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5.宇月、夢月、雨月の人となり

 千五百年前の世界へは二日に一度、訪問していた。


 宇月たち三人が五歳になる時、スケジュールを確認すると、三人へリボンをプレゼントすると書いてあった。きっと三人がとても良く似ていて見分けがつかないから、リボンの色で見分けるという意味もあるのかな?


 三人にリボンを選ばせると、宇月は緑を、夢月は青を、残ったピンクは雨月が手に取った。

あ!これって、アナがいつも青いリボンを髪に編み込んでいたな。まさか、この時の記憶で今もリボンを使っているのだろうか?


 僕は記憶を辿って、夢月の髪をアナと同じ様にリボンと共に編み込んでいった。

「まぁ!素敵!翼さま、ありがとうございます」

「気に入ったかい?」

「はい!これからはずっとこの髪型にします!」


「あーっ!夢月ばっかり!ずるい!」

「それじゃぁ、宇月も編んであげるよ」

「嬉しい!」

 同じでも良かったんだ。特別なことを要求されるかと思ったよ。


 宇月の後ろでニコニコしていた雨月を見てふと思った。三人とも同じではつまらないな。雨月は二人とは違う髪型にしたいな・・・

そう考えて、しばらく雨月の顔を見ていて、ピン!とひらめいた。そうだ。ツインテールにしよう。長いリボンを二本に切り分け、耳の後ろで髪を束ねてリボンで蝶々結びにした。


「あら、可愛いわね。雨月!似合うじゃない!」

「そうね。とっても可愛いわ!」


 宇月と夢月にそう言われて雨月は嬉しそうに微笑んだ。

三人ともほぼ同じ顔なのだから、誰がそうしても可愛いのだが・・・

まぁ、性格が違うから顔の見え方も違うということなのかな。


「翼さま・・・ありがとうございます」

「良いんだよ。雨月。三人ともとっても似合っているよ。可愛いね」


 その後は、いつ行っても三人はリボンをしていた。でも、宇月はポニーテールになっていた。きっと彼女の性格からして編むのが面倒くさくなってしまったのだろうな。でも、ポニーテールも可愛い。


 そして、夢月だったアナの言っていた通り、一番僕に興味を示し積極的に近付いて来たのは宇月だった。


 宇月は好き好きアピールが強くて、常に僕の隣で腕に絡みつく様に一緒に居たがった。

夢月も好きで居てくれるのは伝わって来るけど、そこまで積極的ではない。雨月は、いつも宇月の後ろでニコニコしているだけで僕に触れようとはしない。


「翼さま。私、早く翼さまのお嫁さんになりたいです!」

「あ!私も!私もお嫁さんにしてください!」

「えー、宇月、夢月。僕で良いのかい?」


「はい!翼さまでないと嫌です!」

「私もです!」

 その時、僕の袖が引っ張られた。振り返るとそこに雨月が微笑んでいた。

「雨月、どうしたんだい?」

「私も・・・」

 顔を真っ赤にして、蚊の鳴く様な小さな声でつぶやいた。


「雨月も僕のお嫁さんになってくれるのかい?」

 雨月はこくんとうなづいた。ヤバい。超可愛い!


「ふふっ。三人に好かれるなんて、嬉しいな」

 右腕に宇月が、左腕に夢月が抱きついてくる。雨月は宇月の横で赤い顔をしてもじもじしている。


 宇月はこんなに積極的な娘なら何故、応募してくれないのだろう?僕を一目見たら好きになっても不思議ではないのに。記憶が全く無いのかな?


 そして雨月はこんなに大人しい娘だと、応募は・・・ないかな・・・これは不味まずいな。




 九度目の訪問で宇月、夢月、雨月は十歳になっていた。璃月たちは羽月を除いて四人の子を産んだ。僕は璃月たちに王政を教え、子供たちに勉強を教えていた。王を継ぐ息子以外は公爵家をおこすのだ。


 月の都では常に三人と一緒に過ごした。三人とも文字や算数の勉強に一生懸命取り組んだ。勉強以外の時間は船に乗って月の都を離れ、景色の良い海岸や森へ行ってのんびりした時間を過ごし、僕は三人の人となりを見つめていた。


 宇月は三人の中でお姉さん的な存在であり、性格もはっきりしている。勉強もしっかりやるし、何に対しても興味を持ち積極的な性格だ。


 こういう娘は現代に置き換えたらどんな人になるのだろう?アスリート、学者、教師、やり手の営業マン?うーん。何でもできそうだな。


 夢月は真ん中の子で少しおっとりしているが、勉強に取り組む姿勢は一番真面目だ。アナと重ねるとやっぱり似ている様だ。


 アナは目が見えないという障害があったから職業に就いていないし、将来の夢も決まっていなかった。目の病気がなかったら何を目指していたのだろうか?


 雨月は三人とも同じ歳のはずなのに明らかに大人しく、如何いかにも末っ子というイメージだ。いつも宇月の後ろに居てニコニコしている。


 でも勉強はできるし、僕に何も言えない訳ではない。言葉は少ないが自分の意志は伝えたいと考えている様だ。


 現代に転生した宇月と雨月は、どこで何をしているのだろうか・・・




 三人が十五歳の成人を迎えている時代へ飛んだ。いよいよ妻になる時が来たのだ。

もう、妻になることは決まっているので順番に初夜を迎えるだけだ。


 晩餐が終わってから宇月の部屋へと行った。巫女たちは風呂と寝具の用意をして外してもらっている。

「翼さま。とうとうこの日が来たのですね!」

「待ちびていたかい?」

「はい。この日を指折り数えてお待ちしておりました」

「宇月はそんなに僕のことが?」


「はい。愛しております。翼さま。生涯、翼さまだけを想い続けます」

「嬉しいな。僕も宇月を愛しているよ」

「本当ですか!嬉しい!」

 そう言って宇月は僕に抱きついてきた。僕は宇月を受け止め、抱きしめてキスをした。


「翼さま、お風呂へ行きましょう。私が洗って差し上げます!」

「え?宇月が洗ってくれるの?」

「はい!私はいつも巫女に洗われていたでしょう?翼さまの妻になったら私が洗って差し上げようとずっと思っていたのです」

「そうか、宇月は人のお世話が好きなのかな?」


「人のお世話?そうですね・・・妹や弟たちのことはお世話しています。でも、私がしたいのは翼さまに尽くすことです」

「ふふっ、嬉しいな。それじゃぁ、洗ってもらおうかな?」

「はい。お任せください」


 この頃には今まで無かった石鹸が用意されていた。文化が千年以上進んでしまったみたいだ。その石鹸を泡立てて僕の身体を洗ってくれる。腕や背中、胸からお腹と下がって行くと、宇月の動きが止まり一点を凝視している。


「宇月?」

「あ!ごめんなさい。巫女から色々、聞いておいたのだけど・・・」

「想像していたのと違ったんだね?」

「は、はい・・・その・・・大きいです」

「心配になった?」


「だ、大丈夫です。私は翼さまの妻なのですから!」

 そう高らかに宣言する宇月の顔は真っ赤だ。無理しちゃって、可愛いな!


「さぁ、宇月、今度は僕が洗ってあげるよ」

「え?そんな・・・翼さまに洗って頂くなんて・・・」

「大丈夫だよ。気にしないで」


 石鹸で泡立てるとてのひらで肩や腕、背中を洗っていった。宇月は時折、「あっ」と小さな声を漏らしながらじっと耐えていた。


「あぁ・・・つばささま・・・もう・・・」

「僕の方に振り返った宇月にキスをすると、もうトロトロにとろけてしまった」

 初めての娘にやり過ぎてもいけないと思い、お湯で洗い流してベッドまでお姫さま抱っこで運んだ。その間も宇月は僕の首に腕を回し、悩ましい顔で僕を見つめている。


 宇月って魅了とか誘惑とかの能力があるのかな?他の姉妹と比べても羽月の次に積極的だし、つややかだ。寝台に移っても主導を握って来た。これは巫女から事前情報をかなり仕入れている様だ。


「宇月、もしかして、この日のために巫女と練習したのかい?」

「あ。分かってしまいましたか?」

「そりゃあね。初めての娘がこんなことする訳ないもの」

「お嫌でしたか?」


「ううん。宇月が僕のためにしてくれているんだからね。嬉しいよ」

「本当ですか!それなら・・・」

 そう言って、一生懸命に奉仕してくれたのだった。


 その後、攻守を交代し、精一杯宇月を愛してひとつとなった。


「あぁ・・・翼さま。この時をどれだけ待ち侘びていたか・・・あぁ・・・幸せです」

「そんなに?宇月はそれ程までに僕のことを愛してくれているんだね」


 僕はひとつになった宇月を抱きしめてキスをした。宇月の瞳からは涙がこぼれていた。


「痛かったかな?」

「少しだけ・・・でも、大丈夫です。お母さまに治癒の掛け方を教わりましたから」

朧月夜おぼろづきよお母さまが?初夜のことを教えてくれたのかい?」

「えぇ、どんなことをするのか知っていた方が良いって」


 そう言えば、紗良お母さまも積極的な女性だと聞いたことがあるな。あ。確か地球の前世では看護師だったんだよな。だから宇月も献身的な性格なのかな?


 もし、そうなら転生した宇月も看護師とか医師になっているかも知れないな。それだったら毎日が忙しくて僕の嫁に応募なんかしている暇は無いのかも・・・


 ぎこちないながらも終始、主導権を宇月に握らせふたりは何度も果てた。


 朝、目覚めると宇月が僕を見つめていた。

「おはようございます。翼さま」

「おはよう、宇月。よく眠れたかい?」

「はい。とっても」

 宇月を抱き寄せ、腕枕をしながら話をした。


「翼さまは、ここではない地球という星の、しかも未来から来てくださっているのですよね?」

「うん。そうだね」

「それはずっと先の未来なのですか?」

「今からざっと千五百年先だね」

「そんなに?」


「それはどんな世界なのですか?」

「そうだね。この世界とはかなり違うかな?宇月はこれから一つの国の女王になって、人々を統率していくのだけど、未来では多くの人の中から選ばれた人が代表者になる形が多いかな?」


「私はどうして、女王になるのでしょう?」

「天照さまがこの世界を創ったんだ。まだ、人々は自分たちがどうやって暮らして行けば良いか分からないんだ。だから、それができる人を王や女王に据えて、人々を導くんだよ」


「私にできるでしょうか?」

「宇月は今まで沢山勉強して来たじゃないか。それにね。女王になっても僕が毎年来るからね。分からないことは僕が教えるから。大丈夫だよ」

「はい。翼さまが居てくださるから大丈夫です」

 不安そうな宇月を見ていたら元気付けたくなってしまった。


「宇月、千五百年先の世界なのだけどね、そこには宇月も居るんだよ」

「え?私が千五百年先の世界に居るとはどういうことですか?」

「宇月、人はね、転生と言って死んでも魂は残って、また新しい身体に生まれ変わるんだよ」

「生まれ変わる・・・翼さまがそれを知っているということは・・・」


「そう、また僕たちは出逢うんだよ」

「え!今度は翼さまの暮らす世界へ生まれ変われるのですか?」

「うん。そしてまた、結婚するんだ」

「本当ですか?それってもしかして、ずっと一緒に暮らせるのですか?」


「そうだよ。ずっと一緒に生きて行くんだ」

「あぁ・・・そんな幸せなことが!ありがとう御座います。翼さま・・・」

 涙が止まらなくなってしまった宇月を僕は包む様に抱きしめた。




 次の晩は、夢月との初夜だ。晩餐が終わり、夢月に念話で呼び掛けてから彼女の部屋へ飛んだ。

「夢月。心の準備は良いかな?」

「はい。全て翼さまに捧げます」


 僕は夢月を優しく抱きしめ、キスをしながら衣を脱がした。

二人とも裸になると夢月をお姫さま抱っこして風呂へと行き、そのまま湯船に浸かった。


「夢月、初夜のことは暁月夜あかつきづくよお母さまから聞いているの?」

「それは、宇月お姉さまから聞きました」

「あぁ、なるほど。それなら分かっているんだね」

「でも、お姉さまの様にできる自信がないのです・・・」


「夢月、夢月は宇月とは違うんだ。同じ様にする必要はないよ。それなら僕に任せてくれるかな?」

「はい。お任せします」

 夢月は恥ずかしそうに赤い顔をしてうつむいた。それはそれでつやっぽい。


 僕はアナスターシャの時と同じ様に可愛がった。夢月はされるがまま終始切ない声を上げていた。そして緊張もほぐれたところで僕は夢月とひとつになった。


「翼さま・・・もしかしてひとつになっているのですか?」

「そうだよ。分からなかった?痛くなかったの?」

「あ。そうですね。少しだけ、痛かったかも知れません。でも一瞬だったから。それよりも翼さまにこうして包まれていることが幸せで・・・」


 何て可愛いことを言うのだろう。僕は思わず、夢月を抱く腕に力を入れてしまった。

「あ!あ、あぁ・・・何か来ます・・・あ!」

ひとつになっているだけで夢月は絶頂を迎えた様だ。とても感じ易いのかも知れない。それからは夢月の求めに応じて何度も果てた。


「夢月って、結構、好きなんだね?」

「え?そうなのですか?好きっていうか・・・翼さまとずっと繋がっていたいのです」

「そんなに僕のことを想ってくれているんだね」

「私、翼さまと初めてお会いしてから何度も夢に見ているのです」


「夢に?そんなに僕は夢に出てくるの?」

「はい。夢に出て来ない日はありません」

「え?毎日?毎日僕が夢に出てくるの?」

「はい。いつもこの距離で私に微笑み掛けてくださいます」


「そ、そうなんだ・・・」

 現代のアナも僕を夢に見ていたって言っていたな・・・

「翼さまとは、ずっとお傍に居ることができないのですから・・・せめても、こうして夜を共にできる時だけは離れたくないのです」


「夢月・・・ずっと一緒に居てあげられなくてごめんね」

「良いのです。翼さまは私だけのものではありませんから・・・」

 そう言う夢月の横顔は妙に大人びていて十五歳には見えなかった。


「夢月。実はね、僕が暮らす千五百年先の世界に、夢月は転生しているんだ」

「え?転生?私が生まれ変わるということですか?私が翼さまの居る世界に?」

「うん。そして僕らはまた結婚する。そこではずっと一緒に生きて行けるんだよ」

「本当ですか!?」


「うん。誰にも言ってはいけないよ。僕と夢月だけの秘密だ」

「嬉しい!あぁ!何て幸せなのでしょう・・・未来で再び、翼さまと一緒に暮らせる日が来るなんて!」

 夢月は僕に抱きついて頬にキスをした。僕たちは深く抱きしめ合い、キスを交わした。


 僕は目の病気や姉妹たちと一緒に妻になるとか、地球の地磁気が無くなって危機を迎えるとか、不安になる様なことは一切言わなかった。ただ、希望を持って欲しかったのだ。




 三日目の夜は雨月との初夜だ。晩餐が終わって自室で一息ついてから、雨月に念話で聞いた。

「雨月、そちらへ行っても良いかな?」

「はい」

 雨月のいつも通りの小さな反応だった。


「シュンッ!」

 雨月の部屋へ出現すると、雨月は寝台に座って両手を膝の上で固く結び、その手を見つめていた。緊張感が伝わって来ると同時にその小さな女の子をどうしたものかと途方に暮れる僕が居た。


 雨月は姉妹の中でも一番小柄だ。背格好も一回り小さい。当然、胸は・・・無い。

こうしてベッドの端で背中を丸めて小さくなっていると、女性と言うよりは可愛い女の子でしかない。


 僕はこの娘とこれから初夜を迎えるということが信じられなかった。

背徳感はいとくかんという言葉が頭に浮かんできた。これは最後まではできないだろうな・・・


「雨月。お風呂は入ったのかな?」

「はい。先程、頂きました」

「そうか。では僕もお風呂に入って来るね」

「はい。お待ちしております」


 さっとお風呂で身体を洗い、裸のまま雨月の前に現れた。

雨月は僕の裸体を見た瞬間、掛けていた布団の端をギュッと握り締め、硬直する様に固まったのが分かった。あぁ、これは無理だな。


「雨月、今夜は初夜だから一緒に寝台に入っても良いかな?」

「はい・・・」

「では、失礼するよ」


 寝台に入って雨月の身体に腕が触れた瞬間、雨月がビクッと震えたのが伝わって来た。

「雨月、とても緊張しているんだね」

「はい、少し・・・」

「雨月は初夜のことを雨夜月あまよつきお母さまとか、宇月から聞いていたのかな?」

「はい。聞いております」


「それでそんなに怖がっているんだね」

「怖い・・・ことはありません・・・でも・・・」

「不安なんだね?」

「少し・・・」


「雨月、無理をすることはないんだよ。今夜、無理に結ばれなくても良いんだよ」

「駄目です!」

「え?」

 びっくりした。急に大きな声を出していつもニコニコしていた雨月の顔が一瞬、厳しい顔となったのだ。


「どうしたの?」

「あ。ごめんなさい。私・・・あの・・・上手くお話できないから・・・でも・・・翼さまをお慕いしています・・・小さな頃からずっと・・・だから・・・」

「そうか。折角の初夜だから、ここは頑張りたいのかな?」

「はい。お願いします」


「そうか。それなら優しくするからね。嫌なことがあったらすぐに言うんだよ?」

「嫌なことなんて・・・ありません。大丈夫です」

 何ていじらしい・・・可愛い。可愛過ぎる!でも・・・どうしたものか・・・


 とりあえず、キスだな。

長い時間を掛けてキスをした。雨月は夢中でそれに応えていた。それから僕は全身をくまなく愛し、マッサージをする様に緊張を解していった。


 すると徐々に雨月の息も荒くなってきて、小さな声を漏らす様になってきた。

僕は再び、雨月を深く抱きしめてキスをすると・・・


「雨月、今夜はここまでにしよう。続きはまた、三日後にね」

「え?でも・・・」

「雨月。焦ることはないんだ。それより、今まで雨月とは二人きりでお話する機会が少なかったよね。今夜は雨月を抱きしめながらゆっくりとお話したいな。それでは駄目かな?」

「はい。三日後に続きをしてくださるなら・・・」


 それから小さな雨月を腕の中に抱きしめ、雨月の背中をさすりながらお話しをした。

「雨月。この世界で君は、僕のお嫁さんになってくれるのだよね?」

「はい。お願いします」

「僕の生活している世界は地球という星で、それも今から千五百年先の世界なんだ。その世界にも、実は雨月は転生しているんだよ」

「私が地球の千五百年先の世界に?生まれ変わるのですか?」


「そうだよ。そしてそこでも僕と結婚するんだ」

「え?そこでは今みたいに一年に一度ではなく、毎日、一緒に暮らせるのですか?」

「そうだよ。どうかな?」

「そんな・・・夢みたいです・・・」


「でも、そうなるんだ。だから僕らはずっと一緒なんだよ」

「本当ですか?嬉しいです」

 そう言って雨月は心から落ち着いたのか、僕の胸に手を触れ、微笑んだ。


「雨月は優しい子だね。いつも他の姉妹に譲ってしまうのかな?」

「自分で決めるのが苦手なのです。誰かに決めてもらうのを待ってしまうのです」

「それでは自分の望み通りにならないこともあるのでは?」

「いいえ、人が与えてくれたもので満足できるのです。あまり自分から望むことはありません」


「でも、僕のことは望んでくれたのでしょう?」

「はい。翼さまのことだけは初めて自分で決めました」

「そうか・・・未来に生まれ変わっても、僕を選んでくれると良いのだけど・・・」

「え?どういうことですか?」

「いや、それはこっちの話だよ」


「雨月、君は何をしている時が一番楽しいのかな?」

「一番は・・・翼さまのことを考えている時です。二番目は・・・翼さまに勉強を教わっている時・・・三番目は・・・翼さまとお食事をしている時です」

「それって全部、僕じゃないか。雨月はそんなに僕が好きなの?」

「はい・・・あ、愛しております」


「嬉しいな。そんなに愛されているなんて・・・僕も雨月を愛しているよ」

「ほ、本当で御座いますか?」

「本当だよ。本当じゃなかったら妻にはしないし、千五百年先の世界でも結婚しないでしょう?」

「本当なのですね?あぁ・・・嬉しい・・・嬉しいです・・・」

 雨月は僕にしがみ付く様に抱きつき、大粒の涙をこぼしていた。


「そんなに愛してくれるなんて・・・僕は幸せだな」

「翼さま・・・愛しています」

 僕はそのまま、雨月を抱きしめて眠った。


 翌朝、目覚めると目の前で雨月が小さな寝息を立てていた。

僕は愛おしいその頬に触れ、キスをした。すると眠り姫が目を覚ます様にゆっくりと瞳を開き、僕の顔を見ると笑顔になった。


「雨月、おはよう。よく眠れたかな?」

「おはようございます。翼さま、とてもよく眠れました」

 僕は雨月を抱きしめてキスをした。


「翼さま、三日後・・・してくださるのですよね?」

「うん。もう二日後だよ。約束するよ」

「はい!」

 雨月は笑顔で答えた。そしてふたりは二日後に結ばれた。


 三人とは子を授かるタイミングを見るため、その後三か月毎に訪れ三人とも妊娠した。

お読みいただきまして、ありがとうございました!

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