15.大人の階段
やっと見つけた雨月の生まれ変わりのセシリーを月の都へ迎えた。
皆でサロンへ移動するとメイドが勢揃いで出迎えた。
「いらっしゃいませ。お嬢さま」
「な、な、何?この美しいお姉さま達は?」
「ジェイミー、セシリー、彼女たちはこの城のメイドなのだけど、人間ではないの。アンドロイドなのよ」
「アンドロイド?人間ではないの?」
「セシリーの専属メイドも居るのよ」
「え?私のメイド・・・で御座いますか?」
「桃!」
ストロベリーブロンドの髪、赤い瞳をした桃がセシリーの目の前に立った。
「はい。セシリーさま。私は桃と申します。これからセシリーさまにお仕えいたします。どうぞよろしくお願いいたします」
「あ。こ、こちらこそ、よろしくお願いします」
「凄い。専属のメイドが居るなんて・・・」
ジェイミーは目を丸くして驚いている。
「で、でも・・・私なんかに・・・」
「やっぱり、そう思うわよね・・・」
「セシリー、私は千五百年前の世界であなたの姉だったの」
「え?ジェイミーのお姉さまが、私のお姉さま?」
「そう。千五百年前の世界での話ですけれどね。でもね。あなたはこれから千五百年前の世界で生きた記憶を取り戻すことになるの。そうなれば、翼さまがあなたの夫で、今、ここに居る女性が皆、あなたの姉であったことも全て思い出すわ」
「私が、千五百年前も翼さまの妻・・・だったのですか?」
「そうよ。今は信じられないでしょうけれどね」
「はい。想像もできません」
「セシリー、突然のことで混乱していると思うんだ。すぐにどうこうする訳じゃないから落ち着いてね」
「翼、そんなにのんびりしたことを言っている場合ではないのでは?」
「えぇ、こうしている間にも人類はどんどん死んでいっているのだから・・・」
「お姉さま!ちょ、ちょっと待ってください。セシリーはまだ心の準備ができていないのです」
「ジェイミー、それはよく分かっているわ。でもね。セシリーが一日も早く記憶を取り戻し、女神の力を発揮してくれないと・・・」
「それは解ります。でも、私はセシリーのナイトなの。どんなことからもセシリーを守るわ」
「ジェイミー、それはエヴァンス侯爵家とオースティン公爵家の盟約ね。両家とも男の子が生まれなかったものね・・・」
「ジェイミー、僕とアンジェラの息子は、エヴァンス家の跡取りにしたいと思っているんだ。同じ様にセシリーのオースティン家の跡取りのことも考えているよ」
「え?では、私はエヴァンス家のことを考えず、自由に結婚ができるってこと?」
「そうよ。ジェイミー」
「翼さま・・・オースティン家のことまでお考え頂けるのですか・・・」
「勿論だよ」
「あの・・・お父さまが、お前はもしかしたら神の嫁候補なのかも知れないって、おっしゃっていたのです。でも、私が本当に神の妻になったら、オースティン公爵家は私の代で途絶えてしまうって悩まれていたのです」
「まぁ!ではセシリーは翼のお嫁さんになりたかったのかしら?」
「それは・・・翼さまはとても素敵なお方ですから・・・」
「ジェイミー、セシリーが翼さまの妻になりたいと思うならば、あなたは応援するわよね?」
「そ、それは・・・勿論。セシリーがそれを願うのなら・・・」
「良かった!それなら問題はないじゃない!」
「そうね。良かったわ」
「それならば、あとはセシリーが雨月の記憶を取り戻せば良いだけね」
「あの・・・どうしたら記憶が戻るのでしょうか?」
「あぁ・・・」
「え?大変なことなのですか?」
「いや・・・その・・・」
アネモネがセシリーの隣に行き、耳元で囁く様に言った。
「翼とキスするのよ。それで戻らなければ、セックスするのよ」
「え!」
セシリーの頬は見る見るうちに赤く染まって行った。
「え?何?どうするの?セシリー大丈夫?」
今度は望がジェイミーの耳元で囁いた。
「え?キス?」
「ふふっ。そうよ」
「セシリー、きっとあなたはその様な経験は無いのでしょうね?」
「あ、ありません・・・」
セシリーは真っ赤な顔をして俯いた。
「スコットランドでは何歳から結婚できるのですか?」
「結婚は男女共に十六歳からできるので、セシリーは問題ないわ」
「セシリーは今、何歳なのですか?」
「はい。十八歳になったばかりです」
「お姉さま。すぐに結婚しなければいけないのですか?」
「結婚は学校を卒業してからでも構わないわよ」
「では、学校には卒業まで通えるのですね」
「構いませんよ。ただし、桃を護衛として常に付き添わせて頂きますけれど」
「桃?メイドが学校について来るのですか?」
「セシリーの身を守るためです」
「記憶を取り戻しさえすれば神の能力を使えますから、自分で身を守ることも可能なのですが、周りの人たちが知ってしまっていますからね、やはり護衛は必要だと思います」
「そうだ翼、セシリーに自分の部屋を見せてあげると良いわ」
「え?私の部屋がもう、用意されているのですか?」
「えぇ、この月の都と城ができた時から、セシリーの部屋はありましたよ」
「私もセシリーのお部屋、見たいわ!」
「ジェイミー、ごめんなさい。ここより上の階へは、私たち以外は入れないのよ。ここで私と一緒にケーキを食べて待っていましょうね」
「そうなのね・・・それでは仕方がないわ」
「では、セシリー、行きましょうか」
「はい。翼さま」
僕はセシリーの手を取り、エスコートしてセシリーの部屋へ案内した。
「さぁ、ここがセシリーの部屋だよ。入って!」
「はい・・・あ!す、素敵です・・・本当にお城のお部屋なのですね」
「気に入ったかい?」
「はい。でも少し、広過ぎるかも知れないです」
「ここは居間だね。常に桃が一緒に居て、お世話をしてくれるからね。そして奥が寝室、そして衣裳部屋とパウダールーム。その奥がトイレとお風呂だ」
「とても素晴らしいです」
「ほら、この衣裳部屋には、セシリーが本来の姿になった時のサイズに合わせた衣装が全て揃っているんだよ」
「本来のサイズ?で御座いますか?」
「うん。僕の妻たちは同じ身長をしていたでしょう?」
「あ。はい。皆さまとても背が高くて・・・」
「記憶が戻ったら、セシリーも半年もしない内にあの身長まで伸びるよ」
「私があんなに大きくなるのですか?」
「えぇ、直ぐにね」
「信じられません・・・」
「ところで・・・セシリー。今日は急に僕たちが現れて、あっという間にここへ連れ去られてしまったと思っているだろうけど・・・」
「アネモネという僕の妻。ストロベリーブロンドの髪に君と同じ赤い瞳をしていた妻だよ。彼女はね、千五百年前の姉妹が生まれ変わった今の姿になっていても判別できる能力があるんだ」
「そして、セシリーが妹だって分かったんだよ」
「では、私は本当に女神になれるのですか?」
「うん。間違いない。君は女神で、千五百年前の世界で僕の妻だった雨月だ」
「本当なのですね?」
「本当だよ。それでね。セシリー。今世でも僕の妻になって欲しいんだ」
「本当に私で良いのですか?」
「僕は君が大好きなんだ。この人生は千五百年前からずっと続いているんだよ。そしてこれから五百年という年月をまた一緒に過ごせるんだ。どうかな?」
「まだ記憶が戻っていないのでよく分からないのですが・・・でも翼さまは・・・」
「僕は?セシリーは僕をどう思っているの?」
「あ、あの・・・お嫁さんの候補を募集し始めた時に知って・・・それからずっと気になっていて・・・ジェイミーのお姉さまとの結婚式をテレビで観ていて本当に羨ましくて」
「そう・・・」
「あ、あの・・・その結婚式の時のキルト姿が忘れられなくて・・・」
「そう。それで?僕のことは?」
「そ、それは・・・あ、あの・・・す、好き・・・です」
セシリーは消え入りそうな声で、やっとの思いで言葉にした。
「ありがとう。セシリー。僕も大好きだよ」
そう言うとセシリーは僕を見上げる様に見つめた。その瞬間を逃さず、僕は身長差が大きいのでかなり身体を曲げてセシリーとキスをした。
「あ・・・」
「ん?」
しばらくキスをするが、セシリーに変化は無い。ただ、もじもじと恥ずかしそうに真っ赤な顔をして僕を見つめている。
「あれ?記憶が戻らないかな?」
「はい。特に何も変わりません・・・」
「うわ。大変だ。どうしよう?」
「それでは・・・その・・・キスだけではなく・・・ってことでしょうか?」
「しても良い?」
「そんな・・・聞かないでください・・・」
セシリーは僕の胸に顔を埋める様にしがみ付いて来た。そ、そうか・・・ここまで来たら、するしかないよな。
「セシリー」
また僕の顔を見上げるセシリーを念動力で持ち上げ、抱きしめると今度は深く深くキスをした。あまり力を入れて抱きしめると折れてしまいそうな程、セシリーの身体は華奢だった。
あぁ、雨月と初めての時もこんな感じだったな。彼女があまりにも可愛らしく儚げで、その日に一気に奪う気になれなかったのだった。
でも、今日はそんな悠長なことは言っていられない。本当に身勝手なことで申し訳ないけれど、行くところまで行ってしまわなければならない・・・そう思う。
そのままベッドへ行き、抱きしめた。僕が上になると押し潰してしまう様な気がしてしまう。慎重に・・・大切に扱わなければならない。長いキスから緊張を解す様に愛撫して行った。
「あ、あの・・・私、お風呂に入っていないのです・・・」
「うん。一緒に入ろうか」
「え?一緒に?」
「嫌かな?」
「い、いえ・・・嫌だなんて・・・そんなことは・・・」
「では、灯りをできるだけ落として入ろうか」
「はい」
部屋を薄暗くしてお風呂に行くと服を脱がせ、お姫さま抱っこし、お風呂に浸かった。
再び長いキスをしてマッサージをしていった。セシリーは全身ほんのりと赤くなり、興奮して来ているのが伝わって来た。
もう良いだろうと判断し、抱き上げてタオルで包むとそのままベッドへ瞬間移動した。
そして抱きしめ、全身をくまなく愛した。
セシリーはやがて高まり、夢中で僕を求めて来た。でも、あまりにも幼く見えるその姿に僕は罪悪感を覚えずにはいられなかった。
「セシリー。大丈夫?」
「はい。翼さま・・・愛しています」
「僕もセシリーを愛しているよ。少し痛いかも知れないけど、治癒の力で癒すからね」
「はい」
僕はそう言うと、少しずつ治癒の力で癒しながらセシリーとひとつになった。
「あぁ・・・翼さまと・・・」
「うん。ひとつになっているよ。セシリー。君は美しい。そして可愛い。本当に愛しい女性だ」
「本当ですか?嬉しい・・・」
「あ!な、何か・・・あ!これは・・・あぁ!」
「セシリー。大丈夫?」
セシリーは何か高まって来た様で僕に必死にしがみ付いて来た。そしてセシリーは絶頂を迎えた様だ。一瞬、意識が飛んだ様に見えた。
「セシリー?」
「あ!あなた様は!翼さま!どうして?私は?」
「え?雨月かい?」
「はい。翼さま。雨月です・・・あ!あぁ・・・あ」
そして雨月は気を失ってしまった。僕は念動力でセシリーを持ち上げ、お風呂へ行きシャワーできれいに洗い流してから服を着せてベッドへ寝かせた。
『アネモネ、皆。セシリーは記憶を取り戻したよ』
『良かったわね。翼、キスだけでは戻らなかった様ね』
『アネモネ。どうして分かったんだい?』
『キスだけで記憶が戻ったなら、もっと早くにこの報告をしているでしょう?』
『そうだったね』
『でも、良かったわ』
『目が覚めたらサロンに戻ってね』
『うん。分かったよ』
それから一時間後にセシリーは目を覚ました。
「う、うん・・・あ。翼さま!」
「雨月。そしてセシリー。記憶が戻ったのだね?」
「はい。私は雨夜月お母さまの娘、雨月でした。アンジェラお姉さまは、宇月お姉さまでした」
「記憶が戻って良かった。セシリー、さっきから日本語で話しているよ」
「あ!そうでした。私、全ての記憶が戻っています」
「改めてどうかな?僕と結婚してくれますか?」
「勿論です。また一緒に生きて行けるなんて・・・それも一年に一度逢えるのを待ち続けることはないのですね?」
「そうだよ。これから五百年という長い年月を一緒に過すんだ」
「あぁ、夢みたいです!」
セシリーは自分の頬に両手を当て、信じられないといった表情となった。
「さぁ、皆のところへ行こうか?」
「あ!待ってください。もう一度だけ・・・キスしてください」
「うん。おいで」
「翼さま!」
セシリーはベッドから飛びつく様に僕に抱きつき、唇を重ねた。セシリーの瞳からは涙が一筋流れた。僕はセシリーの細い身体を抱きしめ、安堵した。
二人で手を繋いでサロンに戻ると、まずはジェイミーが驚いた顔をしていた。
「セシリー・・・あなた。別人の様だわ・・・」
「ジェイミー。私は私よ。でも千五百年前の雨月の記憶が戻ったの。私は翼さまの妻でその後、プリムローズという国の初代女王になったのよ」
「女王さま?」
「えぇ、私はジェイミーの友達のセシリーなのだけど、もう私の中には翼さまの妻である雨月や女王であった記憶が全てあるから、もう長く生きている様な感じがするの」
「だからそんなに落ち着いて見えるのね。もう私が守ってあげなければいけないセシリーではないのね」
「まぁ!私は今でもジェイミーが大好きよ。まだあなたに守ってもらいたいわ」
「そうなの?まだ友達で居てくれるのね?」
「勿論よ。ずっと友達だわ!」
「良かった。セシリー。大好きよ!」
「私も!ジェイミー。今まで守ってくれてありがとう。これからもよろしくね」
「えぇ。勿論!ずっとお友達よ」
二人は抱き合って喜んだ。
「ジェイミー。良かったわね。そしてセシリーも良かったわ」
「宇月お姉さま。ありがとう御座います。夢月お姉さまも」
「どうして私が宇月で、アナが夢月だって分かったの?」
「だって、そのリボンと髪型・・・昔と一緒ですもの」
「あぁ、そういうことね」
「私が長女の璃月、今は望よ」
「璃月お姉さま!お久しぶりです!」
「雨月、私は羽月よ。今はアネモネ。二度目のグースベリー王国の王女をしているわ」
「羽月お姉さま!また色々と教えてください」
「いいわよ」
「セシリー。私は月花。今はニーナよ」
「月花お姉さま。今も恰好良いのですね!」
「ふふっ。ありがとう。セシリー」
「セシリー。私は月代よ。今は結衣っていうの」
「あ。月代お姉さま。またお会いできて嬉しいです」
「私もよ。セシリー」
「最後は私ね。私は光月。今は翼の母で瑞希よ」
「光月お姉さまが翼さまのお母さまに?それも神の御導きなのでしょうか。凄い巡り合わせですね!」
「そうなの。驚くわよね、セシリー。これからもよろしくね」
「はい。お義母さま!」
「さて、これからどうしようか?」
「まずは神の能力が使えるか試しましょう」
「そうだね。ではまず、念話からだね」
『きっと全てできると思います。能力を使っていた記憶がありますから』
そう念話で言うと、その場で宙に浮かび始め、ジェイミーを念動力で一緒に浮かべた。
「わわわ!これは何?」
「ジェイミー、私があなたを浮かべているのよ」
「凄いわ!セシリーが本当に女神さまになっちゃった!」
二人でゆっくりと床へ降りると、セシリーが消えた。
「シュンッ!」
「あ!セシリーが消えちゃった!」
「シュンッ!」
「あ!セシリー!」
「瞬間移動もできますね」
「うん。完璧だね。セシリー。これから君は大変な早さで背が伸びる筈だ。きっと成長痛で眠れなくなるかも知れないね。その時は自分で治癒の力で痛みを抑えるんだよ」
「はい。分かりました」
「え?セシリー、病気も治せるの?」
「ジェイミー、そうなの。地球では表立って神に治癒の能力があることは言っていないのだけど」
「どうして?神さまが人の病気を治すことは自然なことでしょう?」
「それは神話的な話の上ではね。でも現実にそれが知られてしまったら、病気の人は誰でも私たちに病気を治して欲しいと殺到するのでは?」
「あ!そうですね。そうなってしまったら世界中の全ての病気の人を治してあげることはできませんね」
「えぇ、一部の人だけを治療してあげたら、治してもらえなかった人は不満に感じてしまうの。だから敢えて公言していないのよ」
「でも、ジェイミーが病気になったら私が治すわ。それに生理痛が酷かったら言ってね」
「え?本当?私、たまに辛い時があるの」
「それくらいなら私がいつでも癒すわ」
「セシリー。学校とか友達の前では駄目よ?」
「はい。勿論、二人だけの時にします」
「さて、それではセシリーのご両親にご挨拶へ伺おうか」
「あ!翼、それならば、結婚式の時に着たキルトを着て行くのはどうかしら?」
「望、そう思うのは山々だけど、それはやめておいた方が良いわ。あれはエヴァンス家の紋様であつらえたものなの。翼は正式にはエヴァンス家の人間ではないのだから」
「そうだね。セシリーとの結婚式で、今度はオースティン家のキルトをあつらえよう」
「翼さま。オースティン家のキルトを着て頂けるのですか!」
「セシリー良かったわね」
「はい!」
「セシリーはやはり、雨月とは違うね。雨月はもっと大人しかったよね」
「えぇ、そうね。現代の暮らしでは情報量が多いし、教育のレベルが全然違うから・・・」
「そうだね。現代っ子だものね。雨月の時とは違うね」
「でも、私は雨月です」
「セシリー。雨月と違うとか良くないって話ではないんだ。とても明るくきちんと話ができる娘になっていて嬉しいんだよ」
「まぁ!本当ですか?」
「うん。可愛いのは変わらないけれどね」
「まぁ!」
セシリーは「ボッ!」という音が聞こえそうな程、瞬間的に真っ赤な顔になった。
「本当に可愛いわね。学校でも皆に年下の様に思われているでしょう?」
「そうですね。それでからかわれることもありましたけど・・・」
「これからは女神さまになったのだから、違った意味であなたに寄って来る者が増えると思うの。気をつけなければならないわね」
「はい。アンジェラお姉さま」
「それで、セシリー。明日からどうする?ここに住む?それとも学校を卒業するまでは実家で暮らす?」
「お義母さま。よろしければ、明日からここへ移りたいと存じます」
「まぁ!積極的ね。ご両親がお許しになるならばこちらは構わないのよ」
「そうだね。通学は危険だから、ここから桃を連れて、瞬間移動で通うのが一番良いかな?」
「えーっ!それでは、私は寮で一人きりになってしまうのね・・・」
「あぁ・・・そうね。急に寂しくなってしまうわね・・・それならジェイミーは実家に戻ってセシリーが毎朝、ジェイミーを迎えに行くのはどうかしら?」
「あぁ、私が桃を連れて、ジェイミーの家に瞬間移動して、そこから桃とジェイミーと一緒に学校へ飛べば良いのですね?」
「そうよ」
「本当?それなら、たまには学校の帰りにうちへ寄って行ってくれる?」
「勿論よ」
「嬉しい!」
「では、それで決まりね。お母さまに話しておくわ」
「お姉さま、ありがとう御座います」
「では、セシリーの実家へ行こう。セシリー、ご両親に電話しておいてくれるかな?」
「瞬間移動するのですか?」
「いや、さっきと同じ船で行こう。エディンバラ城の上に出現するから、そこから家まで案内してくれるかな?」
「分かりました。お父さまに船で行くと伝えます」
「では、私とジェイミーも一緒に乗って行って、エディンバラ城の上空から家に飛びますね」
「うん、それが良いね。では、行こうか」
セシリーは両親への説明に時間が掛かっていた様だが、何とか説明して電話を切った。
城のエレベーターで地下の格納庫に向かいながら話した。
「セシリー、ご両親との話は長かったね。何か問題があったかな?」
「問題はありません。お母さまが信じてくれなくて説明に時間が掛かってしまったのです」
「無理もないね。向こうへ着いたら僕からもご説明を差し上げるよ」
「ありがとう御座います。翼さま」
「セシリー。初めは慣れないと思うけど妻たちは僕のことを翼って呼ぶんだ。セシリーも慣れていってくれると嬉しいな」
「そんな・・・翼さまを呼び捨てにするなんて・・・」
「ゆっくりで良いんだよ。そのうちにね」
「はい・・・」
セシリーの可愛らしい顔がまた、赤く染まった。本当にまだあどけない少女だ。
船に四人で乗るとエディンバラ城の上空へ瞬間移動した。そこはもう、アンジーとジェイミーの家の目の前だ。
「翼、私たちはここで降りますね。帰りは一人で飛びますから」
「うん。アンジーありがとう。ジェイミー、来週からは今まで通り、学校でセシリーを守ってあげてくれるかな?今度は桃と一緒にね」
「はい。お任せください。お義兄さま」
「あ。そうか。ジェイミーにとって翼さまはお義兄さまなのね?」
「あ!大変!お義兄さまの妻になるセシリーは、私のお義姉さまになるのだわ!」
「え?私がジェイミーのお義姉さん?」
「だって、そうでしょ?」
「そうね。そうなるわね」
「私がジェイミーのお義姉さんなんて、ちょっと想像できないわ」
「でも、セシリーはこれからすぐにアンジーと同じ位の身長になるからね。違和感はないのではないかな?」
「そうよ。それに今日セシリーは、私より先に大人の階段を昇ってしまったのでしょう?ね。セシリーお義姉さま!」
「あ!そ、それは・・・」
またしてもセシリーの顔は彼女の髪や瞳の様に真っ赤になったのだった。
お読みいただきまして、ありがとうございました!