3.嫁探しの始まり
アナとの結婚から三年が経ち、僕は二十三歳になっていた。
この三年の間に相次いで祖父と祖母が亡くなった。二人とも九十歳近くまで生きた。お母さんが健康を気遣い、少しでも体調不良があれば治癒を掛けていたのだが、老衰には勝てなかった。
そして、望と新奈、それにアナが一人ずつ子を産んだ。三人とも男の子で、望の子の佑瑚は一歳になった。新奈の子、尊とアナの子、怜央はまだ生まれたばかりだ。皆、母親の姓を名乗り、戸籍に登録した。
三人とも母親似で、髪や瞳の色が同じだ。そして三人の神の力は強くはなかった。葉留と同じで念話と治癒そして少しの念動力だけだ。つまり空中浮遊や瞬間移動はできない。神の生まれ変わりではないということの様だ。
アネモネは、一年前に陽翔兄さんの子を産んだ。王子となるその男の子はアルバートと名付けられた。
そのため、アネモネは頻繁には地球に来なくなった。来たとしてもアルバートが眠っている夜の間だけ来て、僕とセックスだけして帰って行ったりしていた。
この三年で低軌道エレベーターは完成した。東京の眺めも大きく変わった。
東京湾に低軌道エレベーターの支柱が降りてきている。空に向けて長い長い筒状の建造物がそびえ立つ姿は、とても不思議な光景だ。
それだけでなく、その支柱の横には巨大な島、月の都が浮かび、そこから流れ落ちる瀧によって虹が掛かっている。
数年前から東京湾の沿岸には、これらを眺めるためのホテルやレストラン、公園が数多く作られ、世界中から観光客が訪れていた。
宇宙旅行も営業を開始している。低軌道エレベーターとオービタルリングを繋ぐステーションに作られたホテルに超大型宇宙船で向かい、ホテルへ泊まるプランと宇宙船にそのまま泊まるプランがある。どちらも向こう五年間の予約は全て埋まっている。
予約は世界各国の人口割合で予約できる人数が割り当てられ、毎月抽選で選ばれるのだ。
地磁気の発生装置は、北極と南極に建てる塔の建設とオービタルリングから磁気を発生させる装置の設置が始まっている。一年程で大方出来上がる予定だ。
今はオービタルリングのステーションに設置する磁気の増幅装置と僕らの身体と繋ぐ認証装置の最終テストをしているところだ。
菜乃葉姉さんと結婚した一ノ瀬電機の技術者、伊集院さんのチームとオービタルリングへ行ってテストを繰り返している。
でも、装置が完成しても宇月と雨月の生まれ変わりが見つからなければ装置はフル稼働できないのだが・・・
今日はアナと結衣と一緒に月の都の研究室でお母さんと七人の妻が身に着けるネックレスを加工していた。
宝石はトルマリン原石から加工したもので、色は透明、ブルー、水色、紫、赤、ピンク、緑、イエローがある。トルマリンは電気石とも呼ばれる石だ。これに加工を施して神の力を電気的に変換する。
ネックレスの中心となる大きな石はトルマリンだが、その周りに鏤められるのは大小百個以上のダイヤモンドだ。ダイヤモンドは電気を通さない。美術的に美しく見える様に使っているだけだ。
「なんて美しいのでしょう!」
「アナ、そうね。でも少し大きいのでは?」
「結衣。そうね、少し重く感じるかも知れないわね」
「翼、これって大変な金額が掛かっているのでは?」
「そうだね。地球でこれを買ったら一本二千万円位はするだろうね」
「に、二千万!」
「どこにそんなお金が!?」
「いや、これは皆、お父さんにお願いして、神星で採掘された原石を送ってもらったんだ」
「あぁ、それじゃぁ、お金は掛かっていないのね?」
「うん。そういうこと」
二人が安堵のため息をついていると僕の携帯端末が鳴った。
「ピピピッ、ピピピッ!」
「あれ?伊集院さんからだ。何だろう?」
「ピッ!」
「もしもし?翼です」
「翼さま!大変です!」
「どうしたのですか?事故でも起こりましたか?」
「違います!磁気が!磁気が無くなったのです!」
「磁気って、まさか地磁気のことですか?」
「そうです!その地磁気です。オービタルリングにある磁気観測器の値がほぼ「0」になっているのです」
「それって、逆転現象が始まったということですかね?」
「今までに地磁気が「0」になったことはありませんから!」
伊集院さんは声が裏返ってしまっている。
「伊集院さん、落ち着いてください。例え逆転現象が今、始まったのだとしても、二万年とか長い年月を掛けて徐々に逆回転になっていくのです。今日の数値が「0」でもずっとそのままではありません」
「そ、それは・・・そうですよね」
「ただ、地磁気が少ない日は、地表に放射線が降り注ぐ可能性がありますから、全世界に向けて警告する必要がありますね」
「はい。直ぐに世界各国の気象台と政府に通知します!」
「翼!大変じゃないですか!」
「そうだね。こんなに早くこの日が来るとは思っていなかったな・・・」
「地磁気の発生装置は急いで完成させるとしても、宇月と雨月が見つからなければフル稼働できないわ」
「天照さまは、こうなることが分かっていただろうに・・・」
「何故、教えて下さらなかったのかしら?これでは間に合わないわ」
「アナ。間に合わないって、どんなことが起こるの?」
「結衣。地磁気が無くなってしまうと、太陽風から来る宇宙線、つまり放射線が大気圏に降り注ぐから、まず人間は外に長時間出られなくなるわ。外部被曝してしまうから。それに雲の発生が増えて気温が下がるの。だから農作物にも大きな被害がでるわね」
「そんな!大変じゃない!翼、どうするの?」
「どうしようか・・・突然過ぎて、考えがまとまらないな・・・」
「まず、お父さまにお知らせしましょう!」
「あ。そ、そうだね」
『お父さま!聞こえますか?』
『翼か。どうしたんだい?』
『地球の地磁気が無くなりました。逆転現象が始まったのかも知れません』
『何だって?今日?』
『はい。まさに今、磁気計が「0」になっているそうです』
『もう、世界各国には知らせているのだろう?』
『はい。通告しています』
『まずは、各国で地磁気と大気中の放射線の数値を詳細に計測し、注意報や警報を発する様にするんだ。次に屋内での農産物の栽培を急拡大させなさい』
『そうですね』
『翼が造った船は放射線に対して対策はしてあるのかな?』
『はい。全ての船は放射線も紫外線も通しません』
『流石だね。それならば外の移動は必ず、船を利用することも通告しておくんだよ』
『はい。分かりました』
『天照さまに声を掛けてみるよ。来てくれる様なら一緒に地球へ行くよ』
『分かりました。お待ちしています』
『翼、落ち着いて行動するんだよ。まずは徹くんに連絡して日本政府の状況を把握しておくんだ』
『はい』
「聞いていたかい?」
「はい」
「皆をサロンへ集めてくれるかな?僕は徹に連絡するよ」
「直ぐに集めます」
アナはベビーベッドに寝かせていた怜央を抱くと、結衣と一緒にサロンへと飛んだ。
僕は徹に電話を掛けた。
「もしもし、徹?」
「あ、翼!もう知っているだろう?地磁気のこと」
「あぁ、まさかこんなに早くこの日が来るとはね」
「全くだ。ところで地磁気の発生装置の進捗はどうなっているんだい?」
「うん。もう一年は掛からずに完成するよ。更に急ぐつもりだ。だけど・・・」
「だけど?」
「うん。急いで完成させて稼働しても十分な量の磁気は発生させられないんだ」
「あぁ、前に聞いたな。あと二人の妻が揃わないと、って話だね?」
「そう。あと二人、妻が見つからないとね」
「その二人は今、どこに居るか見当は付いていないのか?」
「それが分からないから困っているんだよ」
「えーっ!地球の命運が懸かっているのに?」
「うん、面目ない」
「まぁ、地磁気の発生装置の開発で忙しかったのだろう?仕方がないさ」
「うん。それより、日本政府の対応はどうなっているかな?」
「あぁ、気象庁と全国の国立大学が協力して、磁気と放射線のモニターを強化するよ。放射線が観測されたら外出しない様に各自治体から警報を出すことになった。現時点で屋外生産中の農作物は収穫できるものは直ぐに収穫する様に通達しているよ」
「農作物や畜産物の屋内生産についてはこれからだね?」
「そうだね。でも急ピッチで進めないといけないな」
「うん。そうだよ。雲に覆われて氷河期の様な状態になることまで想定しておかないといけないよ」
「あぁ。とんでもないことになったな・・・」
「今後は連絡を密に取っていこう」
「あぁ、頼むよ」
「シュンッ!」
サロンに行くと妻たちとお母さん、葉留が揃っていた。
「翼、大変なことになったわね・・・」
「えぇ、お母さま。問題は食料ですね。世界では各国で自給率を高め、フードロスを避けるために過度な食料生産をしなくなっているのです」
「当然、備蓄量も以前より少なくなっているでしょうから、生産ができなくなれば食料不足に陥ってしまいます」
「今、徹に聞いたところ、屋内での農作物と畜産の生産を急ピッチで増やすべく手配をしているとのことでしたが、追い付くかどうか」
「野菜類はある程度作れるでしょうけど、穀物は難しいでしょうね」
「米の備蓄は何年もつのかしら?」
「もって数年分でしょう」
「それよりも宇月と雨月の生まれ変わりを探す方が早いのではないかしら?」
「両方進めないといけませんね」
「公開公募とかするの?」
「そうだね・・・混乱するだけの様な気もするのだけど・・・でも、それ以外ではどう探せば良いのかも分からないね」
「シュンッ!」
「あ!お父さま!アネモネも来てくれたんだね」
「翼!大丈夫なの?」
アネモネは現れると僕の胸に飛び込んできた。
「アネモネ・・・」
「翼。今の地磁気はどうなっているんだい?」
サロンの大型モニターには、神代重工のシステムとリンクした情報が映し出されていた。
「はい。今日は「0」のままの様です」
「まだ、雲は多くなっていない様だね」
「はい。お父さま。それで、天照さまは?」
「呼び掛けには応じてもらえなかったよ」
「そんな・・・天照さまはこうなるって、きっと知っていましたよね?」
「そうかも知れないね。それでも何もしてくれないとしたら・・・」
「地球人が亡びることを望んでいるということでしょうか?」
「分からないな。その可能性もあるけれどね。それで宇月と雨月の生まれ変わりはその後どうだい?」
「すみません。地磁気の発生装置の研究で、そちらはほとんど手付かずだったのです」
「では、装置の方はできているのかな?」
「それは建造を進めていますので、あと一年も掛からず完成すると思います」
「それなら良いじゃないか。妻が揃っても装置ができていなければ解決はしないのだからね」
「はい。それはそうなのですが・・・」
「何でも全て上手くいく訳ではないさ。翼は頑張っているよ」
「そうよ。翼。あなたは頑張っているわ。装置の開発は進んだのだから、これから本腰を入れて二人を探せば良いのよ」
「はい。そうですね・・・」
「それで、どうやって探せば良いのでしょうか?」
「ヒントはあるのだろう?」
「そうですね・・・桃!ジンジャー!」
「はい。翼さま」
「はい。翼さま」
二人のメイドが僕とお父さんの前に並んで立った。桃はストロベリーブロンドで赤い瞳。ジンジャーはアッシュブロンドの髪に緑の瞳をしている。でも胸は皆同じで少しだけ膨らみが作られているだけだ。
「お父さま。この二人の髪と瞳が同じ色の女性なのだと思われるのです」
「それならば、テレビを使って世界に向けて公募してしまう方が早いのではないかな?」
「テレビを使うのですか?」
「もう、悠長なことを言っていられないだろう?緊急事態だと思うんだ。私の時の様にのんびり旅をしながら探していたら、餓死者や癌患者が世界中に溢れてしまい兼ねないよ」
「そうですね。できることを全てしないといけませんね」
「翼、髪と瞳の色だけで探す?胸のサイズはどうする?」
「あぁ、それだよね。でもまだ子供の可能性もあるからね」
「胸のサイズ?それはどういうことだい?」
「お父さま。この新しい月の都には既に七人の妻の個室があり、その衣装部屋にはドレスや下着も用意されていたのです」
「あぁ、そうなのか。それは私の時もそうだったよ。それは間違いない情報だね」
「ドレスのカラーバリエーションからいって、ストロベリーブロンドの女性の胸がAカップで、アッシュブロンドの女性がGカップなのです」
「そうか。でもそれは成長したらの話だね。確かに瑞希と翼の年齢差は十六歳だからね。上は四十歳位から下は六歳位でもおかしくはないね」
「それなら、ストロベリーブロンドで赤い瞳の女性は、十八歳以上ならAカップと限定し、アッシュブロンドで緑の瞳の女性は、Gカップと限定して公募してみたらどう?」
「お父さま、お母さま。そうですね」
「あとは、僕を一目見て好きだと思う人。僕が夢に出てくるとか、更に超能力と思われる様なことができる人は、なお良いね」
「それなら徹さんに頼んで、全世界へ向けて放送する特別番組を国営放送に作ってもらいましょうよ」
「そうだね。葉留、徹に頼んでくれるかな?」
「えぇ、任せておいて」
「エリーは居るかい?」
「はい。月夜見さま、ここに」
「エリー、この月の都を覆っているシールドは、もしかして放射線を防ぐのかな?」
「はい。その通りで御座います」
「水や空気は?」
「全てフィルターを通して安全な状態になっております」
「もしかしてクリーンルームはある?」
「御座います。地下三階に御座います」
「では、皆、地球の地上からここへ入る時は、クリーンルームへ瞬間移動し、放射性物質の塵を落とすことを徹底するのだよ。それと今でもここの食料品は神星から供給しているけど、今後、地球の食品を仕入れる場合は、放射線量をチェックしないといけないよ。常に内部被爆にも注意を払うんだ」
「はい。お父さま」
「翼、世界各国の農業事情で屋内生産は進んでいるのかな?」
「そうですね。水が不足する地域では進んでいますが、日本の様に元々、水資源が豊富な国は台風や地震などの天災の対策として一部を屋内生産しているに過ぎません。急遽、屋内での農作物と畜産を増やす様、動き出してはいます」
「それでは間に合わないかも知れないね。特に穀物類の不足が心配だな。それでは、プラントに指示して、農業プラントを大急ぎで作らせるよ」
「え?神星でも生産して頂けるのですか?」
「地球の技術ではスピードに限界があるでしょう。無人全自動農業プラントを作らせ、使われていない大陸で穀物を大量に生産すれば、少しは足しになるのではないかな」
「お父さま、ありがとう御座います」
「当然のことだよ。神星は元々、地球の保険だ。地球を救うためにある世界なのだからね」
「お兄さま。徹さんから伝言よ。一週間後に国連本部で緊急会合を行うので来て欲しいって」
「あぁ、分かった。出席しよう」
「デージー、シャルルに一週間後の朝にここへ月の都を着けて欲しいと伝えてくれるかな?」
「かしこまりました。伝えます。翼さま」
一週間後、僕は妻たちを連れてニューヨークの国連本部へ向かった。
シャルルが管理する月の都に移り、ニューヨークの自由の女神像の上空へ瞬間移動する。そこから船で国連本部上空まで飛んだ。
僕たちは船の翼の上から空中浮遊で国連本部の玄関へと降りて行った。
お父さんの時には、周囲に見物人で埋め尽くされていた様だが、今は誰も居ない。放射線が怖くて外出できないのだ。
玄関に降り立つと、そこに徹が居た。
「徹じゃないか。秘書として随行しているのかい?」
「そうだよ。親父はもう中に居るよ、アナスターシャさまのお父さまもね」
「うん。では、行こうか」
警備員の後に付いて迷路の様な廊下を歩いて行き控室へ通された。アメリカンコーヒーを飲みながら会議の様子をモニターで見ていた。
まずは地磁気の現在の状況と今後起こり得る事態について、NWSアメリカ国立気象局が説明した。その後、各国の対応策と課題を簡単にまとめたものを流していった。
「やはり、中国、インド、アメリカ、インドネシアなど、人口の多い国では穀物不足が問題になりそうだね」
「意外とアフリカや中南米みたいな水資源の少ない国の方が、屋内生産が進んでいて何とかなってしまうのですね」
「うん。でもそれらの国でも水や大気の放射能除去は必須だけれどね」
「そこは天羽化学やフランスなんかでも高いフィルター技術を持っていますから大丈夫でしょう」
「天照さま、そろそろお時間で御座います。こちらへお願い致します」
総会会議場へと案内された。壇上中央には大きく立派な演説台があり、その両側に少しスペースがあったので、妻たちが僕の両側に二人と三人に分かれて並び立った。僕は念話で全世界の人々に語り掛ける。
『皆さん。私は天照 翼です。私の言葉はあなた方の頭に直接届きます。この会議場に居る者だけでなく、地球上の全ての人間に同時に語り掛けています』
『私の父が地球に降り立ち、ここで演説したのは二十三年前のことです。これまで地球の皆さんは、大変な改革を行い、ここまで地球環境を回復させました』
『しかし今、地球の皆さんは過去最大の危機に見舞われています。私たちもこの事態は予測し、危惧しており、対処を考えておりました。ですが、あまりにも早く、その時が訪れたのです』
『私は以前より、地磁気の発生装置の開発を進めています。完成まであと一年は掛からないと思います。それまで皆さんには、各国での大気中の放射性物質の数値に気を配り、人体への外部被曝に十分に配慮頂きたいと思います』
『また、屋内での農産品、畜産品の生産を増やす努力をお願い致します。私たちの星でも特に穀物の生産を進めます。不足する国や地域へ配布するためです』
『自国のことだけでなく、地球全体の危機と捉え、協力してこの難局を乗り越えましょう』
会場全体から大きな拍手が沸き起こった。
『後日、日本の国営放送を通じて、皆さまへお伝えすることが御座います。それは私事では御座いますが、地球を救うために必要なことでもあります』
『皆さまのご協力をお願いできればと思います』
僕は演説を終えると、国連本部の玄関に妻たちと共に瞬間移動し、船へと戻った。
船の周りには多くのドローンが飛んでいた。
「さぁ、日本へ帰るよ」
「はい!」
「シュンッ!」
それから一週間後、国営放送で特別番組に出演する日が来た。今回の番組のシナリオは、大筋で葉留がプロデュースしてくれている。
お馴染みとなった男性アナウンサーがMCを務め、女性アナウンサーが補佐役だ。
今回は僕だけでなく、僕の妻五人も一緒に出演する。
「天照さま、今回は地球を救うための重要なお知らせがあるということですが?」
「はい。皆さん、ご存じの通り、地球の地下深くにあるマントルの動きが止まり、地磁気が失われつつあります。このまま長く地磁気が失われたままになると太陽風から来る放射線が大気圏に降り注ぎ、人間のみならず、農作物にも被害が及びます」
「長い間厚い雲に覆われることで地表の気温は下がり、作物は育たなくなり、やがて食糧難となるでしょう。今、世界各国の政府は屋内や地下での農作物や畜産の生産を進め、これを補おうと精一杯の努力をされています」
「私もこの時が来ることを予測し、地磁気の発生装置を建造しています。それは間もなく完成するでしょう。ですが、この地磁気の発生装置は十人の神の力によって必要な磁気を得られるのです」
「その十人の内、あと二人が足りないのです。私の妻五人は、全て千五百年前の神の娘の生まれ変わりです。そしてその娘はあと二人居るのです」
「つまり、私の妻は七人となるのです。あと二人の妻が現れないと地磁気発生装置が完成しても十分な出力を得られないのです」
「今回、この番組を作って頂いたのは、私の妻となる千五百年前の神の娘の生まれ変わりの二人を探すためなのです」
僕や妻五人の表情がアップで順番に映し出されていった。
まさか、自分の妻をテレビで募集することになるなんて夢にも思わなかったよ。
お読みいただきまして、ありがとうございました!