッドを出て、翼さまを起こしました」


「すると翼さまは、私の声とは反対側に人の気配を感じてそちらへ振り返ったのです。そうしたら丁度、リリアの唇と触れ合って、キスをする形となってしまったのです」


「あぁ・・・それで、リリアは覚醒した・・・」

「はい、その様な成り行きです」

「セシリー偉いわ。ただ、翼がキスをしたと言ってしまったら、翼が変な目で見られるところだったわね」


「はい。桜お母さま」

「セシリー、ありがとう」

「妻として当然のことです」


「それで、めでたしめでたしだね。翼、ありがとう」

「いや、それだけで終わりではなかったのです」

「まだ何かあったのかい?」


「はい。リリアが突然、僕に聞いてきたのです。蓮を知っているかと」

「蓮?どうしてリリアが蓮を知っているのかな?」

「それが・・・予知夢を見た様で、リリアは蓮の一人目の妻になるのだそうです。だから早めに蓮に会わせて欲しいと」


「まるで花音の様だね。予知夢でそこまではっきりと見えていたのか」

「えぇ、蓮の瞳や髪の色、年齢も知っていました」

「ただ妻になるではなく、一人目。というところがまた、凄いね」

「はい。そうなのです」


「私の予知夢より凄いわ。私は夢で見た人の名前や年齢なんて分からなかったから」

「花音お母さま、そうなのですね」


「でも、結婚は確定なのかな?」

「今回、僕とセシリーが来ることも、三年前に予知夢で見て知っていたそうです」

「あぁ、既にリリアの予知夢は実現していたのか・・・」

「はい。リリアは蓮の人となりは知らないが、結婚はすることになると言っていました」


「そうか。それなら早く会わせてしまった方が良いのではないかな?蓮と会えるまでの間、リリアはもやもやしてしまうのだろう?」

「それはそうですね」


「蓮は私の弟子になってここへ毎日、修行をしに来るのだから会わせるのは簡単ね」

「桜、そうだよね。蓮には何も言わず、リリアがたまたまここに遊びに来ていたと言って会わせれば良いのでは?」


「ふふっ、ちょっと楽しみね」

「紗良、まだ、二人がどうなるか分からないのだから、面白がってはいけないよ」

「そうね。ごめんなさい。翼」

「良いのです。紗良お母さま」

「どちらにしても二人はまだ八歳です。いきなり婚約という訳にはいかないでしょう」

「舞依お母さま、それは勿論、そうですね」


「リリアっては、どんな感じの娘なの?」

「それが・・・驚いたのですが、セシリーに娘ができたらこんな感じの子なのかなと思うくらい、雰囲気が似ているのです」

「そうね。それは私もセシリーとリリアが並んで食事をしているのを見た時にそう思ったわ。クラリスの前でそれは言えなかったけれど」


「それを言うなら私も結衣を見た時に私の若い時を見ている様な気がしたわ」

「そうね。幸子と結衣は似ているわ。とっても不思議なことよね」

「えぇ、桜。そしてあなたと新奈もね」


「それで・・・蓮とリリアを会わせるのはいつ頃が良いのでしょう?」

「翼、蓮の修行が少しでも落ち着いた頃にして欲しいわね」

「あぁ、そうですね。リリアが現れて蓮にも何か変化が起きたら、気もそぞろになって、修行に打ち込めなくなるかも知れませんからね」


「理解しておかないといけないのは、リリアは千五百年前の記憶を取り戻したのだから、精神的にはもう子供ではないということよ。一度人生を全うしているのですからね。結婚だって具体的に考えることができるのよ」


「あぁ、琴葉。そうね。そうだったわ。そのことを伊織に話していなかったわ!」

「詩織、後で話しておきなさいね」

「えぇ、そうするわ」

「桜お母さま、蓮とリリアを会わせる時期は、蓮の修行の状況で判断頂ければと思います」

「分かったわ」


「ところで、翼に聞いておきたいのだけど、蓮とリリアを結婚させることについてはどう思っているのかな?」

「え?そ、それは・・・まだそんなことを考える歳でもないですし・・・でも・・・」

「まぁ、そうだろうね。でも、二人が結婚を望むなら反対しないのだろう?」

「そ、そう・・・なりますかね・・・」


「翼は結衣と話して心を決めておきなさいね」

「はい。幸子お母さま」

「私はリリアのお相手が翼の息子ならば、何も心配しないわ」

「詩織お母さま。ありがとうございます」




 月の都で夕食を頂いて遅めの時間に地球へ帰った。子供たちは既に眠ったとのことだったので、帰ってすぐに皆で緊急会議を開いた。葉留にも大事な話だと言って来てもらった。


 まずは、皆にプリムローズ王国で起こったことを全て話した。

「まぁ!またお兄さまの子が転生していたのね!」

「そうなんだよ、葉留。驚いたよ」


「でも、蓮と結婚するって・・・単なる子供の思い付きとは違うのですものね」

「えぇ、霞月はプリムローズで婿を取って、レオミュール公爵家をおこしたのです。子供も男三人、女の子二人も儲けたのですから」

「そうなのね、セシリー。その人生の記憶がありながら、まだ会ってもいない蓮と結婚することを決めているのでしょう?その意思は簡単には変わらないでしょうね」


「望、そうよね。それに蓮が翼の息子だからというのもあるのではないかしら?」

「新奈、それはどういう意味かしら?」

「父親ではあるけれど、リリアは翼を愛しているのよ」

「あぁ、分かるわ。翼とは一年に一度しか会えなかったから、娘たちを余計に恋しくさせたのよね」


「それは、申し訳ないことをしたね・・・」

「翼、だからといって今から会いに行く回数を増やしては駄目よ。歴史が変わってしまうわ」

「そうだね。分かったよ」


「それで?結衣はどう思うの?」

「新奈。急にこんなことになって良く分からないわ。リリアってにも会ったことはないのだしね・・・でも話を聞いていると偶然のことではない様ね。まるで運命だと言われているみたい。最早、私たちに選択の余地はないのではないかしら?」


「それでは、もう結果は出ている様なものね。蓮次第ではあるけれど」

「まぁ、そうだろうね」

「後は、蓮の剣術修行の進捗次第でリリアに会わせる日が決まるのね」

「うん。そこは桜お母さまに任せるよ」


「その時は是非、一緒に行きたいわ」

「そうだね。皆で行こうか」

「お兄さま。必ず私も連れて行ってくださいね!」

「分かったよ。葉留も一緒に行こう」




 それから蓮の剣術の訓練が始まって三か月が経過した。蓮が神星から帰って来ると、しばらくして桜お母さまから念話が入った。


『翼?桜よ。聞こえるかしら?』

『はい。桜お母さま。聞こえます』

『お待たせしたけれど、蓮の修行は一段落したわ』

『蓮の剣術の才能は如何ですか?』


『えぇ、思った通り、今まで指導して来た弟子の中では一番才能があるわ』

『そうですか!それは良かった。ご指導、ありがとうございます』

『良いのよ。私も楽しんでいるわ。ところで、リリアと会わせるならもういつでも良いわよ』

『分かりました。では伊織お兄さまと相談して決めますね』


 その時だった。頭の中に天照さまの声が響いた。

『月夜見の一族の者、聞きなさい。私は天照です』

『うわっ、桜お母さま、聞こえましたか?』

『え、えぇ、聞こえているわ!』


『一週間後の正午、月夜見の家族の者は全員、アスチルベ王国の月の都に集まりなさい。月夜見の妻、子、孫。そして嫁と夫も全員です。良いですね』


『天照さまから呼び掛けられるなんて・・・初めてではないでしょうか?』

『翼、そうね・・・何か起こるのでしょうか?』

『そうですね。何か大きなことがあったか、これから始まるのか・・・』

『ちょっと怖いわね』

『えぇ、こんなことは初めてですから・・・』




 そして一週間後、僕らは神星のお父さんの月の都へ集まった。

僕は異次元空間移動装置付きの船で二往復して家族を運んだ。二度目に庭園に到着した時には、既に親戚一同が集まっていた。


 お父さんの妻九名、その子供たちが三十四名、その配偶者が四十一名、その子供たちに至っては八十名近くに及んだ。総勢百六十名程だ。


 大ホールには各家族毎のテーブルが用意され、わいわいと話をしていた。

正午に集められたので昼食が用意され、月の都の全侍女と従業員と僕の月の都からもアンドロイドのメイドを全員連れて来て給仕を担当してもらった。


 食事の給仕が終わり、皆が談笑しながら食事を開始すると、天照さまが壇上に姿を現した。


「シュンッ!」


「あ!あれが天照さまなの?うわっぷ!」

 誰かの子供が大きな声を出し、口をふさがれていた。


『皆の者、天照です。私の姿を初めて見る者も多いことでしょう。今日はよく集まりました』


『それにしても壮観ですね。月夜見の一族もここまで増えていたのですね・・・月夜見。こちらへ来なさい』

『はい。天照さま』

「シュンッ!」

 お父さんは天照さまに呼ばれて壇上へ飛んだ。


『神星は今世の月夜見の活躍により、文化的に大きく発展し、人口も増えた。また、月夜見の子である、翼のお陰でこの世界のいしずえが創られたことは皆も知っておるだろう』


『翼もここへ来なさい』

『はい。天照さま』

「シュンッ!」


『翼は、オービタルリングと低軌道エレベーターを創り出し、更に異次元空間移動装置も創った。これにより、私があらゆる時代に飛び、新しい世界を見出し、地球と同じ条件に合った天体を探し出して地球化することに成功した。それがこの神星です』


『そして月夜見と翼は地球の改革を行い、人間を導き戦争を止めさせ、環境破壊を食い止めました。素晴らしい功績です』


『しかしながら、地球の人口は増え過ぎ、最近では減って来ているとは言え、まだ多過ぎるのが現状です』


『そして、私は今、三つ目の世界を創り出しました。地球で増えた人間は最多の時で八十億人居りました。しかし、地球で自然環境を破壊せずに人間の営みをまかなうことができるのはせいぜい、二十億人程度です』


『だが、一度増えてしまった魂は減らすことができないのです。そこで今後、地球では上限を二十億人とし、神星と三つ目の星でそれぞれ二十億人ずつ賄うのです』


『残り二十億人の内、十億人は転生し、生まれ変わるのを待つ者たちとなります。あとの十億人は畜生ちくしょうへ戻します。いわゆる極悪人という人間たちです』


『今日、月夜見の一族に集まってもらったのは、新しくできる三つ目の星を五百年に渡って守護していく者を発表するためです』


 そう言いながら天照さまはお父さんと僕の顔を見た。お父さんはたまらず聞き返した。

『天照さま。それはこの中に居るということでしょうか?』

『居ますよ』

 天照さまは微笑みながら答えた。僕は背筋に寒いものを感じ、声も出せずにただ立ち尽くした。


『三つ目の星を任せるのは、翼の息子。蓮です』

「おぉーっ!」

「蓮?蓮ですって?」


 なんだって?蓮が新しい星の守護者になる?僕は自分の頭の中でつぶやいたのだが、実際には何が何だか分かっていなかった。思考は完全に止まってしまった。


『見つかった三つ目の星は、これからテラフォーミングして行きます。それには月夜見と翼も同行して頂きます。勿論、蓮もですよ』


『蓮。ここへ来なさい』

『はい。天照さま』

「シュンッ!」


『蓮、あなたには会わせておきたい者が居ます』

 天照さまはそう言うと、ホールのどこかへ向かって手を差し出し、指をくいっと動かして自分の方へ招く様な動きをした。


「シュンッ!」

「おぉーっ!」


 天照さまから転移させられ、壇上へ出現したのはリリアだった。


『こちらの娘は月夜見と詩織の息子である伊織の子、リリアです』

「リリア?」

「蓮さま。初めまして。リリア プリムローズと申します」

「あ、あぁ、僕は九十九 蓮です。初めまして」


 二人は壇上で向かい合い、一度目が合うと、そこから身動きひとつせずに見つめ合ったままとなった。二人の背丈は、ほぼ同じで少しだけ蓮の方が大きい。


『蓮、リリアを見てどう思いますか?』

「はい。素敵な女性だと思います・・・」

「ヒュー!蓮、カッコイイぞ!」

「よく言った!男だな!」


『リリア。蓮を見てどう思いましたか?』

「はい。とても素敵なお方です」

『では、蓮。どうしますか?』

「はい。リリアさまを私の妻に迎えたいと存じます」


『リリアはどうですか?』

「はい。蓮さまのおそばで生涯尽くしたいと存じます」

『よろしい。ではここに二人の結婚を認めます』


「うわーっ!」

「おめでとう!蓮!リリア!」

「蓮、カッコイイ!」

「リリアも素敵!」


 え?何?もしかして今のって結婚宣言?八歳で結婚してしまったの?

僕の頭は増々混乱した。変な汗は出て来るのだが言葉は出てこない。引きつった僕の表情を見て、お父さんが天照さまに問い掛ける。


『天照さま。翼が状況を飲み込めていない様です。今のは蓮とリリアが結婚したということでよろしいのでしょうか?』

『えぇ、その通りです。翼は不服ですか?』

『え?い、いや、その・・・ふ、不服など・・・ありません』

『それでは良いではありませんか』


『蓮。良いですか。三つ目の星でもオービタルリングと低軌道エレベーターは設置します。地磁気を発生させ、五百年に渡ってそれを維持させることを蓮と蓮の妻たちのお役目とします』


『つまり、蓮。あと七人の妻を探して来なさい。リリアに引き合わせたことは、お役目に就くご褒美だと思いなさい』

『はい。あと七人ですね。なるべく早く探します!』

『よろしい』


『では、三つ目の星へ行く時は、月夜見、翼、蓮、リリアに連絡します』


『私はこれで失礼します。皆はうたげを楽しむが良い。では』

「シュンッ!」


「あぁ!消えてしまわれた!」

「翼、地球は放っておいてもあと数百年のうちに人口は激減していくだろう。神星と第三の星はその受け皿となるのだね」


「翼と翼の妻たち、それにリリアには、この星で初めに国をおこした記憶がある。それで、蓮とリリアに託したのだろう」

「・・・」

「翼、大丈夫かい?」

「え、えぇ・・・ちょっと、驚いてしまって・・・」


「それは私も同じだよ。だが、私が神星を、翼が地球を、そして第三の星を蓮が守護していくことは悪いことではないと思うよ」

「そうですね」


「お父さま、結衣が心配ですので話をしてきます」

「そうだね。付いていてあげなさい。蓮はリリアを連れて一度、結衣のところへ行きなさい」

「はい。リリア。お母さまや兄弟を紹介するよ」

「はい。蓮さま」


 僕は二人と共に結衣の居る席へと瞬間移動した。

「シュンッ!」


「翼!蓮!」

「結衣。驚いたね。大丈夫かい?」

「えぇ、本当に驚いたわ。でも天照さまよりたまわるお役目なのですから・・・」

「お母さま。心配しないでください。お父さま達やお爺さま達と同じお役目です。しっかりやってみせます」

「蓮・・・本当にしっかりしてきたわね。剣術の修行のせいかしら」


「お母さま。こちらがリリアです」

「初めてお目に掛かります。リリア プリムローズと申します。お義母さま、以後、よろしくお願いいたします」

「初めまして。私は蓮の母で九十九 結衣と申します。千五百年前はあなたのお母さまの雨月の姉、月代つきしろだったのよ。リリア。これからよろしくね」

「はい、お義母さま」


「さて、これからリリアをどうしようか?」

「第三の星へ行くのは、まだ先のことだと思います。それまではプリムローズと地球を行き来して、地球のことを学びたいと存じます」

「リリア。そうなると見えていたのかい?」

「いいえ、私が知っていたのは蓮さまと結婚することだけです」


「そうか。第三の星で国を興す時、どの様な文化レベルで始めるかにもよるけれど、リリアに地球の文化も知っていてもらわないといけないね」

「それでは伊織兄さまと相談しておこう。蓮、伊織兄さまとクラリス義姉さまに挨拶をしておこうか」

「はい」


 僕らはリリアの案内で伊織兄さんの席へ行った。

「翼!こういうことだったのだね」

「はい。その様です。大変、驚きました」


「初めてお目に掛かります。私は蓮です」

「うん。君が蓮か。リリアの父、伊織 プリムローズです。こちらは妻のクラリスと息子のバティストだよ」

「初めてお目に掛かります。私はリリアの母でクラリス プリムローズと申します」

「よろしくお願いいたします」


「バティスト プリムローズと申します。蓮さま、リリアをよろしくお願いいたします」

「はい。かしこまりました」


「初めてお目に掛かります。私は蓮の母で九十九 結衣と申します」

「よろしくお願いいたします」


「伊織兄さま。まだ第三の星へ行く時期が決まった訳ではありませんし、すぐでもないと思うのです。リリアには何度か地球へ来て頂いて、地球の文化を学んでもらおうと思うのですが」

「そうだね。それは必要なことだろう。ずっとでなければ構わないよ」


「分りました。予定を組みましたらお知らせいたします」

「うん。分かった。リリア。しっかり学んで来るのだよ」

「はい。お父さま」


「やっと私を母と認識してくれたばかりだというのに・・・リリアは別の世界へ行ってしまうのですね・・・」

「クラリス。天照さまからお役目を賜ったんだ。喜ばしいことだよ」

「そうですね。幸せなことだと思わなければなりませんね」


「リリア。まだ時間はあるからね。お父さまとお母さまとの時間を大切にね」

「はい。翼お父さま。ありがとうございます」




 月夜見お父さんの一族が初めて一同に会した会合は終了し、参加者は三々五々、月の都を後にした。月夜見お父さんとお母さまたちはサロンで一息つきながら話していた。


「それにしても・・・またしても翼なのですね。今度は息子の蓮ですか」

「桜、そうだね。やはり、天照さまから直接生まれた瑞希の息子は特別なのだろうか?」

「そうとしか考えられませんね。そう言えば、翼の前世って明らかになっていませんよね?」

「そうね。琴葉。でも神であったことは間違いないのよね?」


「そうだね。この中で千五百年前の記憶で翼を自分の子だと感じている人はいる?」

「・・・」

「いないか。でも確かなことは、千五百年前の世界で私たちの子が亡くなるまでの約百年位の間に翼は生まれていないということだね」


「あぁ、そうですね。生まれていたら天照さまが翼を行かせる訳がありません」

「そうだね、舞依。だから千年前か五百年前の神の子なのだろうね」




 地球に戻った僕は、サロンに集まり皆で蓮を囲んだ。

「蓮、リリアのこと、本当に良いのだね?」

「勿論です」

「リリアのどこが気に入ったの?」

「そうですね。瞳と髪の色・・・でしょうか?」


「え?それじゃあ、月夜見さまと一緒じゃない!」

「あぁ、そう言えば、お爺さまの好みなのでしたね」

「ということは・・・この中で一番タイプなのはセシリーってことかしら、蓮?」

「え?あ。そうですね。そう思っていました」


「まぁ!蓮!ませているわね!」

「セシリー、タイプだって!どう?」

「え?それは・・・嬉しいですね・・・」


「セシリーとリリアは、瞳と髪の色だけでなくて、雰囲気とかも本当の親子みたいに似ていると思うんだ。だからセシリーがタイプなら、リリアのことも好きになってもおかしくはないかな?」


「蓮、リリアがここへ勉強に来る時以外は、蓮が神星へ剣術の修行へ行く時に月の都へリリアに来てもらえばいつでも会えるよ」

「リリアに来てもらっても良いのですか?」

「勿論、構わないよ。お互いにもっと知り合うべきでしょう?」

「はい。お父さま!」


 二つ目の異世界か・・・また、大変なことになったものだな・・・

お読みいただきまして、ありがとうございました!

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