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16.嫁探しの終わり

 アンジェラとジェイミーを降ろしてセシリーの実家へ飛んだ。


 エディンバラ城の上空から数分で到着した。流石に公爵家の家は最早、城というべき大きさと広さだった。この大きな船が敷地に入り切ってしまうのだから。


「セシリー、とても大きな庭園があるのだね。流石、公爵家だね」

「歴史だけは立派なのですが、建物はとても古いのです。設備も古いから冬は少し寒いのです」

「そうか、それは仕方がないね。おいそれと建て替えできるものでもないものね」

「そうなのです」


 船を庭園の上に停めると船の翼の上へ二人で出た。すると両親と使用人と思われる数人が玄関前で立ち並び、こちらを見上げていた。


 僕らは手を繋いで庭園に降り立つと、ご両親の前までゆっくりと歩いた。

「エヴァンス家の結婚式以来で御座います。ご挨拶させて頂くのは初めてとなります。私はセシリーの父親、セオドア オースティンに御座います。こちらは妻のレベッカです」

「レベッカ オースティンで御座います。お会いできましたこと、光栄に存じます」


「アンジェラとの結婚式でお見掛けしました。天照 翼で御座います。急な訪問をお許しください」

「さぁ、どうぞ、お入りください」

「ありがとう御座います」


 サロンに案内され、使用人が紅茶を淹れてくれた。

「天照さま、今日はセシリーを学校へ迎えに行かれたとのこと、如何されたのでしょうか?」

「はい。もうご存じだと思いますが、私はあと一人、妻に迎えなければならない女性を探していたのです。つい最近、その条件を新しいものに差し替えたところでした」


「はい。存じております。確かエヴァンス家のアンジェラ嬢もその条件に合致していたかと」

「えぇ、その最後のひとりが、セシリーだったのです」

「セシリーが神さまの妻に・・・本当なので御座いますか?」

「た、確かに、新しい条件に合っているとは思っていたのですが・・・」

 お母さんもお父さんも驚いている。


 セシリーのお父さんは細身でヘーゼルの瞳だ。ライトブラウンと言っても良い。髪色も今はブラウンに見える。若い時はブロンドだったのではなかろうか。お母さんも似た感じだ。ヘーゼルの瞳に少しくすんだブロンドの髪をしている。二人とも顔のパーツが整っていて美男美女だ。


 恐らく、セシリーはお父さんに似たのだろう。きっと沢山食べても太らない体質なのだろうな。


「はい。お見受けしたところご両親ともに髪はブロンド。瞳の色はヘーゼルでしょうか。ですが、セシリーの髪や瞳は赤い。これは地球の人間ではそうあることではありません」

「では、生まれながらにセシリーは女神だったと?」

「えぇ、その能力が体質に影響を与えているものと思われます」

「本当にセシリーは女神なのですか?」


「お父さま、お母さま。見ていてください」

 セシリーはソファから立ち上がると身体を宙に浮かせた。

「おぉ!」

「まぁ!」

「お嬢さま!」

 ご両親だけでなく、使用人の女性も思わず声を上げた。


「シュンッ!」

「あ!消えた!」


「シュンッ!」

「おぉ!セシリー!」

「如何ですか?既に私には神の能力が発現しました。こうして宙に浮くことも、瞬間移動もできるのです」


「セシリー・・・」

 お父さんが絶句している。相当にショックだった様だ。

「お父さま。そして私は人の心を読むこともできるのです。今お父さまは「これでもうオースティン家の跡取りを取ることができなくなる。オースティン公爵家は私の代で終わりだ」そうお考えになりましたね」


「あ、あ・・・いや、セシリー、それは・・・」

「オースティン殿、私は神星からやって来ました。日本で暮らしていますが、正式な戸籍は無かったのです。それで日本人の妻と結婚し、その妻の婿に入りやっと正式な戸籍を手に入れました」


「地球では日本でもスコットランドでも一夫多妻制はありません。アンジェラと結婚はしましたが、スコットランドの戸籍上では結婚しておりません。ですから、私とアンジェラの息子ができたら、エヴァンス家の戸籍に入れる予定なのです」

「え?それでは?」


「はい。セシリーとも結婚式は挙げますが、戸籍上では結婚はできません。エヴァンス家と同じ様に私たちの子供は、オースティン公爵家の者となるのです」

「本当で御座いますか!」

「はい。本当です。それも神の子がオースティン公爵家の後継者となるのです。如何ですか?」

「おぉ・・・神よ!感謝します!」


「何てことでしょう?私たちの孫がこの家を守って行ってくれるのですね?それも神の子孫が・・・」

 セシリーのお母さんは大粒の涙をこぼしている。使用人たちも皆、泣いている。


 由緒正しい家に生まれるということは、大変な重圧の中で生きるということなのだろうな。僕の子供たちは大丈夫だろうか・・・あ。お兄さまたちの子は、皆、王子や王女なのだった。これも宿命なのだろうな。


「それで今後なのですが、お父さま。私、明日から月の都で翼さまと暮らします」

「え?セシリー。まだ結婚していないどころか、学校だって卒業していないじゃない!」

「私はもう瞬間移動ができるのです。学校だって月の都だって、その扉を開ける様に移動することができるのですよ。もうどこで暮らしても同じなのです」


「では、月の都から学校へ毎日、瞬間移動して通うのね?」

「えぇ、だから学校帰りにここへ寄ることも簡単なの。お母さまがちょっと来てくれない?って電話くれたら、次の瞬間に目の前に現れることができるのですよ」

「まぁ!何てこと・・・想像もできないわ」

「アンジェラも大学の研究室に行くついでによく、実家へ寄っていますよ」


「それならば、いつでも会いたい時に会えるってことなのね?」

「えぇ、そうです」

「では明日、引っ越ししてしまうの?」

「お母さま。既に月の都には私の部屋があって、全て用意されているのです。ここから持って行くものはほとんどないの。部屋はそのままにしておきたいのだけど良いかしら?」

「それは勿論、構わないわ」


「結婚式は学校を卒業してすぐに執り行いたいと思っています」

「あぁ、エヴァンス家の結婚式は素晴らしかったわね・・・」

「はい。オースティン家のキルトを着させて頂ければと思っています」

「おぉ!我が公爵家のキルトを着て頂けるのですか!」

「まぁ!素敵!私、エヴァンス家の結婚式の翼さまのお姿が忘れられないの・・・」


「お母さま!翼さまは私の旦那さまなのですよ!」

「あら、そうだったわね。ごめんなさい・・・」


「お父さま、お母さま、では私と翼さまの結婚を、お許し頂けるのですね?」

「勿論だよ。否定する理由が見つからないよ」

「セシリーは心から翼さまとの結婚を望んでいるのよね?」

「はい。私は翼さまの妻になります」


「おめでとう!セシリー。幸せになるのだよ」

「セシリーおめでとう。良かったわ」

「ありがとう御座います。お父さま、お母さま」

「結婚をお許し頂き、ありがとう御座います」


「ひとつだけ、お伝えしておかなければならないことが御座います」

「あ!セシリーの寿命のことですか?」

「もう、ご存じなのですね。私たちの寿命は五百年なのです。私が作った地磁気の発生装置に力を与え、五百年に渡って地球の環境を守り続ける。それが私たちのお役目なのです」


「その様な崇高なお役目を私たちの娘が全うできるのか心配ではありますが・・・」

「セシリーなら大丈夫です」

「お父さま、お母さま、心配しないで。翼さまと一緒なのですから大丈夫です」

「そうだな・・・翼さま。私たちの娘を、どうかよろしくお願いいたします」

「かしこまりました。今日はありがとう御座いました」


「あ。そうだ。セシリー。今の学校は来年卒業だよね?大学はどうするんだい?」

「そうだわ。セシリーは植物の研究をしたいと前から言っていたわよね?」

「はい。今ではその想いは更に強くなっています。地磁気が確保され、地球の緑が再び戻る時、どんな手法を用いれば、早く元の環境を取り戻すことができるのかを学びたいのです」


「セシリー、それはどこの大学で学ぶつもりなのかな?」

「はい。やはり、エディンバラ大学が良いかと思っています」

「うん。そうか。それは是非、取り組んでもらいたいな」

「ありがとう御座います。翼さま」


「では、今夜はそろそろおいとましようかな。明日、月の都で待っているよ。セシリー」

「はい。ありがとう御座います。翼さま」


 僕はひとりで船に乗るとオースティン公爵家の上空を一度旋回し、月の都へ飛んだ。




 その夜、オースティン家ではセシリーと両親の三人で夕食を共にした。

「セシリー。今日は本当に驚いたわ」

「あぁ、本当だ。私はこれでこの公爵家も私の代で終わりだと本気で覚悟したよ」

「一番驚いているのは私です。突然、あの白い船が学校に降りて来て、ジェイミーに用があるのだと思ったら私に会いに来たっておっしゃるのだもの」


「そうね。予想もしていないことでさぞかし驚いたでしょうね」

「えぇ、これで学校の人達にも知られてしまったから、きっと月曜日は大変なことになるわ」

「そうね。セオドア。警備の人をセシリーに付けるべきではないかしら?」

「おぉ、そうだな。すぐに手配しよう」


「お父さま。警備ならもう居るのよ。月の都には既に私の専属のメイドが居るの。そのメイドが一緒に学校へ行ってくれることになっているの」

「メイドが?それでは警備にならないだろう?」


「お父さま。メイドとは言っても人間ではないの。アンドロイドなのよ。恐らく、私たちに五百年に渡って仕える必要があるから人間では駄目なのよ。それでアンドロイドだから、人間よりも何倍も強いのですって」


「そうなのか!それは凄いことだな」

「月曜日の帰りに連れて来るわ。会っておきたいでしょう?」

「え?でも人間ではないのよね?怖いわ」

「それがね。お母さま、とても美しい女性なの」

「女性?それで強いの?」


「だからお母さま。人間ではないのよ。でも本人に会ったら余計に混乱するかも知れないわね」

「それ程にか弱く、美しい女性に見えるってことだね?」

「えぇ、お父さま。そうなのです。料理や洗濯、掃除に育児もできるそうなのです。だから見た目は子供が怖がらない様に優しく美しい女性の見た目に作ってあるのだと思うわ」


「なるほど・・・月曜日に会えるのだね。楽しみだな」

「えぇ、彼女は桃っていうのよ」

「モモ?ふーん。変わった名前だね」

「桃は英語でピーチっていう意味よ。日本語なの」

「ピーチ!」


「セシリー、あなた今日一日で凄く変わったわね」

「私が?」

「そうだよ。セシリーはいつも自分から話をしないし、そんな明るい表情を見たのは久しぶりな気がするよ」

「あぁ・・・そうですね。これは隠しておくことではありませんね」


「お父さま、お母さま。私は千五百年前、月夜見さまの娘だったのです」

「え?月夜見さまって、翼さまのお父さまのこと?」

「えぇ。そうです。月夜見さまと八人の女神さまは、始祖の天照さまによって生み出されました。私はその娘だったのです」


「そして、翼さまと結婚し日本から神星へ渡りました。私は今も続くプリムローズ王国という国の初代女王となり、翼さまと子をもうけ、国を治めていたのです」

「そ、それらの記憶が全てあると言うのかい?」

「はい。今日、翼さまと再び出逢うことで、それらの記憶と神の能力を取り戻したのです」


「そうか・・・女王として国を治め、子を産み育てた自信がセシリーを変えたのだね」

「そうですね。今はこうして英語で話していますが、月の都では日本語で話しているのですよ」

「そう言えば、神星での言語は全て日本語なのかい?」

「えぇ、そうです。神星の全ての国の言語は日本語です」


「何故、日本語なんだい?」

「それは、翼さまが創った世界だからです」

「翼さまが創った?え?どういうことだい?翼さまは一体、何年生きているんだ?」

「翼さまは二十六歳です。それ以上長くは生きていません。五百歳までは生きると思いますが」


「え?セシリー。分からないわ」

「あぁ、そうですね。これは極秘です。他人に話したら命は無いと思ってください」

「え?命は無い・・・」

「翼さまは、異次元空間移動装置を創ったのです」

「異次元空間移動装置?」


「はい。いわゆるタイムマシンです。そのタイムマシンで千五百年前の世界へ行き、私たち八人の姉妹と結婚したのです」


「そして、天照さまが創り出した異世界の神星にオービタルリングと低軌道エレベーター、地磁気の発生装置を設置してテラフォーミングし、私たちが移住したのです」


「ですから、先程ここに居た翼さまが、それらの機械を生み出し、星を創り、私たちに子を与え、文化と言葉を教え、二十九の国を興したのです」


「し、信じられない・・・そ、そんなこと・・・」

「う、嘘みたいね・・・」

「そうですね。信じられないでしょう?私も千五百年前の世界ではとても驚いたのです。千五百年先の未来から、突如現れた翼さまと結婚し、神星で女王となったのですから」


「翼さまはとてつもないお方だったのだね・・・」

「そんなお方の妻が、セシリーに務まるのかしら?」

「お母さま。翼さまの妻は二度目です。それに妻は私だけではないのです。千五百年前の世界でも私は末娘だったから、姉たちに沢山教えてもらっていたのです。今回も私は一番年下で最後の妻ですから」


「そうね。それなら何とかなりそうね」

「はい。大丈夫です。それに翼さまは本当にお優しいお方なのですよ」

「それは、分かるわ。いつも私たち人間のためを思って行動してくださっているのだもの。その優しさが随所に表れているわ」

「全く、その通りだね」


 セシリーは夜遅くまで、両親と楽しく語り合った。




 翌日の日曜日。セシリーは身の回りのものと学校に必要なものだけを持って、月の都へ転移して来た。

「あら、セシリー!ようこそ月の都へ。荷物はそれだけなの?」

「はい。望お姉さま。学校の制服があれば私服はそれ程必要ではありませんから」

「そうね。ここにも衣装は沢山あるわ。でもまだサイズが合わないものもあるかしらね」

「必要なものを買いに行かない?」


「よろしいのですか?」

「えぇ、東京の地下にショッピングセンターがあるの。そこで何でも揃うのよ」

「あの・・・私の部屋に用意された衣装は、私がこれから急成長した後のサイズなのですよね?」

「えぇ、そうだと思うわ」


「あぁ・・・そうなのですね・・・」

「どうしたの?そんなに悲しそうな顔をして」

「い、いえ、下着のサイズが今と変わっていなかったのです・・・」

「あ。そ、そうなのね・・・でも良いじゃない。翼はそんなこと気にしないわ」


「そうでしょうか・・・アンジェラお姉さまや結衣お姉さまを見ていると私なんて子供の様です」

「セシリー。千五百年前の世界を思い出して?翼はあの世界で多くの巫女に子を授けたの。巫女のほとんどは、今のあなたの様にとても細い体形の女性が多かったと思わない?」

「あ!え、えぇ、確かに・・・そうでした」


「そう。昔は栄養状態が良くなかったから当たり前なの。それに分かっているでしょう?あの千五百年前の翼は、今の翼なのよ?」

「・・・そうですね」

「千五百年前、翼は雨月の体形のことを何か言ったかしら?」

「い、いいえ、何も。いつでも私を気遣ってくださり、優しく接してくださいました」


「えぇ、そうね。皆そう言っているわ。そんな翼が今のあなたの体形のことで何か言うと思って?」

「そんなことありません。絶対に」

「えぇ、そうね。翼はそういう人よ。安心して良いわ」

「はい。ありがとう御座います。望お姉さま」


「セシリー。私はあなたの姉でもあるのだから。もっと砕けた口調で話してもらって構わないわ。気を使わないでね」

「はい。お姉さま」


「それで、翼さまは?」

「今は研究室に居るわ。セシリーが見つかったから地磁気の発生装置の最終調整と確認をしているの」

「あぁ、それがありましたね。一刻も早く、地磁気を元に戻さないと」

「えぇ、それにはあなたの身体が早く万全にならないとね」


「あ。このままでは、やはり駄目なのでしょうか?」

「その様ね。百パーセントの力を発揮させるには神の能力を全て引き出せないといけないの。あなたはまず、身長だけでも皆と同じくらいに成長しないとね」

「あとどれくらい掛かるのでしょうか?」

「そうね。セシリーは丁度成長期だから、一番早く成長するのではないかと話していたわ」


「あ。そう言えば、既に昨夜、足や腰、腕の関節が痛くてあまり眠れなかったのです」

「それは、急激に成長しているあかしね。痛いだろうけれど自分の治癒の力で癒しながら何とか耐えてね」

「はい。大丈夫です」


「では研究室に行きなさい。皆、そこに集まっているわ。私も佑瑚ゆうごを連れてすぐに降りるわ」

「はい。行って来ます」

「セシリーさま。こちらです。ご案内致します」

「ありがとう。桃。お願いするわね」


 桃はセシリーを連れて地下の研究室へとやって来た。

「翼さま。セシリーさまがいらっしゃいました」

「翼さま!」

「あ、セシリー、おはよう。よく来たね」

「セシリー、いらっしゃい」

「翼さま、お姉さま方、おはよう御座います」


「セシリー。千五百年前では確かに姉妹だったけど、今は皆、等しく翼の妻なのよ。だからお姉さまと呼ぶのではなく、名前で呼んでくれて良いのよ」

「え。でも・・・」

「まぁ、だんだん慣れてくるわ。急がなくても良いのよ」

「はい。ありがとう御座います」


「翼さま、地磁気の発生装置はいつ頃から、百パーセントの力を発揮できる様になるのですか?」

「そうだね。セシリー次第だけど、どうだろう?あと一か月くらいかな?」

「え?あと一か月で私の身長はお姉さま達と同じくらいになるのですか?」

「そうだね。それくらいあれば十分だと思うよ」


「そんなに急成長するのですね?」

「セシリーお姉ちゃん!」

「あら。まぁ!何て可愛い!」

「あぁ、セシリー。その子は蓮。結衣の子だよ。飛べるのは今のところ蓮だけなんだ」


「私たちの子でも能力に差があるのですか?」

「うん。前世が神だったかそうでなかったかによるみたいだね」

「確かに、千五百年前の世界では、私の子は皆、治癒と念話の能力しかありませんでした」

「そうだったね」


「それはそうよね。神の世界の始めの世界なのですから、神はお父さま達と私たちだけですもの」

「そして、そこから各国の王家でも能力は失われていって現状になっているのよね」

「そういうこと・・・でも、地球で人間として暮らすなら能力は無くて良いと思います」

「うん。その方が良いと思うよ」


『皆!月夜見さまがいらしたわよ』

『分かりました。皆でそちらへ行きます』


「皆、お父さまがセシリーに会いに来たよ。サロンへ行こうか。セシリー、サロンへ瞬間移動するよ?大丈夫かな?」

「はい。できます」


「シュンッ!」

 サロンへ僕と妻たちで飛ぶと、そこにはお父さんとお母さま方が全員揃っていた。


「翼、雨月が見つかったそうだね。本当に良かった」

「はい。お父さま。セシリー。紹介するよ・・・え?セシリー?」

 セシリーはじりじりと後退あとずさり、顔面蒼白がんめんそうはくとなっていた。


「お、お父さま・・・」

「セシリー、どうしたんだい?」

「お、お父さまが・・・せ、千五百年前と同じお姿です。あ!天満月あまみつつきお母さまも!」


「あぁ、セシリー。私と天満月はあるお役目のため千五百年に一度、この姿で生まれ変わるのですよ」

「そ、そうだったのですか・・・大変、驚きました。申し訳御座いません」

「驚くのは仕方がないよ。では、初めましてと挨拶するのがおかしくなってしまったね」


「はい。お父さま。私にとってはもう、お父さまとしか思えません。あの・・・雨夜月あまよつきお母さまは?」

「セシリー、それは私よ。今は詩織という名前なの」

「あぁ・・・お母さま、私と瞳の色が同じなのですね」

「それなのだけど、セシリー。恐らく、これから髪色も同じになると思うよ」


「え?翼さま。何故ですか?」

「ほら、桃を見てご覧。詩織お母さまと同じ髪色でしょう?メイドはね、子育ての補助をするから母親と同じ瞳と髪色に造られているんだよ」

「え?でも、まだ私はご覧の様な赤毛です。未来が分かるのですか?」

「そうだね。始祖の天照さまは未来も知っているんだよ」


「翼さまの異次元空間移動装置を使っているのですね」

「そうだね。僕は千五百年前の世界にしか行けないから未来は分からないけれどね」

「では、私はこれから背が伸びて髪がお母さまや桃の様な色になるのですね?」


「そうなのですね・・・あ!申し訳御座いません。私、ご挨拶をしていませんでした。お父さま、お母さま。お久しゅう御座います。転生致しまして現在は、セシリー オースティンと申します」

 セシリーは美しいカーテシーで挨拶をした。


「うん。セシリー、また会えて嬉しいよ。立派なレディなのだね」

「セシリー。素敵なレディだわ。またいつでも王女になれるわね。これからは私と念話でお話ができるからいつでも話し掛けて来てね」

「ありがとう御座います」


「翼、それで地磁気の発生装置はいつから本格稼働できるのかな?」

「そうですね。セシリーの成長を待ってというところでしょうか?」

「ふむ。それなら、天照さまに聞いてみれば良いよ」


『天照さま!聞こえますか?』

『月夜見か』

『雨月が見つかったのですが、まだ身体ができていない様です。どれくらい待てば良いでしょう?』

『そうですね。あと二週間後なら大丈夫でしょう』

『分かりました。二週間後ですね。ありがとう御座います』


「翼、二週間後だそうだよ」

「良かった。思ったより早いですね」


 これで地球は救われる。嫁探しもこれで終わりだ。本当に良かった・・・

お読みいただきまして、ありがとうございました!

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