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9.アンジーとの初夜

 アンジェラとの初夜を迎え、二人で風呂に浸かった。


 アンジェラと再び長いキスをし、その間もアンジェラの身体を撫で続けていた。

「もっと、もっと触れてください・・・もっと」


 僕はアンジェラの求めに応じた。どうやら、アンジェラの記憶は交錯している様だ。思い出した記憶で僕と以前の様にセックスしていると思ってしまっているのだろう。


「アンジェラ。君のこの身体は処女なのでは?」

「え?そうです・・・あ!そうでした。アンジェラでは、こんなことするの初めてです」

「やっぱり・・・宇月の時の記憶と交錯してしまっているんだよ」

「あぁ、お相手が翼さまだから!私が見ている姿は既に知っている翼さまなのです」


「うん。そうなのだろうね。分かった。一旦、落ち着いてね。ベッドへ行こうか」

「はい」

 アンジェラを念動力で空中に浮かせ、タオルで包むとお姫さま抱っこでベッドへ運んだ。


「まぁ、そうだとしてもすることは同じなのだけどね。僕だってそう色々なことはできないからね」

「その方が安心です」

「でも繋がる時はきっと痛いよ?」

「はい。それは覚悟しています。でも自分で癒せますから、その時少しだけ時間をください」

「勿論、分かっているよ」


 そして再開した。他の妻たちと同じ様にとても敏感な様だ。アンジェラの身体はとろとろにとろけながら、何度目かの絶頂を迎えた。


 もう頃合いと見て、ゆっくりとひとつになった。アンジェラは声には出さずに痛みに耐えていた。


 僕は動きを止めて、アンジェラが治癒の力で痛みをほどくのを待った。

「あぁ・・・またこうしてひとつになれたのですね。お帰りなさい、翼さま」

「ふふっ、ただいま。アンジェラ」

「あ。痛みが無くなりました・・・」

「うん」


 それからはアンジェラが絶頂に達し、満足するまで続けた。

「あぁ!素敵!なんて幸せなのでしょう・・・翼さま、これがまだまだ何百年も続くのですか?」

「そうだよ。大丈夫かい?」

「はい。幸せです・・・」


 アンジェラは心から落ち着き、幸せそうな笑顔に包まれていた。僕はアンジェラを包み込む様に抱きしめ、キスをしながら話をした。


「アンジェラ。タンザニアで出会った時、緑のリボンでポニーテールにしていたよね?」

「えぇ、そうですね」

「千五百年前、僕は宇月にリボンをプレゼントしたね」

「あ!そうです。私、最初に翼さまが夢月の髪に編み込んであげていたのを見て、羨ましくて同じにしてもらいましたね」


「でも、後でやっぱり同じは嫌だなって思って、お母さまに後ろで結って頂いたのです。それからは翼さまと繋がっていたくて、私たち三姉妹は常にあのリボンをしていましたね」

「そうだったんだね。でもさ、アナとアンジェラは、今世でも同じ色のリボンを同じ様にして使っていたよね?」

「そうですね。私、いつ頃からそうしていたのでしょう・・・ちょっと思い出せないくらい、小さな時から今と同じ様にしていた気がします」


「では、無意識に過去の記憶から、この色のリボンを選びポニーテールにしていたと?」

「はい。その様です」

「アナにも聞いたのだけど同じ様な答えだったな」

「それなら、雨月もツインテールにしているのでしょうか?」


「ピンクのリボンでね。可能性はあるのかなと思って・・・」

「私、どこかでツインテールの娘を見たことがある様な気がするのだけど・・・思い出せないのですよね」

「そうなんだ・・・」

 僕はそう言いながら、アンジェラの大きな胸を包む様にもてあそび始めた。


「あぁ・・・素敵・・・もっと」

「アンジェラって、求めてくれるから嬉しくなるね」

「え?そうですか?なんだか我慢できない女みたい。それって駄目じゃないですか?」

「駄目なもんか。大好きだよ」

「嬉しい!もっと、もっと愛してください」


 そして深夜まで愛し合い、ふたりは抱き合いながら眠りに落ちた。


 翌朝、目覚めるとアンジェラはまだ眠っていた。僕は美しい形をした唇を眺め、我慢できずにキスをした。するとゆっくりと瞳を開き、そして笑顔となった。


「アンジェラ、おはよう。よく眠れたかな?」

「おはようございます。これまでの人生で最高に幸せな朝です。こんなに深く眠れたのも久しぶりです」

「時間はまだ少し早い様だよ」


「え?またしてくださるのですか?」

「ふふっ、では一回だけだよ」

「嬉しい!来てください」

 そう言って、大きな胸を揺らしながら両腕を広げて僕を迎え入れた。




 朝食を終えるとアンジェラに庭園を案内した。まずは山頂へ飛び、全景を確認する。

ふたりで山頂に立って、川や森、池や畑、庭園の位置を説明した。


「それにしても低軌道エレベーターとは凄い建造物ですね」

「そうだね。立っている様に見えて、地上に接していない。宇宙からぶら下がっているなんて信じられないよね」

「構造上はですよね?あれは実は反重力装置によって、それ自身で浮いているのですよね?」

「凄い!良く知っているね!何だか嬉しいな」


「実は私、翼さまのことが気になっていて、翼さまの創ったものは全て詳しく調べていたのです」

「えー、本当に?それなのに妻の公募には応募してくれなかったのかい?」

「それはタイミングの問題です。地磁気の逆転現象が始まる前ならば、きっと応募していました。でもあれ以降は動物たちがどうなるか心配で・・・」


「あぁ、そうだね。それどころではないよね」

「申し訳ありません」

「いや、アンジェラが謝ることではないよ。僕が全てのタイミングを見誤ったんだ」

「翼さま、どうかそんなにご自分を責めないでください」

「うん・・・そうだね」


「ところで翼さま、あちらにある建物はどなたが住んでいらっしゃるのですか?」

「あぁ、あそこは城以外の管理をしてくれる人が住む寮なんだ。今はまだ、一人しか住んでいないよ」

「え?お一人だけなのですか?」


「うん。アナのお付きだった女性なんだ。アナが結婚してここに来ることになった時、田舎に帰って農業をするって言うから、ここに来て庭園の手入れをしてもらっているよ。それとアナの子のレオの子守りもね」


「それは幸せなことですね」

「アンジェラもお知り合いの方で、ここで働きたいという人が居たら紹介してくれるかな?」

「はい。かしこまりました」


「そう言えば、アンジェラ、まだ言葉使いが固いね。僕のことは翼と呼んでくれて良いからね」

「え?翼?そんな・・・私にできるでしょうか?あ!それならばまずは、私のことはアンジーと呼んでください!」

「アンジーか。親しみ易い愛称だね。分かったよ、アンジー」

「ふふっ!嬉しい!」

 アンジーは僕に抱きつき、キスをして来た。


「あ、あのね、アンジー。僕らふたりだけの時は良いのだけど、皆が居る時はキスするのは控えてくれるかな?」

「あ!そうですね。私ったら!ごめんなさい」

「別に謝らなくても良いんだよ。妻が多いからさ。一応、マナーというか・・・ね」


「はい。気を付けます・・・翼・・・さま。あぁ・・・まだ駄目です!」

「慌てなくて良いよ。話し方も徐々にで良いからね」

「はい」


「あ!丁度、庭園にダーリャが出てきたね。挨拶に行こうか」

「はい」

「シュンッ!」


「あ!翼さま、おはようございます!」

「ダーリャ、おはよう!こちらは今度、僕の妻になる、アンジェラ エヴァンスだよ。彼女は千五百年前の世界ではアナのお姉さんだったんだ」

「まぁ!昨夜のニュースで拝見致しました。初めまして、ダーリャと申します」


「ダーリャさん、アンジェラ エヴァンスと申します。妹のアナがお世話になった様ですね。ありがとう御座います」

「そんな!とんでも御座いません」

「ダーリャさんって、ロシア人ですよね。何故、日本語を?」

「あ、いえ、こちらで働かせて頂くのならと日本語を勉強中なのです」


「え?もう普通に話せているではありませんか!優秀でいらっしゃるのですね」

「そうだよ。ダーリャはとっても優秀なんだ。早く良い旦那さまが見つかると良いのだけどね」

「翼さま、またそんなこと!」

「ダーリャが結婚して幸せになってくれないと、アナが落ち着かないんだよ」

「そ、そうなのでしょうか・・・」


「そうだよ。アナや僕たちに一生を捧げる必要なんてないのだからね。是非、ダーリャの幸せを見つけて欲しいな。あ。でも、そう言いながら他の使用人を中々、見つけられないでいるね。そちらもしっかり探すからね」

「いえ、本当に・・・」

「ダーリャさん、奥ゆかしいお方なのですね」


「ダーリャ、それではまたね」

「失礼します」

「はい。翼さま、アンジェラさま。失礼致します」


 僕らは一度、サロンへ戻り皆に声を掛けた。

「ねぇ、皆、この月の都の使用人はまだ、ダーリャだけだよね。他の使用人を募集しようかと思うのだけどどうかな?」

「一般に向けて募集を掛けるのですか?」

「それは危険では?」

「誰かしら信頼の置ける人の紹介を頂いた方が良いのではないでしょうか?」


「翼、こういうことは、あまり人の良いことを言っていては駄目よ。子供たちを危険な目に遭わせる訳にはいかないのですからね」

「そうですね、お母さま」

「ところで、使用人はどういった職種を募集するのでしょうか?」


「そうだね。まず庭師をあと三人、畑担当を八人、池と森、山の管理人を四人、寮の管理人を八人、料理人を六人、ダーリャと合わせて全部で三十人だね」

「エリー、あの寮には部屋はいくつあるのかしら?」

「六十部屋御座います。その内、家族で入居できる部屋が二十部屋御座います」

「個室が四十部屋あるなら、まずは三十人入るのは問題なさそうだね」


「それで、どうやって募集するのですか?」

「皆の家族を通じて極秘に募集しようよ。新奈や望のお父さま、徹や首相、アナのお父さま、アンジーのお父さまだよ」

「あぁ、それで信頼できる方をって頼むのね?」

「うん。あとできれば、独身で結婚適齢期の人が居ればなお良いと」


「そうね。庭師とか農業の関係だと何も言わないと老夫婦とか推薦されそうだものね」

「そういうこと。できれば、ここの使用人の中で恋が生まれて欲しいからね」

「あぁ、その子供たちに引き続き、ここで働いてもらうってこと?」

「まぁ、それはその子供たちが選択することさ。ここに縛り付ける気はないよ」

「そうね。そうして欲しいわ」


「分かったわ、お父さまにお声掛けしておくわね」

「私も相談してみるわ」

「はい。私もお願いしてみます。でも日本語を習得する気のある者に限定した方が良さそうですね」

「私もそう思っていました。ダーリャの様に勉強して頂かないと」

「そうだね。ではアナとアンジーはそれも条件に加えておいてね」

「分かりました」




 夕方になり、エディンバラのキルトテイラーの開店時間に合わせて出発した。

「さぁ、アンジー、エディンバラへ飛ぼうか」

「はい。お願いします」


「シュンッ!」

「あ!翼さま、おはようございます」

「お義母さま、おはようございます」

「まぁ!お義母さまと呼ばれるなんて・・・」


「お母さま、慣れていってね」

「アンジー、神さまにそう呼ばれる日が来るなんて思ってもみなかったから・・・」

「さぁ、行きましょうか?お母さま、お店の人には言ってあるのよね?」


「えぇ、開店から二時間は貸し切りにして頂く様にと伝えたわ」

「それって、瞬間移動で行くと伝えた?」

「いいえ?船で行くのではないの?」


「お母さま、店の前に船を着けたら大騒ぎになってしまうわ。お忍びで行くのよ」

「まぁ!そうなのね」

「では、お母さま、お店に電話してくださる?」

「分かったわ」


 その後、店に電話を入れたのだが、話が通じない様だった。瞬間移動と言われて分かる人が居るはずもないのだ。

「まぁ、驚かせてしまうけど仕方がないよ。行こうか。アンジー、三人を飛ばしてくれるかな?」

「はい。分かりました。お母さま、飛びますね」

「え?飛ぶ?」

「シュンッ!」


「キャーッ!」

 店主や店員たちが急に現れた僕たちに驚き、悲鳴を上げた。まぁ、仕方ない。


「こ、これが瞬間移動なのね。何も感じなかったわ」

「エヴァンスさま、い、今のが瞬間移動なのですね?」

「えぇ、その様ね。分かってもらえたかしら?」

 アンジーのお母さんは、結構おっとりした性格らしい。


「こ、これは翼さま!ようこそお越しくださいました。私はこの店の主人でジョセフ エドワーズと申します」

「はじめまして、天照 翼です。キルトは初めて着るのです」

「左様で御座いますか、キルトには家ごとに柄が決まっております。今回は結婚式の衣装ということですので、エヴァンス家の紋様でよろしいでしょうか?」


「お義母さま、それでよろしいのでしょうか?」

「はい。翼さまに着て頂けるとは、大変光栄に御座います」


 従業員の女性にサイズを測って頂き、エヴァンス家のタータンを見せてもらった。

それは古代柄と言われる明るい色使いで、水色と青の格子に白と緑のラインが入っていた。


「フラッシーズのリボンのお色は如何いたしましょう?」

 白いソックスを止めるバンドの様なものにリボンが付く様だ。

「それは・・・アンジーの瞳の色の緑にしましょう」

「かしこまりました」


「ジャケットのお色は?」

「そうね、白が良いと思うわ。翼さま、如何ですか?」

「アンジーが良いと思うならそれで良いよ」

「かしこまりました。では蝶ネクタイも白、スキヤンドゥはシルバーがよろしいですね」

 スキヤンドゥとは短剣のことの様だ。模造刀を右足のソックスに差し込むのが決まりらしい。


「ギリー・ブログーズも白がよろしいでしょうか」

「そうね、色は無い方が良いわ」

「かしこまりました」

 ギリー・ブログーズとは、革製の編み上げ靴のことをいう様だ。あとはベルトと小物入れのスポーランを選んだ。これで一通り注文できた様だ。奥から一揃えサンプルが運ばれてきた。


「一度、試着をして頂けますでしょうか?」

「はい。アンジー、手伝ってくれる?」

「勿論です。こちらへどうぞ」

 アンジーにされるがままに着付けられて完成した。


「あぁ・・・なんて・・・」

「え?アンジー、似合わない?」

「私、気を失ってしまいそうです・・・なんて素敵なんでしょう・・・あ!早く皆に見て頂きましょう」

 試着室から出て皆の前へ出た。


「お母さま、できました」

「まぁ!素晴らしいわ!」

「ドサッ!」

「あ!リンジー!どうした?」

 従業員の若い女性が気を失って倒れた。


「翼さま、破壊力が凄いです!これでバグパイプを抱えたら、スコットランド中の女性が失神してしまいますよ!」

「うーん、何を言っているのか良く分からないな・・・」


「翼さま、大変お似合いだと思います。当店の従業員が失礼を致しました」

「彼女は大丈夫でしょうか?」

「はい。少し寝かせておきますので。では、これで仕立てさせて頂きます」

「ジョセフ、それではお願いね。今回は時間が無いの。急いでくださる?」

「エヴァンスさま、最優先で仕立てさせて頂きますので、ご安心ください」

「お願いね」


「では、私たちはこれで」

「シュンッ!」


「あら!もう家に戻ったのね。これならどこへでも一瞬で行けるのね?」

「えぇ、お義母さま、それが瞬間移動なのですよ」


「ジェイミーは学校ですか?」

「えぇ、そうです。寮生活を送っておりますので週末にしか帰って来ないのです」

「翼さまのキルト姿を見せたかったわ」

「あれ?ジェイミーは結婚式に出られないのかい?」

「勿論、出席しますよ。ジェイミーは男性のキルト姿が好きなのです」


「ジェイミーだけではないわ。スコットランドの女性なら誰だって好きよ」

「お母さま、そうですね」

「ジェイミーも結婚式で見られるのだから良いでしょう?」

「えぇ、そうね」


「お義父さまは、きっとお忙しいのでしょうね?」

「はい。結婚式の招待状を送る相手を選ぶことに苦労している様です」

「お母さま、何人くらい招待する予定なのかしら?」

「時間が無いから会場を大きく作れないの。三百名程度に絞らないといけないので苦労されているの」


「もしかして首相も来るのかしら?」

「どちらのことを言っているの?」

「それは勿論、ユナイテッドキングダムの首相よ。スコットランドの首相は来るに決まっているでしょう?」

「そうね。一週間でお忙しい英国首相のスケジュールの都合をつけることは難しい様ね」


「貴族や政治家はほとんど出席するのでしょうね」

「えぇ、でも人数を絞る関係で夫婦だけしか呼べないの。お子さんはお留守番ね」

「では、子供はジェイミーだけなのね」

「そうなるわ。でも、楽しみね!」


「さて、アンジー、日本時間ではもう遅くなっているからこの辺で失礼しようか」

「はい。翼さま」

「では、お母さま、私たちの衣装が仕立て上がったらお知らせください」

「えぇ、すぐに知らせるわね。結婚式の日は当日来るの?」


「はい。式の時間に合わせて城の上空へ船で現れます」

「かしこまりました。お待ちしております」

「では、今日はこれで失礼致します」

「お母さま、おやすみなさい」

「おやすみなさい。翼さま、アンジー」


「シュンッ!」




 月の都へ帰ると、丁度、晩餐が始まるところだった。久しぶりにアネモネが晩餐に出席していた。アネモネは僕が作った異次元空間移動装置で地球と神星を行き来している。


「アネモネ。来ていたんだね」

「えぇ、翼、お帰りなさい」


 食事が始まり、お酒を飲みながら雨月の件について話した。

「アネモネ、神星でお父さまと雨月の捜索をしてくれていたのだってね。ありがとう」

「当然のことよ。地球の生物の命が懸かっているのですもの」

「それで、どれくらい候補は居たの?」


「まずは、お父さまの家族を当たって行ったわ。特にストロベリーブロンドの髪で赤い瞳を持った、詩織お母さまの娘の詩音しおんさまと息子の伊織いおりさまの妻のクラリスさまね」

「あぁ、二人はその色だったね」

「えぇ、特に詩音しおんさまに会った時には、ドキッとしたわ。容姿が雨月のイメージと重なったの。大人しくて控えめで線が細いのよ」


「あぁ、そう言えば詩織お母さまの娘だものね。雨月と共通点が多くてもおかしくはないんだ。でも雨月ではなかったのだね」

「そうね。違ったわ」

「良かった。詩音は現世では僕と兄弟だからね」


「ねぇ翼、私、思ったのだけど、雨月は本当に地球に居るのかしら?」

「それはどういう意味かな?」

「ストロベリーブロンドの髪って、神星ならではなのではないかしら?神星には、はっきりそれと分かる人がかなりの数で居るでしょう?でも地球は?」


「確かに地球では、はっきりとストロベリーブロンドの髪と区別の付く人は、そうは居ないかも知れないわね」

「私、桜お母さまたちの髪色を初めて見た時、凄く驚いたわ」

「結衣、私もそう!アネモネの髪もね!」

「望、やっぱりそうよね」


「えぇ、確かにロシアでも赤毛の人は居るけど、ストロベリーブロンドは見たことがないかも知れません」

「そうね、アナ。イギリス・・・スコットランドでもピンクに染めている人でなくて、地毛でストロベリーブロンドは見ないわ。やっぱり、赤毛ね」


「では、神星に探しに行くしかないのかな?」

「全ての国へ通達して、貴族の対象者はお父さまと私で会って来たわ。でも雨月は居なかった」

「では、貴族ではなく平民か・・・」

「それはどうやって探せば良いのか分からないわね。地球みたいに写真付きで応募も出来ないのだし」


「平民と言えば、月の都の馬番にストロベリーブロンドの髪の女性が居ましたよね?」

「新奈、それって誰?」

「この前、小白が亡くなって、直ぐに白馬が生まれたでしょう?その時、うまやに居た、馬番の女性とその娘がストロベリーブロンドの髪だったわ」

「あぁ、エミリーとその娘のプリシラね」


「ちょっと待って、その二人なら分かるから、今、見てみるわね・・・」

 アネモネはエミリーに意識を繋いでエミリーとプリシラを直接見ている。


「あぁ、違うわね。雨月ではないわ」

「そうか・・・簡単ではないね」

「では、月夜見さまみたいに旅に出るの?」

「神星に嫁探しの旅にかい?」


「こうして待っていても出てくるとは思えないものね・・・」

「とは言え、当てもなく探すのは無謀なのでは?」

「無駄かもしれないけれど、何もしないよりは良いのかな?後で後悔しないためにも」

「それなら再度、各国に通達して、今度は平民も含めて条件に合う人を探してもらうのよ。それで期日を決めて、アネモネに同行してもらって会いに行くの。それなら二十九か国だから一日に午前と午後の二回とすれば、十五日で終わるわよ?」


「それは良いかも知れないね。平民はどんな身分でも構わないと言っておけば、例え奴隷でも対象になるでしょう」

「では、明日神星に帰る時、月の都へ寄ってお父さまに伝えておくわ」

「ありがとう。アネモネ。お願いするよ」

「お礼は今夜タップリ頂くわね」

「え?あ、はい・・・」


 そしてその夜は、朝までアネモネと熱い夜を過ごした。

お読みいただきまして、ありがとうございました!

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